本格推理マガジン・孤島の殺人鬼

「本格推理」シリーズ特別編。すでに「本格推理」シリーズに入選した人達の、第二作を集めた作品集。ただし「本格推理」6と7の間に発行されたので6までの入選者の作品が対象。
僕を悩ませるミステリーについて   
紫希岬真緒
ミステリ研究会の会報に載せられた犯人宛ミステリ岬荘の惨劇。
岬荘は兵庫県北部の城崎にあり、本館と別館からなっていた。別館は切り立った崖に最奥部に位置していていた。雪の積もった朝、本館から別館へ向った一筋の足跡だけがついていた。この足跡は別館で殺されていた被害者のものであったし、雪が降り止んだ後に被害者が本館から別館に向うのは複数の人間が目撃している。
別館のドアは鍵が掛かっておらず、トイレの窓も施錠されていなかったが、別館の周囲は崖であり、別館に近づくことは難しい。よって犯人の足跡がないのが問題となるが…

ゆり荘事件    
日下隆思郎
かつてサスペンス派の巨匠として一世を風靡した作家蔭山平蔵が隠棲する山間のゆり荘。折から台風が直撃する中、かつての弟子で蔭山を裏切って本格派になった作家上野、子供騙しのトリックで悪文を書く恥知らずの小説家青山真太郎、本格派に媚を売る編集者永野進一、蔭山のことを愚弄した主治医田川冬摩の4人が蔭山に招待されてやって来た。
その夜、密室状態の離れの書斎で蔭山は何者かに絞殺された。ゆり荘にいるのは招待客4人のほかには執事の石部のみ。犯人は誰なのか…そしてどうやって蔭山を絞殺したのか…

遺産相続ゲーム    
八木健威
建設会社の社長を退いた安藤時之助が改造拳銃で自殺した。時之助には駆け落ちした長男、跡を継いで建設会社を支える次男、我儘いっぱいに育ち嫁入りしても金をせびる長女、若い頃にぐれて勘当した三男の4人の子供がいた。
時之助は子供達に遺言を残したが、その遺言は遺産相続ゲームと題された1枚の紙であった。その紙は暗号になっており、それを一番に解いたものが遺産のほとんどを相続できるというのだった。
弁護士からその話を聞いた4人の子供は目の色を変えて暗号解読に取り組むが…

ともしび    
江島伸吾
事件の夜、古びたアパートあけぼの荘の周囲は雪が積もっていた。あけぼの荘の元住人で、金のためにヤクザ者のところに嫁に行った加奈は、そこから少し離れた新居に住んでいた。
夜中あけぼの荘の玄関で音がし住人達が出てみると、玄関には虫の息の加奈がいて、住人達に看取られてすぐに死んだ。新居に行ってみると、そこには加奈の夫のヤクザ者の死。
加奈はその住居からあけぼの荘までの雪の上を這ってきたらしく、その跡以外は何の跡もなかった。警察は加奈がヤクザ者の夫と争い、夫を殺して自分も家具に頭を打ち、必死であけぼの荘まで這ってきたと推理したが…

ふたたびの葬送    
佐々植仁
羽藤圭一は恋人の江通子とともに実家に戻って来た。羽藤の両親が交通事故で死去し、年の離れた妹が暮らすだけになり、羽藤は江通子と結婚して田舎に引っ込む決心をしたのだ。
圭一は江通子とともにまず両親の墓に詣でたが、そこには破り捨てられた圭一の写真があり、墓石には圭一の名を書いたメモが貼り付けられていた。
いたずらだと笑う圭一であったが、翌日圭一が青酸カリを飲んで死んでしまった。一見自殺のように思われたが…

見えない足跡    
永宮淳司
推理作家宝田弘文が短編小説で賞を取り、うちわでパーティーを開いた。場所は弘文の所有する山荘で、招待者は作家仲間3人、編集者2人、弘文の女友達、それに作家仲間の一人の友人の名探偵。
弘文は人を呼んでおきながら、パーティが終わると仕事があると離れにこもる。その夜に雪が降り、翌朝離れで弘文の他殺死体が見つかったときにはお決まりの雪の山荘になっていた。
お決まりどおり離れの周囲には犯人の足跡が一切ついていなかったのだった。

仮面の中のアリア    
鈴木一夫
モーツアルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」が上演され、最後に主人公ドン・ジョバンニ(バリトン)・レポレロ(バス)・騎士長(バス)の3人が唄い幕となった。そのあとのカーテンコールに、ドン・ジョバンニ役の役者が姿を見せず、代役が挨拶して終わった。
ドン・ジョバンニ役が姿を見せなかったのも当然で、そのころには控え室で死んでいたのだった。最後の舞台の場面からカーテンコールまでの短い間に何者かに殺されたのだった。

蜘蛛の塔    
天宮蠍人
荒久根家の女主人梓の祖父であった荒久根男爵は蜘蛛の研究が趣味で、屋敷の中に蜘蛛の研究室を持つ塔を建てた。その塔のバルコニーは外からも鍵がかかったが、男爵はある日そのバルコニーで狂ったように踊り、そのまま転落死してしまった。
そして今度はその孫の梓が、やはりバルコニーで男爵と同じく狂ったように踊り、そのまま転落死した。梓が転落死した時、バルコニーのガラス窓は外から鍵がかけられていた。
そしてガラス窓の内側から梓が転落する姿が目撃されていた。目撃者は1人ではなく、しかもバルコニーには梓以外には誰もいなかったと証言し、梓の死は事故か自殺ということになったが…

逆密室の夕べ    
柄刀一
スイミング・スポーツ・クラブの4人の共同経営者のうち京西光二という男が兄の京西一也を殺害し、さらに小口四郎を監禁し自分は事故死するという事件を起こした。
事件当時クラブには3人しかおらず、光二は事務室で一也を殺し、小口を殴り倒して用具室に監禁して外から鍵をかけた。やがて小口が用具室で気がついて大きな音を立てたために、隣の更衣室にいた光二が驚いた拍子に滑って、棚に頭を強打して事故死したというのが警察の見解だった。
ちょうど連休にあたっていたために、小口は4日4晩監禁され、その間飲まず喰わずであったが4日後に助け出された。だが事件は解決していなかったのだ。

オニオン・クラブ綺談    
大友舜
大学のミステリ研の合宿があって、メンバーの一人が殺された。そのメンバーはミステリ研の鼻つまみ者であったが、腕力は強くその傍若無人な振舞いを誰もとがめられなかった。
したがって動機はほとんどのものにありそうだが、被害者は小指の先に自分の血をつけて小さな○を書き示していた。被害者のダイイングメッセージであった。

武者の呪い    
村瀬継弥
飛騨の山奥にある過疎化が進んだ真田村。推理作家とその同級生合せて4人が村への入り口である一本松峠に差し掛かると、霧の中にボロボロになった金属が棒に差されれて立っており、その下に炭がいくつか散らばっていた。
皆は何だろうといぶか知りながら村に入り、目に付いた老人に一本松峠で見たものの話を聞く。
老人の話では、関ヶ原で敗れた落ち武者が村に来たが、村人は後難を恐れその落ち武者を殺してしまった。それ以来その落ち武者の無念が時々一本松峠に錆びた兜を掲げるのだという。新道ができてからは一本松峠を通るものはほとんどなくなり、兜を見る者もいなくなったが…ということだった。
推理作家たちはほかの村人からも同じ話を聞き、帰りに峠に行ってみるがそこには棒も鎧も炭も跡形もなかった。推理作家はこの伝説を基に小説を書き、それが大ベストセラーになるのだが…

踊る警官    
北森鴻
大阪府警察本部長宛てに舞い込んだ一通の手紙。それによれば自分は3年前に女子高校生を殺し、その遺体を天皇陵に埋めたという。
警察は天皇陵の発掘を渋る宮内庁を説得し、考古学の権威阪南大学の西野教授に発掘を依頼した。発掘作業が始まり、暫くすると人骨の一部が陵墓から出てきた。色めきたつ警察、それとは対照的に発掘を坦々と勧める調査隊。やがて…


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