本格推理5・犯罪の奇術師たち

第2回「本格推理」募集の当選作品集で、3巻に分けて編まれたうちの第3巻。
犬なき島の惨劇   
吉田元紀
事件が起きるのは三重県南部にある無人島犬なき島。ミステリ好きの4人の男子大学生が、島で幾日かを過ごすために上陸する。そして一人づつ島にある小屋で一晩を過ごす肝試しをすることになった。
ところが最初の夜に小屋に入った学生は、中から閂をかけた小屋の中でナイフを刺された死体となって見つかった。鉄製の扉には隙間一つなく、その扉のほかに出入口はない。
そして小屋の中には犬が一匹。死体は犬に食いちぎられて無残な状態だった。
*「なき」の字は変換不能の漢字が使われていますので、ひらがなで表記しました。

アリバイのゆくえ    
九院理
別荘にあるバンガロー。そのバンガローの浴室で裸の女性の死体が見つかった。凶器は大きな石のようなものであるらしいが、浴室内はおろかどこからも見つからない。
当時別荘には、オーナーと管理人の老夫婦、オーナーの息子とその同僚男性、息子と関係のある女性が3人いて、事件の直前に全員でバーベキューをしていた。
バーベキューが終わりオーナーは自室に、管理人夫婦は後片付け、被害者を除くほかのメンバーはカラオケに興じていた。その間、被害者は着替えに戻ったバンガローで入浴中に殺されたようだったが、オーナー以外にはアリバイがあり、一方オーナーには動機がなかった。

クロノスの罠    
山口三樹
敷島助教授の実験は学生達を自身の別荘の地下室で一週間過ごさせることだった。食料は充分に備え、睡眠も自由だが、時間がわかるものは全て取り上げ自然体で過ごさせ、その様子をビデオで録画させた。
助教授は別荘の地上部でそれを監督していた。そして最終日、助教授の妻が東京の留守宅で殺された。別荘は東京から車で5時間。別荘にいる全員にアリバイがあるようだったが…

鬼神たちの夜    
深川拓
マンションの女性を訪ねて、その部屋を開けた途端、玄関先にあったのは見知らぬ男の死体。それを見た男は驚いてマンションを飛び出すが、思いなおしてマンションに戻り、死体のある部屋を再訪問。同じ部屋にいったはずなのに、そこにあるはずの死体が消えていた。

夜間飛行    
前田諭
東京歌舞伎町の小さなスナックのトイレで死体となって発見された男。男の前にトイレに入った客は誰もいなかったといい、男の後に入った客はいきなり死体に出くわした。
犯人はいつトイレに入り、いつトイレから出て行ったのか…

黒い白鳥    
石川真介
地名の研究で有名な大学の助教授と結婚した孝江。オーストラリアに新婚旅行に行き、半年後に夫の研究旅行に同伴して、青森県から岩手県を巡る2泊3日の旅に出る。
その3日目、岩手県久慈から東京に変えることになったが、孝江はさすがに飽きてきたのか夫婦別行動をとり、夫は郷土史家とともに県内を廻り、孝江は適当に観光地を回って夕方盛岡駅で落ち合うこととなった。
しかし孝江はそれきり帰ってこなかった。翌朝、孝江の死体が三陸海岸で見つかったのだ。事件は事故と考えられたが、地元の刑事はその処理に疑問を抱いた。

鬼が踊る夜    
永山智也
公園の植え込みから見つかったプラスチックで作られた鬼の金棒。深夜、その近くで酔った学生が鬼を見たという。鬼は学生と出会うと、びっくりして逃げ去ったというが、学生が誰に話しても信用されなかった。
そして学生が鬼を目撃した夜、放火殺人事件があった。部屋の中から見つかった男は全裸で殺された後、しばらくして家に火がつけられた。
被害者は映画やテレビドラマの大道具や小道具を作成する会社に勤めており、容疑者はその恋人。容疑者には最近縁談が持ち上がり、被害者と別れたがっていたらしい。
だが、その容疑者には放火された時間のアリバイがあった。

天に昇る足跡   
五月たぬき
雪国のペンションの離れに住む被害者の部屋にビデオカメラが据付けられた。被害者には1年前に脅迫状が届き、それには1年後にお前を殺すとかかれていた。
脅迫状の予告の日に、念のために被害者は離れで厳重に中から鍵をかけ、さらに寝室の様子をビデオカメラで撮影してモニターしようというわけだった。
被害者が寝てからしばらくは何事もなかったが、突然カメラの向きが変わり、視界からは被害者の姿が消えた。駆けつけてみると被害者はナイフで刺し殺されていた。だが現場の離れは密室のうえに、離れの周囲の雪には離れに向った被害者の足跡だけが残されていた。

鳶と鷹    
森輝喜
被害者が殺された時刻に、容疑者は殺害現場から1時間ほどの公園にいたことがわかった。だが容疑者は、被害者がまさに殺害された時間に、公園にいたことを証明する写真を取り出した。
写真には容疑者と時刻をしっかり示すデジタル式の時計が写っていた。しかも背景の状況から写真は被害者が頃された日に撮られたことは明らかだった…

シャチの住む密室   
早川亮
大学のミステリ研の部室で死んでいた学生。部屋はドアには鍵がかかり、窓も内側から施錠され、ドアの鍵は2本とも守衛室に保管されているという密室であった。

疾走する殺意   
土屋理敬
毎週火曜の午後二時、遊園地「デビルス・ワールド」の社長は、腹心を引き連れてジェットコースターに乗りに来るのが習慣だった。
これはどんなに混んでいても行われ、社長は前から2列目の右側に必ず席を取った。そして、その日も同じだった。だが3分後に戻ってきたジェットコースターでは、社長の首にはテグスが巻き付き絶命していた。
ジェットコースターが出発するときは社長が元気だったのは皆が見ている。すると疾走するジェットコースターで社長は絞め殺されたことになるのだが…

極魔術師ドクター・フランケン   
天宮蠍人
女優鳳蘭子と俳優萩真司夫妻のもとに、極魔術ドクター・フランケンがやって来るという。ドクター・フランケンは1年ほど前に、故郷で脱出大魔術をやり、そのまま行方がわからなくなっていた。
ドクター・フランケンは蘭子と同郷であり、そのパトロンは真司であった。訪問の目的はわからないが、なんとなくトラブルになりそうだった。
時間になってドクター・フランケンが登場し、真司と二人で寝室に消えた。そこは浴室付きだが窓のない部屋で、二人は中で何か話しているようだった。
あまりに二人が出てこないので入ってみると、寝室の中には肉切り包丁を刺されて死亡した真司の死体が横たわり、ドクター・フランケンは煙のように消失していた。
唯一あるドアの外には見張るように人間がいた。ドクター・フランケンは得意の脱出魔術で殺人現場から消え去ったのだろうか…

妻は何でも知っている   
大友瞬
スキーリゾートのホテルのログハウスのミニロッジは本館から舗道を歩いて行くことになっていた。ロッジは5つ並んでいて、本館から最も遠いAロッジからDロッジには友人同士の4人の男女が1人づつ泊まり、本館に最も近いEロッジには若い夫婦が泊まっていた。
朝、Aロッジの宿泊客が果物ナイフを胸に刺されて死んでいるのが見つかった。発見したときにはB〜Dの宿泊者とホテルの従業員が一緒にAロッジに行き、その時には積もった雪の上に誰の足跡もなかった。
さらにロッジの窓には鍵が掛り、ドアには内側から鍵とドアチェーンが掛けられていた。動機の面から犯人はCロッジの宿泊客らしいと思われたが、密室と殺害方法がわからない。


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