天外消失
Off the Face of the Earth
HPB1819

1972年に刊行された早川書房の世界ミステリ全集、第18巻の「37の短篇」から14篇を収録したアンソロジー。
ジャングル探偵ターザン     Tarzan, Jungle Detective
エドガー・ライス・バロウズ
類猿人チーカがその子供のガザンとともに餌をあさっていると、他の群れのはぐれ雄、それもボスの座を引きずりおろされたばかりのツーグに襲われた。ガザンは殺されかけ、チーカはツーグに連れ去られた。これを知ったチーカの夫のタウグは、尊敬する幼馴染ターザンとともにツーグの臭跡を追いはじめた…

死刑前夜     The Human Interest Stuff
ブレッド・ハリデイ
アメリカとの国境に近いメキシコ北部で行われている鉄道工事。工期は6週間で、それを過ぎると雨期が来て長期間にわたり工事が出来なくなる。そんなとき派遣されてきた技手がいざこざから殺されてしまった。
後任というより残った私がひとりで監督をし、技手の代わりも勤めなければならなくなった。そんなとき一匹のラバに乗った一人の男が声を掛けてきた。売込みだった。サムと名乗るその男を使ってみると技手が十分勤まりそうだったので、私は一も二もなくサムを雇った。
その晩、殺人事件の犯人がアメリカから国境を超えて逃亡したとのラジオ放送が入った。私にはピンときたし、サムも意識するのがわかった。だが私はラジオを切り、その放送を気にしないことにした。

殺し屋     Stant le Tueur
ジョルジュ・シムノン
フランス国内で殺し屋スタンを含むポーランド人盗賊団が横行し、すでに何人かが殺されていた。メグレ警部は盗賊団を壊滅すべく、パリ市内のポーランド人が出入りするホテルを張り込んだが、肝心のスタンが誰かがわからない。
メグレ基部をはじめ警察の動きは筒抜けになっているらしく、「スタンは捕まらない」との挑発的な手紙が警察に送られていた。そんなときメグレの前に一人の男が現れた。男はミシェル・オゼップと名乗り、今回の捕物を命を張って手伝いたいというのだった。

エメラルド色の空     The Case of the Emerald Sky
エリック・アンブラー
富豪で成人した子供が2人いるトーマス・メドレイは、ヘレナ・マーリンという20歳ほど年下の女と再婚した。そしてある夜、チキンの胸肉に缶詰のほうれんそうとジャガイモで軽い食事をとったあと、倒れてしまった。
医師の診断は胃腸炎で、順調に回復するかに見えたが、4日後に息を引き取った。死後しばらくして警察や近所に毒殺であるとの手紙が届き、遺体を掘り出して解剖してみると、腎臓から多量の砒素が検出された。
ただちに殺人事件として捜査が開始され、トーマスの息子で医学生のハロルドが逮捕された。ハロルドは金に困っており動機もあった。だが、チェコから亡命してきたチサール博士の見解は違った。チサールは警察の誤りを正すべく、スコットランドヤードに乗り込んだ。

後ろを見るな     Don't Look Behind You
フレドリック・ブラウン
ハーレイは、オハイオ州スプリングフィールドで、ジャスティン・ディーンと知り合った。ジャスティンはごく当たり前の印刷工だった。ハーレイは飛び切り上等の名刺を注文し、ジャスティンがそれに答えた。その出来に満足したハーレイはジャスティンに偽札作りを持ちかけた。
ハーレイにどこか惹かれるものを感じたジャスティンは二つ返事で応じ、ニューヨークに出て精巧な偽札を作った。2人は大儲けをしたが、ある日ハーレイが出かけたきり帰らず、電話をかけてきてすべての証拠を破棄するように言ってきた…

天外消失     Off the Face of the Earth
クレイトン・ロースン
ギャングから収賄している悪徳判事キーラーの命運もいよいよ尽きようとしていた。いつ逮捕の指令が出てもいいように判事には常に尾行が付き、その行動は警察に監視されていた。
そのキーラーが煙のごとく消え失せてしまった。銀行から資金を降ろしたキーラーはグランドセントラル駅に行き、そこのずらりと並んだ電話ボックスの一つに入った。それは2人の刑事によって別々の場所から監視されていた。
ところがそのボックスから判事の姿は書き消え、判事の欠けていたメガネが床に落ち、受話器が垂れ下がってぶらぶらしていた。刑事の一人が受話器を取るとほかならぬ判事の声で「手がかりが消えたよ」と揶揄する言葉を浴びせられ電話は切れた。
2人の刑事はずっと電話ボックスを監視していたし、電話ボックスも故障中の札の下がった隣のボックスだから間違えようがない。これを聞いた記述しマーリニは見えざる人の魔術だとつぶやいた。

この手で人を殺してから     Being a Murderer Myself
アーサー・ウィリアムズ
世の中、例えば小説のフィールドにおいても人を殺した場合、その犯人の正体を暴くことと、犯人を捕らえる方法に重点がおかれ過ぎている。もっといかにしてに重点を置くべきだ。そしてもうひとつ、人殺しが必ずしも手抜かりをやるとは限らない。例えば人を殺した私の場合…

懐郷病のビュイック     The Homesick Buick
ジョン・D・マクドナルド
テキサス州リーマンの町に、ある日スタンリーウッズと名乗る男がやって来た。ウッズはアトランタの一流企業グロストン精密工機の代表社員の名刺を持ち、工場用地を探していると言った。
しばらくしたある日、ウッズが開店したばかりの銀行に入ると、その後から男女が続いて入って来た。そしてウッズと男女の3人はたちまち現行強盗に変身し、出納係を射殺して金を奪って銀行前に駐車した3台の運転手つき車で逃走を図った。
強盗が外に出た直後、現行から警報が鳴り響き、銀行の向かいの保安官が素早く動いて運転手をひとり射殺した。強盗は車1台の残して残りの2台で逃走してしまった。連邦捜査局も乗り込んできたが、残った車からも射殺した運転手からも何一つ強盗団の手掛かりは得られなかった。

ラヴディ氏の短い休暇     Mr.Loveday's Little Outing
イーヴリン・ウォー
州立精神病院に入院して10年になるモーピング卿を見舞ったモーピング夫人と娘のアンジェラ。アンジェラはそこで今日に付き従う秘書の男を見た。その男はラヴディという名で、やはり病院の患者だという。
アンジェラの眼にはラヴディはごくまともで、とても患者だとは思えなかった。事実ラヴディは他の患者のためにいろいろと奉仕しており、患者からも職員や医師からも重宝がられていた。そこでアンジェラは熱心にラヴディの退院を画すようになった。

探偵作家は天国へ行ける    Heaven can Wait
C・B・ギルフォード
推理作家アリグザンダー・アーリントンは、深夜0時に書斎で何者かに背中をナイフで刺されて殺されてしまった。天国に来たアリグザンダーは天使長ミカエルから、犯人を突き止めるためにもう一度生存中の最後の一日を繰り返すことを許された。
下界に降りたアリグザンダーの最後の一日がまたはじまったが、周囲は怪しいものだらけだ。秘書のタルバートは才能のあるのをいいことにスランプのアレグザンダーに成り替わろうとしているし、妻のエーリエルは若い恋人のアームブラスターとの情事に夢中、甥のアンドリューは借金まみれで遺産を狙い、住み込みのハリーは過去の旧悪を警察にばらされるのを恐れている。
この5人の容疑者のうち誰かがアリグザンダーを刺し殺したのは事実だった。そこでアリグザンダーはある計画を立て、全員と晩餐をした。

女か虎か    The Lady, or the Tiger?
フランク・R・ストックトン
昔々、ひとりの半未開人の王様がいた。王様の国では罪に問われると、群衆がいっぱい詰まった闘技場に引き出され、2つある扉の一つを選ばされる。一方には虎がおりそちらを選べば罪人は虎に食い殺される。
もう一方の扉の中には絶世の美女がおり、そちらを選べば罪は帳消しになり、群衆に祝福されながらその美女と結婚できる。もちろんどちらに虎がいて美人がいるかは、罪人をはじめ誰にもわからない。
さてある日、ひとりの若者が罪を得て闘技場に引き出された。若者の罪はあろうことか王女に恋をしてしまったことだった。王女の方もこの美貌の若者に恋をしたが罪は罪、今若者は王様や王女、そして大群衆の前に引き出され扉を選ぶことになったのだった。

白いカーペットの上のごほうび    Body on a White Carpet
アル・ジェイムズ
マックは安酒場のカウンターの中の女に目を付けた。誘いに成功してマックは女と店を出ると 女は家に来いと誘った。願ってもないチャンスがマックに転がり込んだ。今夜はこの女と寝れる、と思ったのもつかの間、女の部屋には男の死体が…

火星のダイヤモンド    The Martian Crown Jewels
ポール・アンダースン
地球から火星の惑星フォボスまで無人宇宙船がやっていきた。実はこの宇宙船には火星の宝冠ダイヤが秘密裏に積まれていた。そのことはごく一部の地球人しか知らなったし、作業をする人間も厳重に監視され身体検査もされた。
その結果、地球で宇宙船に積まれ、フォボスに来た時には船内にはなかった。途中どこかで盗むことも不可能だったし、第一盗むにについても事前に情報がなかった。このことが知れれば、地球と火星の間の関係は危機的になる。地球からフォボスに来ていたクレグ警部は、火星の名探偵シァロックに捜査を依頼した。

最後で最高の密室    The Locked Room to End the Locked Room
スティーヴン・バー
ペトラス・デンダーは軍人を隠れ蓑にした、優秀な諜報員だった。妻は長男を生んでしばらくして病死したが、ぺトラスは息子にかまうことなく海外勤務を続けた。息子のジョナサンは、友人の精神病医夫妻が引き取って育てていたが、ある日ペンダーは海外から帰って来ると、強引にジョナサンを連れ帰った。
ぺトラスとジョナサンの仲は悪く、そんなある日、ぺトラスが出入りできない状態の自宅で、首を切り落とされた死体となって見つかり、ジョナサンは行方不明になった。犯人はジョナサンと見做されたが、すべてのドアと窓は内側から施錠された家から、どうやって抜け出したのだろうか。


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