見返り美人を消せ

夫婦による合作で、第5回横溝正史賞受賞作。
東京都中央区築地明石町に建つ5階建ての小じんまりしたマンションの庭で事件が起きた。早朝、その庭を横切ろうとした初老の男が、マンションの4階ベランダから落ちて来た花鉢に後頭部を直撃されて死亡したのだ。
死んだのは近くの運送会社で警備員をしていた柴山吉男という男で、毎朝職場を抜け出しては佃島の神社に願をかけに行っていた。職務規定違反だが、往復30分ほどで別段職務上の支障もないことから日課としていたようだ。
ただし本人も規程違反は気にしていたらしく、時間を少しでも短縮しようとして、近道であるマンションの庭を横切っていたらしい。そして災禍にあってしまった。花鉢を落とした方は、4階に最近引っ越してきた朝海雅子という切手商を営む女性だった。
雅子はベランダの手すりにかけて重く大きな花鉢を置いていた。昨夜、ふとしたことから行きずりの男を部屋に泊め、その男と早朝のベランダで争ううちに花鉢を落下させてしまったと供述した。
物音に驚いて管理人が庭に飛び出して上を見上げたときに、ベランダから男の顔が覗いていたのを管理人も見ていた。事件は過失致死事件とされ一応の決着を見た。
それから20日ほどして箱根の芦ノ湖畔で一人の男の死体が見つかった。福井修と名乗る無名の画家であったが、死体の所持していた煙草が珍しかった。雅という銘柄で、京都市内限定で発売されていた。
さらに死体が持っていた「見返り美人」の切手シートが有力な手掛かりと思われた。そのシートは透明なプラスチックケースに背中合わせに入れられ、ケースの片隅には穴が開けられて紐が通されていた。
福井の事件の記事をたまたま読んだ築地署の寺田刑事は、雅を雅子が吸っていたのを思い出した。さらに福井には不釣り合いな高価な切手シートが2枚。ひょっとして福井と雅子の間にはなんらかのつながりがあるのではないか…
寺田刑事はさっそく雅子の近辺を再び洗い始めようとしたが、その矢先不思議な話を聞き込んだ。花鉢事件が起きた朝、マンションの外を切手シートが宙を舞っているのを見たという子供がいたのだ。
寺田はそれを聞いた瞬間にひらめいた。見返り美人の入ったプラスチックケースが紐で引き上げられたのだ。そうであれば花鉢事件は事故ではなく殺人だ。庭に落ちていたケース入りのシートを拾おうとして身をかがめた柴山を狙って、4階から故意に花鉢を落とした、つまり雅子による殺人だった。築地署は大騒ぎになった。だが当の朝海雅子は店を譲り渡してとっくに行方をくらましていた。
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