本格推理2・奇想の冒険者たち

第1回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第2巻。
双子神社異聞   
北野安曇
M村にある双子神社。そこは昔々、村にいた双子の兄弟いちろとじろをそれぞれ祀ってある神社であった。伝説によれば、いちろもじろも仲の良い兄弟だったが、そこに村の外からゆかという女が来て、じろと夫婦になった。
ところが村の噂でゆかといちろが浮気をしていると伝わり、じろが外出するゆかの後をつけて2人が会っている現場を見つける。そこでゆかといちろを殺し自分も死んだ。村人たちはいちろとじろを哀れんで兄弟を祀ることにしたというのだった。
そして現代。村の南側の双子神社の社の中で殺人が起きた。殺されたのは由香という女。その側には時朗が気絶していた。村には市朗と時朗という双子の兄弟がいて仲が良かったが、そこに由香という女が現れて、最初は市朗に色目を使ったが結局は時朗と結ばれて2人は村を出て行った。
まだ由香に未練のある市朗は、由香と時朗の2人を呼び戻し3人で話し合いをもとうとした。渋々ながら由香と時朗は村にやってきて、そして由香は殺されてしまったのだ。犯行現場の神社の社と鳥居の間は雨の後でぬかるんでおり、足跡は時朗のものと由香のはいていた下駄の跡だけがついていた。警察は当然のように時朗を逮捕したが…

死霊    
白石千恵利
島根県の山奥にある鳴駒村。そこの旧家衣川家に嫁いだ久美であったが、結婚して3週間で夫の剛人が病死してしまう。葬式が済み1人で寝についた久美だが、夜中にふと目覚めると脇には剛人の死体があった。
この土地では、まだ土葬の習慣があり、誰かが剛人の遺体を掘り出していたずらをしたのだった。剛人の死体を再び墓に埋めたが、その翌日も同じことが起こった。
さらにこのことを聞いた週刊誌記者が取材に来て、衣川家に泊まったが、その夜この記者は殺されてしまう。記者の泊まった部屋は剛人と久美の部屋であったことから、剛人の幽霊にとり殺されたと村人たちは噂をしたが…

落研の殺人    
那伽井聖
秋川文化大学落語研究会の定期落語会がキャンパス内の中ホールで開かれた。落語会が終わってすぐにホール裏手で落研の部員で出演者の一人鴨新文枝が石で何回も殴られて殺されているのが見つかった。
新文枝がそこに行ったのを知っているのはホールにいた関係者だけだったし、動機を持つものも部員だけであった。ホールからの出入できる全ての個所には必ず人がいて、誰も新文枝を殺しに行けなかった。犯人が密室から出れなかったのだった。

死線    
佐々植仁
酒に酔ってホステスに部屋に連れ込まれた男。ホステスの部屋の玄関先にはタンスが後向きにおいてあった。昼間タンスを届けに来た家具屋が玄関先に置いたまま帰ってしまったという。この男が部屋に連れ込まれた目的も、このタンスを動かして欲しいからだった。そのためにまずシャワーを浴びろという。
男がシャワーを浴びているときに銃声がした。驚いて浴室から出ると部屋の中には額を拳銃で射抜かれたホステスの死体。ところが玄関には鍵はかけてなかったが、部屋の中からドアチェーンが掛けてあった。
ドアを開けた隙間から撃ったのではタンスが邪魔してホステスを射殺できない。犯人はどうやってホステスを撃ったのだろう…

亡霊航路    
司凍季
下関駅に着いた寝台特急あさかぜ3号の個室で殺されていた白井医師。犯人と目されるのは妻の麗子。だが、麗子はその時間別府から大坂に向かうフェリーに乗船していたという。別府港に残された麗子の筆跡の残る乗船申込書と朝8時に船内で目撃されたことでアリバイ成立と思われたが…

汚された血脈    
乙蘭人
津木瓜教授の箱根の別荘に集まる二人の助教授。その一人伊那辺は教授の推薦で英国への留学も決まり、教授の姪あずさとの婚約も整い順風満帆。もう一人の助教授笠原は、もともとあずさと付き合っていたのに、伊那辺にあずさをさらわれ、それ以来二人は犬猿の仲。
今回も別荘に着くなり殴り合いが始まったが、教授は我関せずの態度。そしてついに事件が起きた。ロシアンティの好きな伊那辺が紅茶にマーマレードを入れたところ苦しみだして、そのまま帰らぬ人に。マーマレードは別荘で作られたばかりで、ずっとテーブルに載っていた。毒を入れるチャンスは誰にもあったが…

推理研の冬休み    
佐々木重喜
N大学推理小説研究会有志の4人が、推理作家荒波真苑を訪ねることになった。真苑は、雪の山荘ものを中心に本格推理小説を書き続けていたが、数年前に既成の本格に対する挑戦と称して「闇の風景」を発表し、以後は短篇を数編書いただけであった。
今はK市郊外のGという山間の地区に一人で住んでいるという。今回研究会のマサが手紙を出したところ、会ってもいいと言う返事をもらい、都合のついた4人が車2台で真苑のもとに向かった。

数文字   
藤田将文
小学三年生の子供が誘拐され、犯人は身代金を要求していきた。そして身代金の受取と犯人の解放はユニークな方法を指定してきた。
身代金を受取ると同時に犯人は子供のいる場所を書いた紙を渡す。ただし、それは暗号で犯人が安全な場所に逃げた後、電話で暗号の解き方を教えるというものだった。
ところが身代金を受取った犯人は逃走途中に警察の尾行に気づき暴走、大型トラックと正面衝突して犯人は即死してしまう。残ったのは数字と記号が羅列された暗号だけ…

落下する緑    
田中啓文
デパート内の美術館で開かれた抽象画の大家宮堀重吉の展覧会。そこで宮堀の最新作である「落下する緑」が逆さにかけられているのが発覚した。
展覧会は既に3日目。宮堀は昨晩まではちゃんと掛っていたと証言。だが、深夜はセキュリティシステムが働いているうえに、守衛が2人もいる。
昨夜は誰も館内に入っていないし、セキュリティシステムの解除されておらず、きちんと作動していた。いったい誰がどうやって絵を逆さにしたのだろうか…

調香師の事件簿(1)見えない移り香   
蒼井直人
警察犬訓練所で麻薬捜査犬のドイツシェパードが殺された。訓練所には警察の関係で何組かの人間、老獣医の夫婦、謎の青年、議員とその愛人などが泊まっていた。
そしてもう一組、香りの研究をする国の機関のスタッフ9名が見学を兼ねた慰安旅行できていた。スタッフの中の調香師村中はある出来事からある人物に疑いを持つ。

誰が彼を殺したか   
勝・恵
同窓会の席上での殺人。一次会、二次会と進み事件は三次会のカラオケボックスで起きた。男の一人がボールペンで後頭部を刺され絶命していたのだ。
発見は早朝、一緒にいた男女の同窓生の全てが眠り込んでおり目撃者はいない。唯一途中で帰った大工の金本が怪しいということになった。
金本が帰ったのは誰も知らないし(本人は唯一起きていた被害者に言い置いて帰ったと証言)、ボールペンも金本のものであり、アリバイもなく容疑は濃厚であったが…

アンソロジー   
江島伸吾
夏の阿波踊りの季節、徳島の恩師の家に集まった同級生達。そこで恩師から聞かされたのは、その先生が子供のころの話だった。
先生の父親のところに出入りしていた学生治郎が、ある日突然行方不明になった。先生が治郎のところに夕方、本を届けたときは留守で、本をポストに入れてきた。
翌日、治郎の部屋に入ってみると本はポストから出されて室内に置いてあった。その本には治郎のサインがあり、また謹呈本だったので治郎がその夜に部屋にいたことは確実であった。
それ以来の治郎は行方は知れず4日ほど後に山中で遺体となって発見されたのだった。事件は自殺か、事故か、殺人か…
招待作品。


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