本格推理4・殺意を継ぐ者たち

第2回「本格推理」募集の当選作品集で、3巻に分けて編まれたうちの第2巻。
雪花の舞い   
高張是人
殺人があった直後、現場の平屋の住宅の玄関からは、近所の人達がなだれ込んだ。被害者は年配の主婦であり、町内の友人の一人が遊びに訪れて、普段鍵などかかっていない玄関が施錠されているのを不審に思い、隣の床屋を訪ねて合鍵で玄関を開けようとしていたところだった。被害者は万一の時のために床屋に合鍵を預けていたのだ。
そのとき室内から物の割れる音と叫び声がして、付近を通りかかった人や近所の人も集まってきた。合鍵を開いて皆が室内になだれ込む。そこにはナイフを刺されて絶命した被害者。
皆は手分けして見回るが、裏口も窓も中から施錠されていた。おまけに家の周囲に積もった雪には、ただ一人の足跡。それは家の周囲を見回った近所の若者のものだった。
もちろん室内に犯人は隠れていたわけでもなかった。平和な町内で突然、密室殺人事件が発生したのだ。

1/2    
北条義弘
前衛劇団の演出家兼性格俳優の丸島景道は、下垂体障害による低身長症で、普通の人の半分の身長しかなかった。その丸島がアパートの自室で背中を刺されて殺されていた。
奇妙なのは室内の状況で、窓は半開き、テーブルの上のカップラーメンの容器は縦半分に切られ、本棚の本は半分だけ取り出されて床の上にばらまかれ、洋服箪笥や冷蔵庫の中身も同様であった。
丸島の髪の毛は右半分だけが刈られ、手には半分に折られた割り箸を片方だけ握っていた。半分の部屋で半分の人間が殺されていたのだ。

内勤刑事    
池月涼太
埼玉と東京の境に架かるT橋の両端では、警視庁と埼玉県警の検問が行われていた。両端で検問を終え、免許証の名前と車のナンバーを控えられた2台の車が橋上で行き会う。
東京側から来たのは運送会社のトラック、埼玉側から来たのは主婦の運転する車。するとトラックが橋上で急ブレーキをかける。上から男が降ってきたのだ。主婦の車も急ブレーキを踏む。降ってきた男はトラックの下に巻き込まれて死んだ。
しかし調べてみると、その男は事故で死んだのではなく、胸を刺されて1〜2時間も前に死んでいた。死者が空から橋の上に降ってきたのだ

鳴く密室    
濱田健一
深夜の児童公園で発生した火災。燃えたのは公園に設置されたオブジェで、それはコンクリートの巨大なサイコロだった。コンクリートで作られた立方体に丸い穴が開けられている。穴の直径は30センチメートル。
通報で駆けつけた消防により火は消されたが、中からは焼死した男の死体。男はオブジェを作成した高槻刀馬という芸術家だったが、問題はどうやって高槻の体はサイコロの中に入れられたのかだった。

超能力者の密室    
中村英雄
超能力を否定する大学教授の別荘で開かれた超能力の実験。招かれた超能力者は、超能力否定者の前で見事にスプーンや鍵を曲げて見せて、超能力否定者たちは敗北する。
その夜、否定者の一人、テレビ番組制作会社の社長が泊まっていた室内で殺された。その部屋の鍵は前夜超能力者が曲げてしまったので、ドアには内側から閂がかけられていた。
その閂は上に曲っていて、まるで超能力者が閂をはずし殺人を犯した後、再びかけたように思われたが…

偶然の目撃者    
安浦むつみ
浅草の遊園地、花やしきの迷路の中で男が刺し殺された。被害者は建設省の役人で、その上司の係長が怪しいが、係長は地下鉄に乗っていたというアリバイを主張。さらに地下鉄に乗っているのを、並行する電車から見ていたという目撃者が現れた…

開かれた数字錠    
高村寛昭
社員4人の中小企業の社長が殺された。事務所裏にある倉庫でやたらめったら殴られたうえ、頭から硫酸をかけられ、さらにバケツに入れた硫酸に下半身を付けられて死んでいた。死亡時刻は午前2時。そして倉庫の扉には4桁の数字錠がかけられていて、その番号は社長しかしらないという。
犯人はどうやって数字錠を開けたのだろうか?そしてなぜ死体は硫酸につけられていたのか?

情景に誘われる悲喜劇   
譲原実
少女樹里には婚約者の医者矢崎がいた。ある日のこと樹里が画材店で画家秋村と出会い、秋村が樹里をモデルに絵を描き始めたことで、秋村と樹里の間にも恋が芽生え3人の関係がおかしくなった。
秋村と矢崎、それに樹里の3人は話し合うために矢崎のところに集まる。矢崎が紅茶を調合し3人でそれを飲むが、その途端に矢崎が苦しみだし絶命した。青酸による死であった。カップはどれも同じで、青酸は矢崎の飲んだカップだけから検出された。犯人は…

亡霊の殺意    
木村聡
坂東コンツェルン総帥坂東浩二の屋敷には亡霊が出るとの噂があった。厨房を引き受けている雇人の女性が、ある夜に屋敷の敷地内でボッーと光る亡霊のようなものを見て叫び声をあげる。
その翌朝、坂東浩二が死体で発見された。発見されたのは邸内に建つ離れと呼ばれる独立した建物で、そこは坂東浩二が趣味の模型飛行機を製作するための建物だった。
坂東浩二は模型飛行機作りが趣味で、興が乗ると徹夜で没頭し、翌朝睡眠薬の力で寝た。そのために母屋のほかにわざわざ離れが建てられたのだ。
坂東浩二の死体からは睡眠薬が検出され、徹夜で模型飛行機を作ったあと睡眠に入り、ベッドの上で刺殺されたと考えられた。だが、離れはドアも窓も内側から施錠されて密室であった。すると坂東浩二を刺し殺したのは、屋敷に棲みつく亡霊の仕業なのだろうか…

完成の朝   
森田明良
精神を病んだ笠原優子が兄秀範とともに移り住んだのは、空気のよい山間の館であった。僕がその館に招待されたときは既に雪の季節で、館の周囲には雪が積もっていた。
優子はかなり元気になり、ほかに招待された人々とも会話がはずむほど回復していた。食事も皆と一緒に摂ったが、寝起きは一人別館でしていた。秀範を始め招待客は全て本館に泊まった。
その翌朝のこと、普段なら本館に来ているはずの優子の姿が見えず、僕と画家の甲斐が別館に行ってみると、甲斐が扉に鍵が掛って開かないといい、僕は甲斐の指示で斧を取りに行った。
只ならぬ様子にほかの人たちも別館に向かい、甲斐が斧を振るって重い木のドアを叩き壊す。中には首を切り取られた優子の死体があった。
そしてその首は、前日に作られて別館の外に置かれていた雪だるまの首と挿げ替えられていた。そして僕と甲斐が別館に向かう前には、その周囲には足跡は一つも無かったのだった。

遅すぎた推理   
神田貴仁
劇団パラドックス座長飯島勇の死体がバラバラにされてH市のT橋で発見された。パラドックスは飯島がアメリカに行って特殊メイクを学び、その後日本にも度って始めた地方劇団であった。
全国区ではなかったが、H市周辺では9人の劇団員が全員若く美貌の男性だったために、女性を中心にかなりの人気を得ていた。
飯島はバラバラ死体となって発見される前の日に公演前の劇場から外出し、そのまま戻らなかった。飯島が外出する姿は劇場の入り口の警備員にも目撃され、防犯ビデオにも写っていた。
飯島がいなくなると劇団員達の希望で劇団は解散。団員達は皆それぞれの道を歩み始めた。噂では飯島は団員達に男色関係を強要し、団員達はそれがいやで劇団を辞めたがっていたというが…

雪の夜の五重奏   
鈴木一夫
雪山の頂にある鷹宮別邸、通称楡の木屋敷には侏儒の塔といわれる小塔が二階の屋根から突き出ていた。高さも低くて、塔の天辺とそばに建つ楡の木の高さはとほとんど同じであった。
この塔が変わっているのは人が入れないこと。入り口が小さく、子供なら入れるが大人は無理。その入り口にはスライド式の重い鉄製の扉があった。
10年ほど前にこの塔に死体が投げ込まれた。クリスマスの夜、雪の中で窓ガラスが割れ、直後にドスンという音。塔の窓ガラスが割れて、塔の中には男の死体があった。
男には首が無く、その首は相当後に森の中から見つかったが、腐乱していて誰のものかはわからなかった。それにしてもいったいどうやって塔の中に死体を投げ入れることができたのか…

たからさがし   
谷英樹
とある村で起きた事件。村では村起こしイベントとして宝さがし大会が行われることになった。前夜からたくさんの人が集まり、宝が箱に入れられて隠され、翌日の日の出とともに宝さがしが開始された。
その最中に事件が起きた。大きな木のはるか上方の木の又に頭を突っ込み、窒息して宙ぶらりんの状態でフランス人の死体が発見されたのだ。
宝の入った箱は少し先に投げ出されており、蓋が開いて中身がこぼれ出ていた。被害者のフランス人も宝さがしの参加者であった。事件は事故として処理されたが、本当のそうなのだろうか…


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