1975年12月号
目次
大特集:「ロック」傑作選
探偵雑誌「ロック」全冊表紙誌上展
新当麻寺縁起 藻波逸策
噴火口上の殺人 岡田鯱彦
作品回顧=「噴火口上の殺人」前後 岡田鯱彦

R夫人の横顔 水谷準
水谷準論=黒き死の讃歌 権田萬治
みささぎ盗賊 山田風太郎
人と作品=奇想小説の奇才・山田風太郎 山村正夫
緑亭の首吊男 角田喜久雄
解説=「ロック」五年史 中島河太郎

魚の国の記録 紗原砂一
失楽園 北洋

「ロック」創刊の頃 山崎徹也
編集長交遊録 鮎川哲也

資料
「ロック」総目次 島崎博・編

巻末書下し中篇
毒の家族 水上幻一郎

フランス探偵小説・ステーマンとウェンズ氏 松村喜雄
新刊紹介=ミステリ館への誘い 二上洋一
全日本大学ミステリ連合通信
幻影城ファン・クラブ通信
幻影城サロン
1975年「幻影城」作家別総索引
 
噴火口上の殺人
岡田鯱彦
信州A火山の山麓T村に住む柿沼達也の招待で集まった高校時代の4人同級生。柿沼の目的はそのうちの一人香取馨との決闘にあることは明らかだった。
香取は柿沼の妹美代子と相思相愛となり、柿沼が2人の仲に反対すると美代子は信州の家を飛び出して香取のもとに家出した。しかしそのころ文学青年であった香取は雑誌の懸賞に当選し、若手作家として活躍を始めた。
同時に女性関係が派手になり、美代子は半ば捨てられ自殺した。香取はそれをなんとも思わず、かえって小説の題材にする始末だった。
さて、柿沼の招待に応じた皆は柿沼の提案で雪が積もる中、A火山の噴火口に登った。そこで柿沼が香取との決闘を提案。火口の中に見える細い塔のようになった岩に登って帰ってくることで勝負をつけようと言い出した。
香取もそれに応じ、先に柿沼が行い成功。だが香取は岩には登ったものの帰り道に転落して火口に飲み込まれてしまった。

雑誌「ロック」の第2回新人懸賞募集(昭和24年8月別冊)の第一席入選作品で、岡田は作品回顧録を載せているが、本人も「薫大将と匂の宮」とともに代表作としている。
新当麻寺縁起
藻波逸策
東京美術学校工芸科の厨川教授が上野で見た水死体は、助手の吉井潔の元妻和代のものだった。死体は不忍池から流れ出す忍川で見つかり、不忍池に投げ込まれたものらしかった。
ただ奇妙なことに死体は尼の格好をし、頭も眉毛もそられていた。さらに被害者和代は性病に感染していたこともわかった。さらに体中の血が抜き取られていることもわかった。
和代は吉井と離婚したあと、岩下偵二という男と暮らしているはずであったが…

雑誌「ロック」の第2回新人懸賞募集(昭和24年8月別冊)で青池研吉の「飛行する死人」とともに第二席に入選した作品。

R夫人の横顔
水谷準
百貨店で行なわれた写真展に出品されたR夫人の横顔。R夫人とは頼庄一郎氏の夫人のことで、夫人は頼氏を射殺したとして逮捕され有罪となって獄死したという。
問題はなぜR夫人が頼氏を殺したかということであったが…

怪奇的幻想的な小説を得意とした水谷準が、珍しく動機を重点に書いた作品で、ロマンチックな雰囲気が全篇に流れる。

緑亭の首吊男
角田喜久雄
流行らない中華飯店を買い取って酒場緑亭を始めた野田松太郎。戦争が激しさを増した1年程前、空襲の危険が現実のものとなると松太郎は疎開先を探しに俄かに旅行に出て、そのまま消息を絶った。
戦争が終わってしばらくして松太郎はひょっこり姿を見せた。松太郎はヤクザに追われて逃げ回っていたという。緑亭はその間妻のヨシ子がなんとか切り盛りしていたが、松太郎が帰って以前通りになるかと思われた矢先のこと、松太郎を追ってきたヤクザ橋本喬一が店内で殺され、さらに松太郎が店の裏にある自室で首を吊って死んでいた。
その日は緑亭の休業日でヨシ子や住込みのバーテンたちも皆留守にしていた間の出来事だった。松太郎の死体には自筆の遺書もあり、それによれば喬一を殺し、自分も首吊り自殺したと考えられた。
当時家には松太郎の弟竹次郎がいたが、竹次郎は知的障害児で証言もできず役にも立たぬ。結局松太郎が喬一を殺しての自殺と断定されたが、加賀美警部はこれに疑問を抱く。

昭和21年12月号掲載。角田はその後昭和22年5月号から23年1月号にかけて代表作の一つとなる「奇蹟のボレロ」を連載する。

失楽園
北洋
私がイタリアローマで中性子放射の研究をしていた頃、カステルマリ未亡人のところに下宿していた。未亡人にはジュリエッタという娘があった。
20歳そこそこで可愛いジュリエッタであったが、ある日突然行方不明となった。やがてジュリエッタは死んだのだという噂が広まり、下水からは魚の腐ったような匂いがしだした。

北洋は紗原砂一とともに「ロック」が発掘し育てた新人で、湯川秀樹門下の逸材と言われた原子物理学者。

毒の家族
水上幻一郎
妻問婚、それは結婚後も夫と妻が別居し、夫が妻の家に通う結婚様式で、大和・奈良朝のころから一般的に行なわれ、明治に入ってようやくすたれた習俗であった。
裏妙義一帯を領有していた豪族の末裔である赤尾木一族には今なおその風習が残っており、尼子富士郎博士はその研究の為に、台風が近づく中、赤尾木一族の住む村に向った。
ちょうどそこには当主の英子のほか長男忠弘、次女美佐の二人の身内と、死亡した長女の夫だった稲本善次郎、善次郎の双子の兄稲本幸太郎の兄弟、カメラマンの忠弘とともにやってきたモデルのカタリーナ・ヨンソン、看護婦の松野鶴代と多くの人間が集まっていた。
そして尼子が着いた、そのときに稲本幸太郎が殺された。犯人は強盗をやろうと忍び込んだ毛利平吉、もと赤尾木家の運転手だった。
しかし平吉の証言は、ピストルを撃ったときすでに幸太郎は死んでいたというのだ。事実幸太郎の死因は青酸性の毒物によるものだった。
さらに翌日には英子が毒殺される。梅干にまぶした砂糖の中に青酸が混入されていたのだった。青酸はカメラマンの忠弘が暗室に置いておいたものと判明。誰かが暗室の青酸を盗んだのだった。その機会は全員にあったが…


大特集「ロック」傑作選として、昭和21年3月と戦後最も早く創刊された探偵雑誌「ロック」に掲載された作品を特集している。
中島河太郎氏「ロック」五年史、島崎博編「ロック」総目次によれば、長篇では横溝正史「蝶々殺人事件」、角田喜久雄「奇蹟のボレロ」を連載、新人では北洋、紗原砂一を発掘し育てた。懸賞では岡田鯱彦「噴火口上の殺人」、藻波逸策「新当麻寺縁起」、青池研吉「飛行する死人」、薔薇小路棘麿(鮎川哲也)「蛇と猪」、水上幻一郎「火山観測所殺人事件」などを掲載した。
ただ同時期の「宝石」などと比べると内容には乏しかったらしく、実質的に昭和25年1月号で終わっている。
そのほか巻末読切中篇は水上幻一郎の書下ろし「毒の家族」。

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