愛憎発殺人行
徳間文庫

2004年にトクマ・ノベルズ「鉄道推理ベスト集成」全4冊集録作に、その後の作品を加えて編まれたアンソロジー。
ゴースト・トレイン    
連城三紀彦
男は、その満月の夜、終着駅の岩湯谷駅から最終列車が向かってくる線路を、列車に向かって歩き出した。そして鉄橋の手前で列車が近づいてくる気配を感じ、死に向かうべく線路に横たわった。
気づいた時には男は無事で、ただ腕時計のガラスが壊れ、列車の轟音によるものか右耳の鼓膜が破れていた。確かに線路に横たわったはずなのに、列車には轢かれず男は無事だったのだ。それから4年、男は駅前の食堂で東京から来た若い女性に話しかけられた。

マン島の蒸気機関車    
森博嗣
英国、マン島にある西之園家の別荘にやって来た犀川教授と西之園萌絵、それに犀川の同僚の喜多教授、萌絵のいとこの大御坊。彼らはマン島の紋章である3本足に興味を示すが、この3本足は全て左向きだった。
だが右向きの3本足もあるという。それは萌絵の叔父が昨年マン島で撮ったSLの正面に飾られていたものだった。写真を見ると確かに右向きの足がSLの正面に掲げられていた。

グリーン寝台車の子供    
多岐川恭
長崎から東京に向う寝台特急さくらのA寝台車。その14番の上下を取ったのは美男美女の2人。2人は何の関係もないらしく、会話もなければ食事も別々だった。乗客たちの中には、その2人を最初は夫婦だと思っていた人もあったらしいが、ほぼ全員が不倫の匂いを嗅ぎ取っていた。
そして真夜中、寝台特急が山陽線を疾走しているころ、幾人かの乗客が2人が同衾し、事が終わったあとで男がそそくさと自分の寝台に戻って行くのを見たり、気づいたりした。そして翌朝、寝台には男の絞殺された姿があった。

ひいらぎ駅の怪事件    
乾くるみ
雨の夜、ひいらぎ駅のプラットホームに通じる階段からネルソンという外人女性が転げ落ちた。階段は橋上通路から左右に分かれてホームに通じており、当時その片側の階段の下には若い女性が座り込み、ホーム上には若い男と中年男性がおり、そこに2人の男がホームに降りてきたところで事件が起きたのだ。
女性は意識不明であったが、最後に降りてきた男の一人が医師で、その指示で救急車が呼ばれた。その直後、階段下に座っていた女性が騒ぎ出した。バックに入れていたカメラが盗まれたというのだ。

急行しろやま    
中町信
西鹿児島発大坂行き急行「しろやま」の広島発時刻は朝8時58分。この列車に広島駅から乗り込んだのは滝田寿之助。滝田は岡山県の笠岡駅と里庄駅の中間、線路と交差する用水路の中で死体となって発見された。
アルコールを飲んでおり、それは車内の隣席の乗客の証言も裏付けていたが、酔ったうえでの事故でないことは首に残された親指の跡で明らかだった。
隣席の乗客によれば、滝田は広島県の福山駅と笠岡駅の間で席を立ち、後部車両へ向かいそれきり帰ってこなかったいう。
滝田の乗車車両の後ろにはさらに2両寝台車が繋がれており、滝田は後ろの車両のデッキで何者かに首を絞められて殺され、列車から突き落とされたのだった。
滝田は東京の出版社の部長職で、現在会社は組合闘争で揉めており、滝田は会社側の責任者であった。
滝田は社長の信任も厚く、そのために組合にも情け容赦なくあたり、多くの組合員にも評判が良くなかった。やがて浮かびあがってきた4人の容疑者。だがそのいずれにもアリバイがあった。
そのうち組合員の石川と非組合員久我はその日会社を休んでアパートの石川の部屋で情事にふけり、隣室の主婦に二人の姿を何度か目撃されている。
組合執行員の青木は風邪で高熱を発して寝込んでいて、近所の人間の証言があった。
管理職で滝田に目をかけられていた猿淵は、東京を10時30分に出る急行「桜島」で名古屋へ向かっていて、乗車1時間ほど前に東京で姿を目撃されていた。犯人はこの4人の中にいると思われたが…

背信の交点(シザーズ・クロッシング)    
法月綸太郎
松本から新宿の向う中央線の特急あずさ68号の車内で男が死んだ。男の名は品野道弘。品野は南小谷から妻晶子とともに先頭の自由席者の一番前に乗り込んだ。
松本到着寸前に車内販売で缶入りウーロン茶を2つ買い、それを松本停車中の飲み、松本発車後に晶子が飲み終えたウーロン茶の缶を捨てに行っている。
品野夫妻のすぐ後ろの席に座った法月綸太郎は、甲府付近で様子がおかしいことに気づき、道弘が死んでいるのを発見。毒殺の疑いもある考えたが、事実とその後の調べでゴミ箱から毒の入ったウーロン茶が一缶発見された。
その少し前に長野駅についた名古屋発の特急しなの23号の車中からも毒を飲んだ死体が発見された。死体の名は西島あづさ。晶子に言わせるとあづさは道弘の浮気の相手だと言う。
晶子はあづさと道弘が心中したのだといい、あずさ68号としなの23号が松本駅で同じホームですれ違っていること知った綸太郎も心中説を支持するが…

18時24分東京発の女    
西村京太郎
18時24分発の岡山行き新幹線ひかり165号は、金曜日になると単身赴任者が帰宅するためにほとんどの席を占める列車として有名だった。専務車掌の池田は、ときどき金曜日のひかり165号に乗務することがあるが、連続してある男を見かけ興味を抱く。
その男は実直なサラリーマンで、グリーン車を利用していた。おそらく課長クラスであろう。池田の興味は連れの女であった。最初と二度目では違う女性であったが、どちらもものすごいと形容してもいいような美人であった。
2人とも切符は姫路までで、両日とも腕を組んで姫路駅のホームを歩く姿を池田は羨ましそうに見送った。ある日、2度目に見かけた女性が行方不明になっていると報道された。池田は目撃情報を警察に通報した。女性は河野由紀という銀座のクラブのママだった。
池田の情報から、相手の男は桜建物に勤務していることが分かった。男の上着に付けられたバッジのマークが桜建物のものだったのだ。池田を証人にして調べていくと、男は桜建物の営業第一課長黒川と判明したが、黒川はひかり165号に乗っていたことは認めたが、同伴の女性については頑強に否定した。


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