タラント氏の事件簿
The Curious Mr.Tarrant
消失、密室など不可能犯罪を扱った連作短篇集。トレヴァス・タラントを探偵役に語り手のジェフリー・フィランと妻のヴァレリー、タラントの執事兼従僕のカトーらがレギュラー。
古写本の呪い     The Episode of the Codex' Curse
メトロポリタン博物館の地下室は建物の角に位置するために、L字型に折れ曲がっていた。今、そのテーブルの上にアステカの古写本が乗っている。本といっても長さ80センチ、直径10センチはある巻き物であった。
そしてそのテーブルの前に椅子を置き、夜番をするのはジェリー・フィランであった。この古写本には呪いの記述があり、それによれば今夜が呪いが実現する日であった。
部屋のだた一つの出入り口は外から鍵がかけられ、外には警備員が常駐している。明かりとりの窓は3つあるが、いずれも鉄格子が嵌っている。いわば密室であった。ここでジェリーは一晩、呪いがあるかどうかを見極めることになった。
突然電気が消えた。停電だった。警備員が鍵を開け、内部を懐中電灯で照らした。そのとき確かに古写本はテーブルに乗っていた。そこに電話である。友人から様子を訪ねる電話だった。
ジェリーが停電のことを知らせると、友人はすぐに古写本から離れて床に伏せろといい、その途端電話が切れた。一方内部を確認した警備員は、声をかけて鍵を閉め原因を調べに行った。やがて電気がついた。が、テーブルからは見事に古写本が消えてなくなっていた。

現われる幽霊     The Episode of the Tangible Illusion
ジェリーの恋人ヴァレリーモビッシュは、敷地の中に立てた小じんまりした家に一人で住んでいた。この家は建築家のヴァレリーの兄が建ててくれたものだった。
ところがヴァレリーはこの家に住んでから、様子がおかしくなった。夜中に寝室で人間の体が絞首台にぶら下がっている幻を見たり、怪談で後ろから足音に追いかけられたり、階段を下りる途中で誰かに突き飛ばされたり。しかし周囲にも家の中にも、他に人のいる気配はなかった。
心配したジェリーが様子を見に来るが、今度はジェリーも同じ怪現象に見舞われた。ヴァレリーの神経はズタズタになり、寝込んでしまった。ジェリーは車を飛ばしてタラント氏のもとに向った。

釘と鎮魂曲     The Episode of the Nail and the Requiem
タラント氏のアパートメントの屋上にあるペントハウスは、画家のマイケル・サールティがアトリエとして使っていた。内部は天井が高く北側にアトリエ、南側には簡易キッチン寝室、西側には浴室があった。
出入口はアトリエの西側にあり、南側には普通の窓、北側は一面の窓、そのほかには採光窓があるばかりであった。そのペントハウスからレクイエムがずっと聞こえるのを不審に思ったアンテナ修理の電器屋が管理人に告げ、管理人はタラント氏やちょうど遊びに来ていたジェリーとヴァレリーの新婚夫婦とともにペントハウスに向った。
はしごをかけてアトリエを覗くと、血まみれになった全裸の女が見えた。出入口を破って入って見ると、女はナイフを突き立てられてすでに息絶えていた。アトリエにはカンヴァスがあり、殺された女をモデルにした絵が描かれていたが、死体のナイフと同じ位置に釘が打ち込まれ、血が描かれていた。
犯人はサールティと思われたが、行方が分からなかった。現場のペントハウスの出入口は内部から閂がかけられ、窓も全て内側から施錠されていた。サールティは屋上の密室からどうやって逃げたのだろうか。

「第四の拷問」     The Episode of the "Torment W"
ウィネスペクワム湖に別荘を持つブラック一家は、「第四の拷問」という奇妙な名をつけたモーターボートを所有していたが、ブラック夫妻と10歳になる娘の3人で船遊びに出たまま、一家は水死してしまった。
夫妻の遺体は発見されたが、娘は行方不明のままだった。「第四の拷問」の方は無人で砂地に乗り上げたが、エンジンも無線も完全で、有名浮き輪は一つも使用されていなかった。つまり3人は動いている「第四の拷問」から湖に落ちたのだ。3人とも水泳は達者だったのに、何とも不思議な状態で、さながらマリア・セレスト号事件のようだった。
「第四の拷問」は隣の別荘のブラックのいとこのトム・コンスタブルに引き取られたが、今度はコンスタブル一家がやはり同じ目にあった。別荘の友人を訪ねていたタラント氏はジェリーとともに真相解明に乗り出した。

首無しの恐怖     The Episode of the Headless Horrors
ニュージャージー州ノリスヴィルから10キロほど行った48号線の真ん中で、男の首なし死体が発見された。首はギロチンのようなもので、一気にスパっと斬られており、ふきんを捜索してもどこからも見つからなった。
さらに日を置いて2番目の首なし死体が見つかった。48号線の警備は強化され、死体の発見現場を中心に警察官を配置して監視した。パトロールも強化された。
監視の警官は48号線を南北から完全に塞いで監視した。南と北の環視の間には、わき道はおろかけもの道一つなく、ガソリンスタンドが1軒あるだけだった。にも関わらず第3の首なし死体が発見された。
だが南北の監視の話を総合すると、南から入った全ての車は北に抜けたし、北から入った全ての車は南に抜けた。つまり、南北の監視の間で消えた車も人もいなかったのだ。では死体はどこから出現したのだろうか…

消えた竪琴     The Episode of the Vanishing Harp
「ブリオガンの竪琴が三たび消ゆるとき 竪琴の主よ、疑うなかれ さこそダブヘオインの血筋の絶ゆるとき」と12世紀に予言された竪琴が消えた。それも密室の中からだ。
その竪琴は、大富豪のアイルランド人ドナテッリ・デブリンが現在の守り手だった。デブリンはハートフォードに屋敷を構え、そこの書庫の中に竪琴を安置していた。
その書庫の扉はデブリンしか開けることができず、部屋には窓など存在しないし、抜け穴や秘密の扉もない。この密室から竪琴が消えてしまったというのだ。
デブリンはタラント氏を訪ね、タラント氏はハートフォードに向った。すると不思議なことに竪琴が戻って来たというのだ。その夜、再び竪琴が消えた。
書庫に竪琴があるのをデブリンが確認して扉を閉め、以後その扉はブリッジをしているタラント氏の目に常にさらされていたのにである。そしてまた竪琴は戻って来た。
二度消えて二度戻ったのだ。今度消えれば予言にあるように、三度目の消失である。タラント氏は書庫で寝ずの番をすることにした。 

三つ眼が通る    The Episode of the Man with Three Eyes
裏通りにある「食物クラブ」というロシア料理の店にやって来た、タラント氏とジェリー・フィラン夫妻は、店に入るやスポットライトに照らされた仕切り席にタラント氏の執事兼従僕のカトーの姿を認めた。
その店にはいくつかの仕切り席があり、その仕切り壁はものすごく高く、ほとんど個室のようで、他の席からは中を確認することは全く不可能だった。そこのひとつにスポットライトが向けられていたのだ。
店の入口付近は少し高くなっており、そこからは仕切り席はじめ店内が見渡せる。タラント氏らはそこからカトーを確認したのだ。カトーの他には男女が一人づつおり、3人で何かを話していた。
そこで突然スポットライトが消え店は薄暗くなり、同時に悲鳴が上がり、店の給仕が何かを叫びながら店を出て行き、カトーが席を飛び出してきた。その直後に店を出ていった給仕が警官を連れて入って来た。
なんとカトーのいた仕切り席で、女が喉にナイフを突き立てられて殺されていたのだ。警察はカトーとその席にいたもう一人のロシア人の男を拘留したが、カトーは犯行を否認したうえ、ロシア人の男も犯人ではないと言いきった。

最後の取引     The Episode of the Final Bargain
ジェリー・フィランと妻のヴァレリーは、ジェリーの妹メアリとタラント氏の4人で、埠頭にヨーロッパに向かう父親を見送りに来た。父親を乗せた船は無事に出港し、その帰り道はメアリの車にタラント氏が同乗することになった。 ニューヨークの中心部に入ったメアリの車だったが、渋滞の中で突然メアリの様子がおかしくなった。すぐにタラント氏が運転を代わり、メアリを病院に担ぎ込んだ。 タラント氏の知り合いで、世界的な脳外科の権威モートン・ベイカー医師が診察したが、原因が分からない。ベイカー医師は対症療法で様子を見るしかないという…


C.Daly Kingのメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -