天に還る舟

警視庁捜査一課の刑事中村吉造は、休暇を取って妻の実家のある秩父に来ていたが、そこで不思議な連続殺人事件に巻き込まれた。長瀞町の一流旅館想流亭のオーナーで、元町会議員でもある藤堂菊一郎が奇妙な殺され方をしたのが最初の事件だった。
藤堂の死体は荒川を渡る秩父鉄道の鉄橋に吊るされていた。鉄橋の枕木からロープをかけられて首を絞められ、死体は川の上でブランブランと揺れていた。さらに死体の下には小舟が一艘、これも枕木からロープで艫と船尾を吊るされて空中に浮かんでいた。
中村は妻の実家の知合いであった藤堂の葬式に行って、その奇妙な死体の話を聞き俄然興味が湧いてきた。ただ事件は既に自殺として処理されていた。そこで知り合いの清水巡査に頼み、想流亭の従業員など関係者の話を聞いた。
すると死体の顔には赤ペンキが塗られていたり、小舟の中にはガラス製の器のかけらがたくさん散らかっていたりと、ますます奇妙な点があった。
そうこうするうちに次の事件が起きた。今度は想流亭の滞在客陣内恭蔵が荒川の河川敷で黒焦げの遺体となっているのが発見されたのだ。陣内の遺体は荒川の石畳の上で焼けただれていたが、目撃者がいた。
目撃者によると段ボールをかけられた陣内の体が突然発火し、そのままあれよあれよという間に燃え上がったというのだ。その直前には空中で小さな火の球が光ったという。さらに遺体の頭の下からは広げられた扇子が出てきた。
陣内は秋島重治、浅見喬の3人で想流亭に泊まっていた。この3人に藤堂を加えた4人は戦友慰霊会の会員で、毎年の行事としてこの時期、戦友の供養がてら集まって、戦友をしのんでいたのだ。
残った秋島も浅見も相次ぐ戦友の死に驚いていたが、事件にはまったく心当たりがないという。だが事件は続いた。3人目の犠牲者は浅見だった。浅見の死体も河川敷で見つかった。
浅見の体は河川敷の岩に鉄鎖で縛りつけられ、首を青竜刀で刎ねられていた。その首は死体の側にゴロンと転がり、その手は前に水平に伸ばされていた。そして首には赤ペンキが塗られていた。
中村は捜査にあたった埼玉県警の川島警視の要請で、想流亭に滞在している海老原浩一という青年とともに、側面から捜査に協力する。だが中村にも海老原にも事件は皆目見当がつかなかった。
そしてさらに秋島と、病気を理由に戦友慰霊会を脱会し、長瀞町内の家に引き籠った長澤和摩の2人の死体が相次いで河川敷で見つかった。
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