EPISODE16
断たれた音
THE MOST DANGEROUS MATCH
Guest Stars
LAURENCE HARVEY
LLOYD BOCHNER
JACK KRUSCHEN
ON AIR Mar 4.1973(USA) Nov 25.1973(JPN)
スタッフ
製作…ディーン・ハーグローブ
共同製作…エドワード・K・ドッズ
監督…エドワード・M・エイブロムズ
脚本…ジャック・ギリス
音楽…ディック・デ・ヴェネディクティス
撮影…ハリー・ウォルフ
美術…アーチ・ベーコン
キャスト
エメット・クレイトン…ローレンス・ハーヴェイ
ベロスキー…ロイド・ボックナー
トムリン・デューディック…ジャック・クリュッシェン
リンダ…ハイディ・ブリュール
アントン…マシアス・レイツ

欧米ではチェスは完全なスポーツで、日本でいうなら囲碁も将棋もスポーツという感覚らしい。そのチェスを扱った作品。
チェスのチャンピオン、クレイトンは元チャンピオンのデューディックの挑戦を受ける。クレイトンはデューディックが引退したからチャンピオンになれたようなもので、まともに戦っては歯が立たない。 ならば戦えないようにしようというわけで…
ところがクレイトンにはハンディがあった。聴覚障害者で補聴器なしでは音が聞こえないのだ。犯行当日にその補聴器が壊れてしまい、それが思わぬ結果に…
この事件の解決はすさまじい。つまり耳の聞こえないことが犯人の条件だと言うのだ。証拠など何もないに等しいのだが畳み込むようなコロンボの科白に圧倒されるラスト。 クレイトンの対戦相手デューディックは番組中ではどこの国の人間かは明らかにされないが、ソ連の人間であることは明らか。 犯人役のクレイトン・ロースンだが、暗い・・・
STORY
悪夢だった。耳を塞いで不気味な音から逃れようとする男に、巨大なチェスの駒が次々と襲い掛かる。そしてキングの駒が紳士の姿に変わり、逃げ惑う男を押しつぶそうと迫ってきた。身をかわしながら逃げ惑う男。その男はホテルの部屋でベッドから落ちて目を覚ました。
夢から覚めた男はあたりをゆっくりと見渡し、テーブルから補聴器を取るとイヤホンを耳に挿した。その男はチェスの世界チャンピオン、エメット・クレイトンだった。
明日このホテルでチェスのタイトルマッチが行われる。クレイトンの相手は元世界チャンピオンのトムリン・デューディック。デューディックは病気のために引退したが、今回クレイトンと戦うためにカムバックしたのだ。

その日の夕方、クレイトンはホテルのロビーでマスコミに囲まれていた。強気のクレイトンは自信たっぷりにデューディックを破ると公言していた。
そこにデューディックがコーチのベロスキーや今回のタイトルマッチをプロモートしたリンダらとともに現れる。たちまちマスコミに囲まれるデューディック。クレイトンもデューディックもお互い相手を意識していたが、それ以上に意識していたのはリンダだった。
リンダはかつてクレイトンと婚約していたが、今ではクレイトンを憎悪していた。マスコミから逃れたホテルの一角でリンダはデューディックに「絶対に勝ってください。あの男の唯一つの誇りを叩きつぶしてください」と激しい口調で語った。
デューディックはリンダをなだめ、自分は部屋でゆっくりしているから皆で食事に行くように勧めた。そしてリンダ達が食事に行ったのを確認すると、ホテルを抜け出した。

ロビーでその様子を見ていたクレイトンはデューディックの後を追けた。デューディックが足を向けたのは、町の小さなレストラン。少し遅れてクレイトンがそのレストランに入ると、デューディックが声をかけ椅子を勧めた。初対面の二人はお互いを探るように見つめた。
ディーディックは持病のために主治医まで同行してしてきているほどで、厳しい食事制限を課せられていた。とてもその食事制限に耐えられず、ホテルを抜け出してレストランに大好物のエスカルゴを食べにきたのだとクレイトンに言った。
暫くして、当然のようにチェスの話となり、さらに塩や胡椒のビンを使ってチェックのテーブルクロスの上でゲームを始めてしまう。しまいにはエスカルゴの殻まで使われる始末だったが、クレイトンの形勢は不利だった。
さらに痛い手を打たれるとクレイトンは補聴器のイヤホンをはずした。ディーディックが「補聴器とは便利なものだ。聞きたくないことは聞かなくてもいいんだから」と呟くと、クレイトンはその発言に答えた。「わかるのか」と驚くディーディックに「唇の動きでね」とクレイトンは応じた。
結局店の主人がやって来きたのを機に、形勢がかなり不利だったクレイトンは席をたってしまう。

ホテルに戻った二人だったが、タイトルマッチの前夜にニ人一緒のところを見られるわけにはいかないとのディーディックの言葉にクレイトンもうなずく。 ディーディックの提案で別の入口を探すことになり、結局二人はごみ処理場の脇からホテルに入った。
ごみ処理場には最新のごみ処理機がうなりをあげて動いていた。その脇の階段を作業員の目を盗んで上がり、ホテルの内部に入った。
暫くしてクレイトンの部屋をノックする男がいた。バスローブのクレイトンがドアを開けると男はディーディックのコーチのベロスキーと名乗った。ベロスキーはディーディックを探していると言う。クレイトンはディーディックなど知らないし、「安眠を妨害するつもりか。嫌がらせだ」とベロスキーを追い返してしまう。
ドアを閉めて部屋に戻るとそこにはディーディックがいた。二人はチェスをしていたのだ。ベロスキーの訪問で中断されたが、ディーディックの手番からゲームが再開された。
といってもディーディックの一方的といってもいい展開で、勝利してしまった。それを見て愕然とするクレイトン。クレイトンの様子に驚いたディーディックは、「今日はいろいろあって疲れているんだろう。明日は大丈夫だよ」と慰めるが、クレイトンは「一人にしてくれ」とディーディックを追い返してします。

一人になったクレイトンは、昨夜の悪夢が現実になり、惨めにもチャンピオンの座から引きづり下ろされる恐怖に、思わず補聴器を投げつけて壊してしまう。
一夜開けた翌朝、クレイトンは意を決した様子で行動を開始した。公衆電話からアステカ航空に電話してディーディックの名前でメキシコシティーまでの座席を予約した。
次にデューディックの部屋に電話し、デューディックに思いつめた声で「話したいことがあるので、ごみ処理場のドアの前で会いたい」と言い、デューディックを誘い出した。
洗面中だったディーディックは慌てて洗面を終え、着替えて部屋を出て行ったが、ちょうどその時にメイドが部屋の掃除にきた。デューディックはエレベーターへ、メイドはデューディックの部屋へ入り、廊下に誰もいなくなった時に廊下の物陰からクレイトンの姿が現れた。
クレイトンは半開きのディーディックの部屋のドアにテープで細工をし、鍵がかからないようにして再び物陰に身を隠した。メイドが掃除を終えて部屋から出ると、クレイトンはデューディックの部屋の忍び込み、ディーディックの鞄に洗面道具や衣類を詰める。
そしてディーディックの専用の封筒を一枚失敬すると、その鞄を持ってディーディックを呼び出したごみ処理場の前のドアに向かった。
クレイトンはディーディックに会うと取り乱した様子で、リンダに対しての謝罪の手紙を書きたいのだが、リンダの母国語がわからないので、同じ国出身のディーディックに「何か書いて欲しい。後でそれを写すから」と頼む。
何を書けばいいのかと問うデューディックに「悪かった。許してくれ」など謝罪の言葉を言って、それをディーディックに書かせる。書き終わったメモをとると、クレイトンはデューディックをドアの向うに突き飛ばした。
ドアの向うには昨日見た最新型のごみ処理機がうなりをあげて動いており、ディーディックはその中にまっさかさまに落ちていった。

クレイトンはその後で昨夜壁に投げつけて壊した補聴器を直し、試合会場に入ったがデューディックは一向に現れない。
そのころディーディックは病院に運ばれ、ベロスキーやリンダ、ディーディックの日常の健康管理を行うアントンなどにコロンボが事情を聞いていた。
ホテルの裏口にはディーディックの呼んだらしいタクシーも着ており、その運転手は空港までディーディックを送るように会社から指示されていた。 さらに鞄が見つかったことや航空券の予約をしていたことなどからディーディックは海外に逃亡しようとして、その途中で事故にあったのではないかと警察は見ていた。
それに対しベロスキーやリンダは口を揃えて「ディーディックは大事な試合から逃げるような人ではない」と取り合わなかった。
そこに知らせを受けたクレイトンがやってきた。そして「部屋のドアの下にあった」と封筒を手渡す。その封筒はディーディックの公式のもので、今朝クレイトンが失敬したものだった。
コロンボが封を切り、ベロスキーが翻訳をすると「悪かった。許してくれ」など逃亡者の書置きのような文句が並んでいた。頭を抱えるベロスキーに悔やみを述べるクレイトンだが、コロンボがそこで「それじゃ、デューディックさんが亡くなられたようで悪いですよ」と口を挟む。ポカンとするクレイトンにコロンボは「重体ではありますが、生きておられます」と告げた。
コロンボはディーディックの部屋を調べ、昨日来ていたワイシャツからニンニクの匂いがすることから、どこかに外出してニンニクを使った料理を食べたこと、さらに義歯のディーディックが普通の歯ブラシを鞄に詰めていたことなどからディーディックの逃亡に不審を抱く。
ベロスキーらにその話をするとアントンが歯ブラシは自分のものだと述べた。ということは荷造りはディーディックがしたものではないことになる。つまり殺人未遂の可能性があることをコロンボは示唆した。

ディーディックが運ばれた病院にクレイトンが現れた。看護婦に状況を聞くとまだ手術が続いており、手術が無事に終わっても10時間以上は意識が戻らないだろうと告げられる。
そこにリンダが現れた。椅子に座ってクレイトンとリンダは言葉を交わす。リンダは医者に頼まれてホテルにデューディックの持病の薬を取りに行くところだった。さりげなくリンダが持っている薬のリストを見るクレイトン。
リンダと別れるとクレイトンは今見た薬のリストをメモした。ちょうどそこにコロンボがやってきた。そしてクレイトンを昼食に誘う。
断るクレイトンを無理やり車に乗せて、車の中で「封筒は公式のものなのに手紙が書かれていたのはメモ用紙だった。しかもディーディックの部屋にはメモ用紙はなかった」と疑問を口にする。
コロンボが半ば強引にクレイトンを連れてきたのは、昨日クレイトンとデューディックがエスカルゴを食べ、チェスをしたレストラン。コロンボはワイシャツのニンニク臭からこの店を突き止めたと言い、昨日ここに来たことを何故黙っていたのかとクレイトンを責めた。
クレイトンは昨夜のチェスの話をし、自分が勝ったのだがそれが原因でディーディックが逃亡を企て、その途中で事故にあったなどつらくて話せなかったと言い訳した。

暫くしてホテルのロビーでクレイトンとコロンボが出くわした。デューディックの手術が無事終わったことを告げられたクレイトンは表情を硬くする。そしてデューディックの部屋に忍び込み、持病の薬をすり替える。
すり替えが終わった直後にリンダが現れ、偽の薬を持って病院に向かう。病院では順調に回復を始めたディーディックが薬を注射して暫くすると容態が急変した。コロンボが呼ばれ駆けつけたが、コロンボが病院に着くと同時にディーディックは息を引き取った。
コロンボは呆然としているリンダにクレイトンに薬のリストを見せなかったかと質問し、リンダからチラッとだが見せたと回答を得るとクレイトンが薬をすり替えたと確信した。
そしてごみ処理場に行くと何事かを考え込んだ。そこにコロンボの犬が入ってきて、ごみ処理機に向かって駆け出した。慌てて犬を抱きとめるコロンボに、作業員はもし機械の落ちても安全装置が働いて機械はすぐに止まることを説明した。動いている機械に何かが落ちると自動的に機械は止まるので、動かすときはまたスイッチを入れるのだという。これを聞いたコロンボは笑みを浮かべた。

ディーディックの追悼行事と称して、ホテルで10数人を一度に相手してチェスのゲームをしているクレイトンのところに赴いたコロンボは、クレイトンをしきりに挑発しごみ処理場に連れてくる。
二人は稼動しているごみ処理機の脇で大声で話をするが、クレイトンは騒音に耐えられず補聴器をはずしてしまう。その直後に待機していた警官がごみ処理機を止める。
なおも怒鳴りあうクレイトンとコロンボだが、ついにクレイトンが「機械を止めろ」と叫ぶ。コロンボはその言葉を聞くと黙ってクレイトンを見つめた。クレイトンがごみ処理機を見ると既に運転は停止していた。
ゆっくりと補聴器をつけたクレイトンにコロンボは「これが分からなかったんだ。何故犯人は機械が止まってしまったのに、また動かそうとしなかったのか。スイッチは目の前にあるのに。犯人には止まったのが分からなかったんです。お気の毒だが、縦から見ても横から見ても明らかなんだ。この事件の犯人は耳の聞こえないもの以外にないんです」


Episode ListのPageにもどる
COLUMBOのMain Pageにもどる

Last modified -