本格推理3・迷宮の殺人者たち

第2回「本格推理」募集の当選作品集で、3巻に分けて編まれたうちの第1巻。
葵荘事件   
日下隆思郎
信州にある売れっ子推理作家山科亮介の別荘葵荘。ここはかつては旅館であったものを亮介が買い取って別荘として使っていた。
毎年夏には亮介の友人達が秘書に集まるが、亮介は傲岸不遜なタイプで別荘に集まる者達も、多くは亮介のことを快く思っていなかった。
そして、その夏亮介が2階の部屋で全裸で絞殺された。衣服は全て風呂場の脱衣場にあり、犯人は風呂場で裸の亮介を絞殺して死体を2回まで運んだか、2階で絞殺して服を脱衣場まで運んだかであったが、犯人はなぜそんなことをしたのだろうか…。

落ちて死んだ男    
高林徹
その市のションボルタワーは高さ300m、天辺は五層に別れ下3層は全面ガラス張りの展望スペース、上2層は企画展示室で、その五層部分と地上は客用2機、業務用1機のエレベータと非常階段が結んでいる。
非常階段は一般人は出入りできず出入口には鍵がかけれていた。もう一つ屋上への非常扉もあって、こちらも出入り禁止で施錠してあった。もちろん窓は開けることができないばかりか、強化ガラスでできており割ることすら難しかった。
夜間は天辺の五層を警備員がくまなく見回り、人がいないのを確かめた後、全てのエレベーターを1階に下げて電源を切り、全ての鍵は確実に保管していた。
しかしある朝、このタワーの天辺から飛び降りたとしか思えない死体がタワーの下で見つかった。どうやってこの男はタワーから飛び降りることができたのだろうか…

狼どもの密室    
佐々木幸哉
プロボクシングのミドル級選手天堂東が殺された。死体があったのはジムのホームサウナの中。そこは畳一畳ほどのスペースで、試合が近づいた天堂はホームサウナに軟禁された状態だった。
天堂は強い割りに気が小さくて、過去にも試合直前に重圧に耐えられなくなって脱走騒ぎを起こしていて、ジムのオーナーがそれ以来試合が近づくと天堂をホームサウナに軟禁していた。
閉じ込めるのが目的だから鍵は外からしか掛らず、その鍵はオーナー自身が持っていた。そのオーナーには犯行時刻にはアリバイがあった。
しかも天堂の死因は脳内出血。犯人は密室を開けて天堂を外に出し、何らかの手段で殺した挙句、再び密室に閉じ込めたのだった。

イヴ・ステップの殺人    
澤井祐典
信州の山荘、1階と2階をつなぐ二つの階段はそれぞれアダム・ステップ、イヴ・ステップと名付けられていた。夕食が始まっても30分もたつのに姿を見せない子供がいて、母親が部屋に様子を見に行ったが、その時にイブ・ステップで死んでいるのが見つかった。階段から何者かに突き落とされたらしい。
血の塊や体温などから死後30分程度はたっているらしいが、30分前に同じイヴ・ステップを使った人間は死体などなかったという。食堂に現れたのはその人間が最後であり、事件は事故と片付けられそうになるが…

嵐の後の山荘    
杉野舞人
嵐で交通が途絶した山荘で見つかった2つの死体。1つは元銀行員のもので右足を切断され、その後焼却炉で黒焦げに焼かれていた。死因は不明であった。
もう1つの死体は音大生のもので、こちらは絞殺され、やはり右足が切断されていた。切断面から死後足を切られたことは明らかだった。
犯人はなぜ2つの死体の右足を切断したのだろうか?そして死体を1つだけ焼いた理由は…

嵐の山荘    
由比敬介
山口県内に建つペンション天狼館は、鳥海、大河内、妹尾という3人の男が共同して経営していた。そのオープン3周年の記念パーティの夜のこと…
記念パーティといっても3人の経営者の身内や友人が集まっただけのごく内輪のもので、出席者は全部で9人であった。その夜からペンション周辺は嵐となり、血なまぐさい事件が起こりそうな予感がした。
そして翌朝、部屋で鳥海が殺されていた。頭からビニール袋を被り、首のところで紐で結ばれた奇妙な死に方であった。そしてさらに大河内のコーヒーに毒物が入れられ、妹尾が表に出たとたんに掃除機が屋根から落ちてきた。大河内は処置が早く命には別状なく、妹尾も間一髪で掃除機を避けた。
犯人はペンション経営者連続殺人事件を計画したのだろうか…

霧の館・迷宮草子第一話    
三津田信三
登山の途中道に迷った男がたどり着いたのは一軒の洋館であった。そこには沙霧という美しい乙女とお手伝いの老婆が2人だけで暮らしていた。
沙霧も老婆も男の問いかけに必要以上のことは何も答えず、奇妙な雰囲気が続いた。さらにこの地域には二人巫女伝説というドッペルゲンガー現象としか思えない言い伝えがあった。
そして男は沙霧が二人いるとしか思えない状況に突き当る…

密室の矢   
柄刀一
作家坂出厳が別荘の書斎で殺された。凶器は坂出の趣味でも合ったアーチェリーの矢で、血にまみれた矢は半分に折れて室内に落ちていた。更にその側には弓が放り出されていた。
書斎のドアは内側から鍵が掛けられて発見した時もドアは外からハンマーで破らねばならず、窓も内側から錠が掛けられていた。
別荘には息子の良希のほか全部で5人の人間がいて、動機はそれぞれにありそうだが機会はないように見えた…

欠けたサークル    
牧野慎悟
雨の降る早朝の高等学校で発見された死体は新聞部長桜崎瞳のものであった。瞳は裏庭に倒れており、死亡推定時刻は前日の夕方4時から5時の間で、死因は両手で首を絞められたことによる窒息死。そして地面にはITWUというダイイングメッセージ。
発見したのは英語教師のアレグザンダーで、彼が発見した時には犯人のも被害者のも足跡はまったくなかった。その後も雨は降り続き、警察が来たころにはダイイングメッセージも消えていた。つまり事件はアレグザンダーが発見した時には密室殺人事件の様相を呈していたのだった。

酒亭「銀富士」の殺人   
西新井栄
かつての繁華街に建つ、今はうらぶれてしまったビル。その地階にある酒亭銀富士の女子トイレの中に男の生首があった。
このトイレには生首が見つかる前、開店直後に常連の私立探偵がいたずらでマネキンの首を入れておいた。それがいつの間にか本物の人間の生首に代ってしまったのだ。
私立探偵は誰がいたずらに引っかかるかとずっと注意していたが、その間にトイレに入ったのは男性客だけ。最初に入った女性客が生首の発見者となったのだが、いったい誰がいつ生首を置いたのか…

死人に口あり   
古賀牧彦
学校の職員寮なっている5階建ての建物。その2階で新婚の女性教師宮川絵美が銃殺された。絵美は朝方窓を開けたところに電話がかかり、それに出たところを外から猟銃で狙撃され殺された。
絵美の夫は船員であったが、絵美と結婚する前はやはり同じ学校の教師桜井由美子と付き合っていた。由美子も同じ寮に住んでいて、絵美たちの現在の部屋は少し前まで由美子の部屋であった。絵美が結婚するのを機に由美子が他の部屋に移ったのだった。
警察は容疑者として由美子を疑ったが、由美子は絵美が間違って殺されたのではないか、命を狙われたのは自分ではないかと思っていた。

マグリットの幻影   
新麻聡
台風の夜に富豪の屋敷に泥棒が入った。その泥棒が狙ったのは富豪がコレクションしているマグリットの絵。泥棒は富豪の屋敷に忍び込んだまでは良かったが、絵を前にして首なし男を見て気絶してしまう。その騒ぎに家人が起き出してきて、泥棒は御用となったのだが、マグリットの絵は泥棒が盗みもしないのに、見事に消えていた。

時空館の殺人   
大家有隆
S大学の推理小説研究会夏の合宿が時空館で行われた。時空館は研究会の部長佐々木剛の父親が持つ、信州の別荘のことで毎年ここで合宿が行われるのが恒例であった。
佐々木は研究会一の美女小笠原に一目ぼれし、夜中に合鍵を使って小笠原の部屋に入り蹂躙した。それによって傷ついた小笠原は遺書を妹に贈り、死の旅に出た…


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