白銀荘の殺人鬼

愛川晶と二階堂黎人による合作品で、カッパノベルズから彩胡ジュン名義で書下しで刊行され、著者当てクイズもあった。

立脇順一は7歳年上の妻の清香と娘の遥の3人で、猪苗代湖畔にスキーに来た。順一は養子で、妻の清香は不動産会社を経営し、都議会議員でもある父親に甘やかされて育った我儘女であった。
一方の順一は教育者夫婦の家に生まれたが、父は愛人を作り早くから家を出、母親はやたらと順一を虐待した。父母ともに表面は教育者らしく慈愛に満ちていたが、それは他人の前だけで、順一には暴力と恐怖と無視で接したのだ。
それに対し順一はひたすら恐怖し耐えた。母親と死別し、父親は愛人と入籍し、ひとり東京で住まいしたが、就職試験を受けに行ったのが、たまたま清香の父親の会社で、そこで清香に一目ぼれされたのだ。
やがて順一は清香と結婚したが、おとなしい順一は清香のいうがままだった。清香はことあるごとに順一を罵倒し、あたまから馬鹿にした。だが順一は口応え一つしなかった。
そんな順一であったが、その心の中には美奈子という別の人格が共存していた。順一は多重人格者だったのだ。美奈子はぐずで優柔不断な順一とは正反対で、決断力もあり実行力もあった。
美奈子と順一は小学校3年の時から共存していたが、美奈子が順一を押しのけて出ると、運動会でも活躍したし、仕事の成績も上がった。だが美奈子と入れ替わったとき、順一の存在は押しのけられ、その間の行動が全く記憶に残らないにも関わらず、順一は美奈子の存在を認めようとはしなかった。

時が経って美奈子は、順一の肉体にもうひとり別な人格が存在することを意識した。名を晴代という理知的でもの静かな女性で、美奈子のように積極的に表に出ることは決してなかった。
そして晴代は順一を憎んでいた。小さいころに両親から受けた虐待の犠牲は、ほとんど晴代の人格が受けていたのだ。そして美奈子と晴代は順一をこの世から抹殺することに合意した。
順一をこの世から抹殺する方法は、美奈子が順一を押しのけて表に出て清香を殺し、ついでに無関係な第三者を複数殺害して順一に入れ替わり、順一をパニックに陥れてその人格を抹殺してしまうのだ。
そのために舞台が今回のスキー旅行であり、計画の実行まで数時間に迫っていた。場所はペンション村の奥にポツンとある白銀荘というペンションであった。ペンション村とはトンネルで結ばれているだけで三方を山と川に囲まれている陸の孤島のようなところだ。
白銀荘にはオーナー夫婦とアルバイトの若い男女、客は順一たち3人のほかに、若い女性3人組と群馬県の建設会社の4人だけだった。しかもおあつらえ向きに雪が激しくなり、吹雪となってきた。舞台は整ったのだった。
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