本格推理マガジン・鯉沼家の悲劇

「本格推理」シリーズ特別編第三弾は前作に続いて幻の名作と銘打って、宮野叢子「鯉沼家の悲劇」(長篇)、横溝正史・岡田鯱彦・岡村雄輔三氏による「病院横町の首縊りの家」(中篇)、狩久の「見えない足跡」と「共犯者」の2編(短篇)を収録。
鯉沼家の悲劇   
宮野叢子
宮野叢子の最初の長篇で、「宝石」1949年3月号に掲載された。

地方の旧家鯉沼家は、江戸時代には大名家も一目置いたほどの名家中の名家であった。その後家勢は衰えたとはいえ、いまだにその地方では特別扱いされる家であった。
その鯉沼家には美人の誉高い4人の姉妹がいた。そのうち次女は結婚で家を出たが、この結婚は相手の身分が不相応であるとして他の姉妹の反発を招いた。次女は鯉沼家と縁を切って家を出て行った。
したがって鯉沼家を守るのは残った3人で、名を加津緒、沢野、綾女といった。3人はいずれも独身で、ほかには弥平という爺やとリツという女中がその旧家の総員であった。
そして鯉沼家にはいくつかの大きな謎があった。1つは姉妹の父親がある朝自室で日本刀によって死んでいたことで、この死は自殺とされたが、実際は自殺とも他殺ともわからなかった。
この父親は妾を入れていたが、この妾にお末という女を生ませていた。お末は認知され、戸籍上は4姉妹の妹ということになったが、加津緒、沢野、綾女らから徹底的にいじめられ、父の死の直後に妾ともども鯉沼家を追い出されていた。
1つは姉妹の兄が家を継ぐのがいやで失踪したことだった。兄の行方は全くわからず、鯉沼の家では跡継ぎをどこかに求めねばならなかった。

そんな状態の鯉沼家に、ある日のことお末が子供を連れて帰ってきた。お末は鯉沼家を追い出された後に結婚し、蝶一郎という男の子をもうけていた。お末は夫と死に別れ、このたびどういう風の吹き回しか憎き鯉沼家に戻ってきたのだ。
鯉沼の三姉妹のほうでは跡継ぎに困っていたので、蝶一郎を連れたお末をもろ手を挙げて迎え入れ、過去のことは双方水に流すことにした。
ところで、お末は予言の力を身につけていて、やがて沢野に水に気をつけろと予言を行った。それから暫くして庭の池に沢野の死体が浮いていた。
さらにお末は綾女に木が誘っていると予言をし、綾女はやがて庭の木に首を括って死んだ。呪われたかのように死人がでる鯉沼家だったが…

病院横町の首縊りの家    
横溝正史・岡田鯱彦・岡村雄輔
「病院横町の首縊りの家」は横溝正史が宝石の1954年7月号に連載を開始したが、体調不良で第1回で中絶してしまった。その後を宝石編集部の肝煎りで、当時新進気鋭の推理作家であった岡田鯱彦と岡村雄輔がそれぞれに解決編を含めて書き継いで宝石の11月号に発表し、一種のリレー小説としたもの。

戦後すぐの頃主人が首を縊り、その後失火で焼けてしまって幽霊屋敷のようになったその家は、近所では病院横町の首縊りの家と呼ばれていた。
ある夜のこと、立派な八の字髭を生やした男が、写真屋をその廃墟のような家に連れてきた。その八の字髭の男は写真屋に女形の役者で中村梅女と名乗り、そこで花嫁衣裳の女お雪との結婚写真が撮影させた。
お雪の目には生気が無いうえ、一言も口を利かず、写真屋は生きているのか死んでいるのかわからないという印象を持った。

ここまでが横溝正史の第1回連載で、この後を岡田鯱彦の第1コース、岡村雄輔の第2コースの2つの解決編が続くが、どちらもその家で女性が殺されており、しかもその殺人が起きたのは花嫁写真が写される前であったらしいという展開となる。しかしその先はそれぞれに構図が違っていき興味深い。

見えない足跡    
狩久
高山画伯のアトリエは、高山邸の敷地の一角にあった。そのアトリエで画伯が後頭部を一撃されて殺されていた。発見者は女中で、発見したの午後3時ごろであった。
この日は昼前後に激しい雨が降り、アトリエ周辺の土はぬかるんでいた。その土の上にあるのは往復した発見者の女中の足跡だけであった。
画伯の死亡推定時刻は雨がやんで少したった午後1時ごろ。よって高山画伯殺人事件現場は足跡のない密室殺人と言うことになってしまった。

共犯者    
狩久
岡の中腹にある会社の同僚栗原の家を訪ねたまゆり。まゆりのバックの中には毒薬の小瓶が忍ばせてあった。まゆりは栗原を隙を見て毒で殺害する予定だった。
ところが栗原の家についてみると玄関には鍵がかかり、窓から覗いてみると背中をナイフで刺された栗原が絨毯の上に倒れていた。まゆりは驚き、毒の小瓶を投げ捨てて交番に駆けていった。
20分ほどして警官とともにまゆりが栗原家に戻ってくると、そこにはもう1人の同僚池本がいた。池本も栗原を訪ね、まゆり同様に栗原を見つけ、栗原に息があるかもしれないとガラスを割って入ったが、すでに栗原はこと切れていたという。
警察に通報すべく栗原家を出たところにまゆりが警官とともに現れたというわけだった。まゆりも池本も栗原の家は玄関には鍵がかかり、窓も内側から施錠された密室であったと証言した。


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