本格ミステリ01

2000年1月1日〜12月31日に発表された本格短篇から本格ミステリ作家クラブプロジェクトチーム(二階堂黎人、貫井徳郎、末国善己)が選んだベストアンソロジー。小森健太朗「新・現代本格ミステリマップ」、円堂都司昭「POSシステム上に出現したJ」、鷹城宏「作者を探す十二人の登場人物、木製の王子論」の評論3編も収録。
紅雨荘殺人事件   
有栖川有栖
亡き夫に代って化粧品会社を経営し辣腕を発揮した飯島粧子が、大阪箕面にある自宅紅雨荘で首を吊って死んでいた。しかし死体はどう見ても死後に首吊りに見せかけたもので、警察では最初から殺人事件と断定し、犯罪心理学者で英都大学助教授火村英生とミステリ作家有栖川有栖も捜査に加わった。
飯島粧子には娘1人、息子2人の子供がいて、遺産目当てという動機はあったが3人ともアリバイが成立。そしてもう一人、親戚で飯島粧子といがみあっていた女性がいることがわかった…

鳥居の赤兵衛    
泡坂妻夫
本を背負ってお得意先を廻る江戸の貸本屋鹿田屋吉太。鹿田屋の貸す本の中に「鳥居の赤兵衛」という義賊の物語りがった。「鳥居の赤兵衛」は大人気で、読みたいというお得意先が大勢いたが、その本は板木で刷った物ではなく、書き写したもので1冊しかなかった。
ある日、鹿田屋が風邪で寝込んだといって、代わりに安造と名乗る若い男が吉太のお得意先を廻り始めた。ところが、ある人が鹿田屋の住む長屋を訪ねたところ、鹿田屋はすでに急病で死に、すでに葬式も終わったいう…

四角い悪夢    
太田忠司
霞田千鶴はひどい夢にうなされていた。白い四角い箱に黒猫が入り、次にその箱を開けたときには女の子が入っていたと言う。この夢の話を聞いた千鶴の兄志郎は、箱は冷蔵庫ではないかという。そして新聞のデータベースから、小学校の低学年の頃、千鶴の同級生が行方不明になり、やがて捨てられていた冷蔵庫の中から遺体で見つかったという記事を見つけ出した…

子供部屋のアリス    
加納朋子
私立探偵仁木順平は産婦人科医から子守の仕事を頼まれた。産婦人科の2階で、医師の診療時間の間、新生児を世話して欲しいというのだ。断ろうとするが、ある事情から引き受けざるを得なくなった。慣れないうちは大変だったが、慣れてくると子供をよく見る余裕が生まれてきた。そして順平はあることに気づいた…

邪宗仏    
北森鴻
異端の民俗学者蓮丈那智のところに山口県波田村から同じ日に2通の手紙が届いた。差出人は違うが、中身は村の寺で最近発見された両腕がない仏像に関する論文と、その仏像の写真だった。
興味を引かれた那智は早速波田村に向うが、村では騒ぎが持ち上がっていた。那智のもとに論文を送った一人、郷土史家の御崎昭吾が3日ほど前に殺されていたのだ。しかも村で見つかった仏像のように死体からは両腕が切り落とされて…

人を知らざることを思う    
鯨統一郎
「犯人はあいつだ。やっぱりあいつはやってきたのだ。囲いを破って。二階に隠れても無駄だった。あいつは私を殺しにやってきた。誰もが逃れられない。そいつの名を書き記す。そいつの名は三」というのが、殺された与謝野サヨのダイイングメッセージだった。
サヨは夜中の2時に自宅の二階で殺され、目の前の机には長すぎるダイイングメッセージがノートに書かれていた。しかもその夜、サヨの家の一階には友人が来ていて寝付かれず、家の周囲は2メートルもの塀が囲い、しかも塀の周囲の未舗装の露地や庭には足跡一つなかった。サヨが殺されたときサヨのいる部屋は密室だったのだ…

正太郎と井戸端会議の冒険    
柴田よしき
猫の正太郎の活躍する物語。正太郎や友達のチェルシーたちの住むペットOKのマンションに、目つきのよくない不審な男が毎日のようにやって来た。チェルシーがベランダから何度も目撃していた。だが、男がどこの部屋に何を目的に行くのかはさっぱりわからない。チェルシーは猫殺しに違いないと騒ぐのだが…

エッシャー世界    
柄刀一
エッシャーを継ぐ者との評価を得ている画家故ハロルド・ミューラー。数年前にミューラーは妻と娘を何者かに殺されたが、犯人はわからないままミューラーは妻と娘の後を追った。
そんなミューラーの個展を見にに来た宇佐見博士は、ある絵の前で立ち止まった。その絵は「向かい合う人」と題されて、ミューラーが殺人者を告発した絵とされていた。
宇佐見博士は「向かい合う人」を見ながら瞑想に耽ると、そこにはエッシャーの世界が広がっていた。その世界の中でも何とも不可思議な事件が起こる…

黒の貴婦人    
西澤保彦
タックこと匠千暁、ウサコこと羽迫由紀子、タカチこと高瀬千帆、それにボアンこと辺見祐輔の学生4人は、一週間に1回か2回は大学の側の飲み屋「さんぺい」か「花茶屋」に繰り込んだ。
「さんぺい」も「花茶屋」も経営者は同じで、2つの店は10分ほどの距離にあった。彼らの目的は鯖鮨。鯖鮨は経営者が作る絶品で両店の裏メニューで、1日に各店で3食づつしかなかった。
ところが、彼らがどちらかの店に行くと、必ず白い帽子に白い服を着た貴婦人のような女性が鯖鮨を食べてお茶を飲んで10分ほどで出て行くのだった。ボアンは白い貴婦人は絶対に4人の誰かと繋がりがあるというのだが…

中国蝸牛の謎   
法月綸太郎
作家の鹿沼隆宏が雑誌の企画で法月綸太郎と対談し、久しぶりに本格推理小説を書くと宣言した。それから一週間後に雑誌の編集者から綸太郎のところに鹿沼が部屋に鍵をかけて閉じこもり、綸太郎に会いたいと叫んで困っているとの、電話が入る。
綸太郎が鹿沼の家に駆けつけると、鹿沼の書斎は中から鍵がかけられ、ベランダに廻ってもサッシの窓にはクレセント錠が内側からかかっていた。
綸太郎と編集者は窓ガラスを割って書斎に入った。書斎はもぬけの殻で鹿沼はいなかったが、書斎の中の全てものは逆さまにされていた。家の中を捜すと寝室に首を吊った鹿沼の縊死体があった。
鹿沼の死は自殺なのか他殺なのか?いずれにせよ密室の書斎からどうやって抜け出したのか?そして書斎の中のものが逆さまにされていた謎は…

透明人間   
はやみねかおる
虹北商店街の遊歩道は両側を商店に挟まれ、幅6メートル、長さは1.5キロほどのアーケードがついた道だった。クリスマスの日の朝、その遊歩道に色とりどりの足跡がついていた。おまけにアーケードの天井からは桜祭りや、七夕飾りや、秋の大売出しの飾りなど季節を無視した様々な飾りが吊り下げられていた。
いったい誰がこんなイタズラをと騒ぐ商店主たち…だが酒屋の親爺は昨日の夜、足跡だけがペタペタと遊歩道につく透明人間を見たと騒ぎ出した…

オリエント急行十五時四十分の謎   
松尾由美
東京都第七特別区はバルーン・タウンとも呼ばれ、人工子宮が一般化したにも関わらず、わざわざ自分のお腹で子供を育てたいと主張する妊婦が集められた区域だった。
新聞記者の友永さよりが作家の須任真弓に付き合わされて特別区を訪れた。特別区ではフェスティバルの最中で、真弓のサイン会も行われた。
そのサイン会で事件が起きた。妊婦の一人が真弓にトマトを投げつけて逃げたのだ。すぐにさよりが追いかけたが、妊婦は人足早く公園に据えつけられたオリエント急行の車両に逃げこんだ。
その車両では、中を6室に区切って妊婦が一人部屋に入り、妊婦占いが行われていた。さよりは車両に入りトマトを投げた犯人を捜すが車両のどこからも見つからなった。
犯人が車両に入ったのは間違いなかったし、その後車両の出入口は複数の人間に見張られていた。犯人は煙のように消え去ってしまったのだった。

龍の遺跡と黄金の夏  
三雲岳斗
地球温暖化が進行し砂漠の面積が格段に広がったアフリカ。その砂漠の中にある遺跡で発掘調査中の大学教授がナイフで刺し殺されていた。
教授の死体は遺跡の中の祭壇と呼ばれる部分にあり、その前に水を湛えた7メートルはある堀があった。堀の縁から水面までは1メートルはあり、遺跡の石はツルツルで取っ掛かりがないから、泳いで渡っても祭壇には這い上がれない。
祭壇から出入りするには、祭壇の上部に開いた穴から出入りするしかないのだが、そこには人がいて出入りしたものはないという。つまり教授が殺された遺跡の中は密室状態であったのだ…


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