本格推理1・新しい挑戦者たち

第1回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第1巻。津島誠司、二階堂黎人の招待作品を併載。
柳之介の推理   
利根祐介
女性専用マンションで起きた猟奇的密室殺人事件。窓は内側から施錠され、ドアはドアチェーンが掛けられていて、隣室の友人の女性がドアチェーンを大型ペンチで切って事件を発見した。
被害者の女性はバラバラにされ、冷蔵庫に入れられた頭部はマヨネーズがかけられ、ソーセージを咥えさせられ、目にフォークを突き立てられ、鼻に串を通されるなど猟奇の極みだった。
この日、近くの公園でもう一つ事件があった。こちらは物盗りらしく酔った若い男性が子犬くらいある大きな石で殴られて、財布など持ち物を盗まれていた。この2つの事件を新聞で見た柳之介は…

    
蕎麦米単九
その敷地には2階建ての鉤型の建物が4つ向かい合わせに建っていて、その中央に鳥室と呼ばれる建物がある。
その鳥室の中で、この一帯の土地をもつ資産家が首を吊って死んだ。建物は密室で鍵がかけられ、一つしかない鍵は部屋の中央に落ちていた。
そして部屋には鳥室といわれるだけあって、鳥が飛び交っていた。被害者の趣味で飼っていた多くの鳥が、なぜか鳥かごから出されていたのだった。
状況からは自殺にしか見えないが、自殺にしてはいくつか不審の点もあった。自殺でないとすると密室殺人ということになるのだが…

藤田先生と人間消失    
村瀬継弥
30年ほど前に小学校のプールで起きた人間消失事件。プールの端にはクラスの担任教師の藤田先生と6年生の女子。その反対側には45人の同じクラスの生徒達。
先生の合図で女子がプールの飛び込むと、ほとんど同時に反対側から10人の男子生徒が飛び込んで女子を探した。しかし女子はどこにもいない。
その後ほかの生徒が全て入って隅々まで探し、さらにプールの水が抜がれたが飛び込んだはずの女子は跡形もない。先生は女子は水になって竜宮城へ行ったのだというのだが…

信州推理紀行    
友杉直人
鉄道の無人駅と山上のホテルを結ぶホテル専用のロープウェイ。無人駅側から2人の客、1人は脚本家の女性、もう1人は黒服に黒い帽子、白マスクの男がロープウェイのゴンドラに乗った。ゴンドラは外から閂が掛けられ、見送りの係員の最敬礼に送られてホテルに向かって登っていった。
7分後、山上のホテルに着いたゴンドラは外から見ると空であった。係員が閂を開けてドアを開くと、空だと思われたゴンドラの床に全裸の脚本家の女性が倒れていた。
女性はクロロホルムをかがされていただけで命に別状はなかったが、乗っているはずの黒服の男も女性の荷物もゴンドラの中から消えていた。
回復した女性に聞くと中間地点で黒服の男に、いきなりクロロホルムを嗅がされて、それ以後は何も覚えていないという。黒服の男は女性の荷物とともに密室状態のゴンドラからどこに消えたのだろうか…

愛と殺意の山形新幹線    
太田宜伯
開通直後の山形新幹線のグリーン車のトイレから発見された男の死体。警察の捜査で犯人と思しき人間が絞られてくるが、いずれもアリバイがあった。そのなかで一番怪しい男のアリバイは、死体の発見された新幹線の1本前の列車に乗っていたというものだった。

砧未発表の事件    
山沢晴雄
大阪市内の事務所で発見された男の死体。顔はめちゃくちゃに潰されていたが、身元は服装などから判明した。だが、事務所は守衛に監視されて、被害者も犯人もいつ事務所に入ったかがわからない。もちろん守衛が嘘をついているわけでもないのだが…

仮面の遺書    
北森鴻
新進画家城島真一が河原で焼身自殺してから3年目のこと。インテリジェンスビルの壁面に飾られた真一の遺作「赤い決意」のモザイをジッと見つめたままの青年がいた。
それを向かいのビルから見ていた天沼依子は意を決したようにその青年に声をかけた。青年は「赤い決意」を見て真一の死に疑問を抱いたと語り始めた…

静かな夜    
神島耕一
とある地方の病院に短期間勤務をすることになった医師。最初の当直の夜に一人の老人が診察を求め、その医師が診ると肺炎の疑いがあった。
看護婦にレントゲンを撮るように依頼するが、レントゲン技師は自宅から来るので1時間近くかかるという。その間、敷地内の宿直棟に戻っているように言われ疲れもあって医師はそうする。
レントゲンができ、それを診るとやはり肺炎を起こしており、入院の指示をした。その夜はほかに患者はなく、翌朝を迎えた。
ところが翌日、医師がいくら訪ねまわっても前夜入院した患者はいないという。宿直簿にも記載はなく、病棟を見回ってもその老人はいなかった。医師は狐につままれたようになるが…

氷点下7度Cのブリザード    
碑歳美代
東京の城東市場冷蔵の部長金丸甚はふとしたことで渡辺美佐子と不倫の関係となる。そして美佐子の不倫に気づいた美佐子の夫渡辺清吉を殺すことを決意。
清吉と美佐子が年末年始に越後湯沢にスキーに行くことを利用し、まず美佐子に体調不良を装わせて先に帰京させ清吉を一人にする。
そこにスキー場の従業員を騙った金丸が近づき、美佐子が東京で交通事故に遭ったと清吉を騙して車に連れ込む。清吉を親切ごかしに東京に連れ戻り、そのまま会社の冷凍庫に監禁、清吉を殺す。
しかるべく時間を置いて冷凍車で湯沢まで運び、スキー場近くの山に放置、スキーで道に迷い凍死したように装うという計画であったが…

桑港の幻   
琴代智
昭和8年の桑港(サンフランシスコ)。ビルの3階から飛び降りた水尾晶仁と岩見沢勇の2人。水尾は死亡し、岩見沢は助かったが岩見沢の記憶は失われてしまう。
水尾は軍閥の大立者の貴族の嫡男で、岩見沢は最近桑港の新聞に反日のコラムを書いている、反戦家の虎門扇子との憶測が広まり、岩見沢を捉えるべく特高警察が乗り込んでくる。岩見沢が軍閥の御曹司の水尾と飛び降りて水尾を死なせたというのだ。
特高から間一髪で逃れた岩見沢は自分が殺人者とは思えず、水尾の死の謎を解こうとするが…

牙を持つ霧   
津島誠司
地方の小都市の寂れた商店街、片方の入口にはタバコ屋が、もう片方の入口には魚屋が、その中間には葬儀屋がある。ある朝葬儀屋に偽電話がかかり、店主がその電話で外出した隙に店があらされ棺が盗まれた。 だがタバコ屋も魚屋も棺を積んだと見られる車など通っていないという。
翌朝、棺が葬儀屋に返されてきたがそこには男の死体が入っていた。町ではこの不思議な事件で大騒ぎになっていたが、その騒ぎが収まらぬある夜、霧の中でカッパが男を絞め殺した。
目撃者は霧の中で男の首を絞めるカッパを確かに見たが、そこで気絶してしまった。気がつくと確かに男の死体がそこにはあり、殺人が起きたことは間違いなかった…
津島誠司のシリーズものの一篇で、招待作品。

赤死荘の殺人   
二階堂黎人
ロンドンにある不気味な伝説のある古びた館、赤死荘。その赤死荘で殺人事件があるかもしれないとの予告状がスコットランドヤードのマスターズ警部のもとに届く。
予告状には午後4時半から別々に3人の男が赤死荘に入っていくが、3人目が入ってきっかり5分後に赤死荘に入れば殺人は防げるが、犯罪者の男が消えるのは防げないだろうと記されていた。
マスターズは部下とともに赤死荘を見張っていると、予告状どおり3人の男が別々に赤死荘に入っていった。指示通り5分待って入ってみると、そこには男の死体が横たわり、その側には一人の男が死体を見下ろしていた。
死体を見ていたのはマスターズの友人ケン・ブレーク。ほかには誰一人赤死荘にはいなかった。予告状通り男は消えてしまったのだった。
二階堂黎人が高校2年のときに書いた実質的処女作で、招待作品。HM、マスターズ警部、ケン・ブレークなどが登場するカー好きの氏らしい作品。


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