合わせ鏡の迷宮

第5回鮎川哲也賞を「仮面」で受賞した愛川晶と、同じ年に「由仁葉は或る日」を応募して最終選考に残った全盲の美唄清斗の合作による「合わせ鏡」を中心に、それを両氏の短編とエッセイが挟む形で構成。
奇跡を信じてみませんか
美唄清斗
この物語は平成の世を遠く遡って、1950年代の半ばから60年にかけて、都会の巷の片隅でのささやかな大人のメルヘン、と思っていると…

合わせ鏡
愛川晶・美唄清斗
中島一郎と二郎の兄弟の父親が大動脈瘤で病院に運ばれた。医師によると詳しい検査をしなければ手術するかどうかはいえないが、手術の場合は年齢的な面もあって成功率は50%以下だろうという。
2人の父親は小学校長を最後に退職し、才覚で自宅をマンションに立て直して賃貸し、自分は二郎と2人でマンションの1階に住んで管理人的なこともやっていた。二郎は中学の教師で独身だった。
一方兄の一郎は全盲者でこちらも独身、父親と二郎の住むマンションから車で20分以上はかかる地にワンルームマンションを借り、近くで鍼治療院を開設していた。2人は父親の病状も心配だったが、それ以前に付き添いの心配をしなければならなかった。
そんなときに湖川秀樹が現れた。湖川は父親のマンションの近くに住む三流雑誌の記者で、兄弟の幼馴染だった。湖川は大人の前では優等生だが、影に回れば陰険な手段で兄弟を苛めた。
湖川は今でも兄弟に付きまとう疫病神だった。兄の一郎には、一郎が惚れているホステスを横取りし、さらに一郎に1千万円出せばホステスを譲ると言ってきた。しかも湖川はそのホステスと何度か関係を持ったようで、証拠と称して房事のテープまで一郎に渡してきた。
二郎の方は恐喝にあっていた。二郎はひょんなことから違法なカジノバーに出入りし、暴力団関係者とも繋がりができていた。そのことを湖川に嗅ぎつけられて7百万を要求されたのだ。
父親のこともあって、一郎も二郎も湖川から脅されている件は、相手に話さずにいたが、2人ともパソコンの日記に詳細を書き記した。そしてついに湖川の執拗な脅しに堪忍袋の緒が切れ、湖川を殺す決心をした。

詐欺師の白い杖
愛川晶
水谷ゆりは看護婦をしていたが、詐欺にあって300万の借金を負った。返すあてもないので海に飛び込んで死のうと思い埠頭に行ったが、そこで全盲の塚野良夫と出会った。
塚野はゆりが死のうと思い詰めていることを見事に言い当て、自宅に誘った。そこでゆりの話を聞いたあと、自らを詐欺師と名乗った。塚野に言わせれば詐欺などそんなに難しくないというのだ。
塚野の武器は声色であった。人の声を真似るのが異常に上手いのだった。目の前で実験されゆりはびっくりした。そんなゆりに塚野は詐欺の片棒を担ぐことを持ちかけた。
詐欺にあって借金を負ったゆりは、復讐の意味もあって塚野の言いなりになった。塚野は目の前で電話を使った詐欺の実演をした。見事だった。寸借詐欺みたいなものだが、あっという間に10万円が入った。
次にはテレビ局の懸賞当選を利用した詐欺で、300万以上が転がり込み、ゆりはその金で借金を全て清算した。そして次にはゆりの叔父が銀行に勤めているのを利用して、ゆりの勤める病院の医師から数千万を騙し取ることになった。


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