まほろ市の殺人
ノン・ノベルズ

真幌市はD県の県庁所在地で、海に沿いにある地方都市。戦国時代の城跡土黒城と蜃気楼、そして季節ごとの起きる怪事件がこの町の名物。
春 無節操な殺人    
倉知淳
女子大生の美波は、大風の夜に同級生たちとカラオケに興じ、朝帰りした。途中にある鹿之子の住むマンションで鹿之子と別れた直後に、痴漢にあった。いきなり後ろから尻を触られたというのだ。
そのことを翌日の昼に恋人の新一に話をしていると、鹿之子から人を殺したのかもしれないと電話があった。駆け付けてみると、朝方美波と別れてマンションの自室に入ると、ベランダの手すりに男がつかまっていたというのだ。
パニックになった鹿之子はそばにあったモップで、手すりの隙間から男を突いた。すると男はいなくなったが、下に落ちた気配はないというのだ。部屋は7階だから、男が落ちたのなら死ぬか重症のはずだし、負傷程度にしても何の痕跡も残さずに消えるわけはない。
警察に届けたが、当然事件にはならなかった。それからしばらくして警察が大挙して鹿之子の部屋に押しかけてきた。ベランダで覗きをした男は、川で発見されたバラバラ死体の主だったらしい。ベランダの手すりの指紋が一致したのだ。だが男はベランダにいるよりもはるか前に殺され、川に死体を遺棄されていた。

夏 夏に散る花    
我孫子武丸
真幌市に住む作家君村義一は、処女作がつい先ごろ有名な文学賞の候補作となったものの、受賞を逸したばかりか作品の評判も芳しくなかった。そんな君村のもとに市内在住の女性から1通のファンレターが届いた。
それを読んだ君島は感動して返事を書き、その後のやり取りで2人は会うことになった。相手は四方田みずきという19歳の女性だったが、待ち合わせ場所には妹のつばきを伴って現れた。2人で現れたことに君村は一瞬戸惑ったものの、みずきに惚れてしまった。
みずきとはメールでやり取りをすることとなったものの、すぐに音信が普通になってしまった。そこで君村は学生時代の親友であった小山田に相談し、小山田付き添いでみずきの家を訪ねた。
家の近くで偶然にみずきと出会った2人。その場のやり取りもなんとなくちぐはぐではあったが、再び連絡ができるようになり、君村とみずきは映画を見たりしてデートを重ねていたが、数か月ほどして海辺で小山田の他殺死体が発見された。

秋 闇雲A子と憂鬱刑事    
麻耶雄嵩
真幌市市民を恐怖に陥れている真幌キラー。3月にOLを絞殺したのを皮切りに、毎月のように殺人を犯していた。被害者はすべて左耳をガソリンで焼かれ、死体の側には装飾のようにいろいろなものが置かれていた。
犬のぬいぐるみ、牛の置物、角材、山や谷の模型等々であったが、被害者同士の関連性は皆無だった。警察も全く無力で、手掛かりすらつかめない。そんなときに乗り出してきたのが真幌市在住のベストセラー作家闇雲A子。
A子は過去にも推理力を活かして、警察にも協力し、幾多の事件を解決した。そのために警察でも一目置いていた。そのA子が犯人を上げると宣言したのだ。そして根暗な刑事天城憂をパートナーに指名した。だが真幌キラーの跳梁は止まらず、ついにはA子の姪縁珠代や助手の見処少年も餌食になり殺されてしまった。

冬 蜃気楼に手を振る    
有栖川有栖
三つ子として育った浩和、史彰、満彦だったが、5歳のときに史彰が交通事故で死亡し、今は史彰と満彦の2人になっていた。史彰は定職には就かず女癖、酒癖も悪く、そのために警察の厄介にもなっていた。一方の満彦は平凡真面目な勤め人であった。
兄弟の父も既に亡く、母は早発性痴呆で施設に入っていた。兄弟は時々2人で母親を見舞った。そんなときはよくスナック檸檬樹に立ち寄って2人で飲んだ。事件の起きた夜もそうだった。
檸檬樹で飲むと決まって史彰は酔って寝てしまった。それを車に乗せて家に連れ帰り、泊めて翌朝送り出すのが満彦の役目で、そのために満彦は檸檬樹では酒を飲まなかった。その夜もいつもと同じであったが、満彦の住むマンション近くでバイクの事故に遭遇した。
スリップしたバイクの傍らには若い男が倒れていたが、すでに死んでいた。そして鞄が投げ出されていたが、そのかばんの中には札束がぎっしりと入っていた。それを見て悪心を起こした満彦はバックを車に積むと事故をほっぽらかして車を発進させた。
マンションの部屋に史彰を担ぎ込んだが、なんと車中で寝ていたはずの史彰は鞄のネコババを目撃していた。さらに鞄の中身を知ると、これ以上の警察沙汰を避けたい史彰は警察に届けるという。そうはさせないと史彰に襲いかかった満彦は無我夢中で首を絞めた。
そして史彰は死んだ。正気に返った満彦は史彰の死体を車に積み、埋めた。鞄に入っていたのは3千万。ニュースでは事故をおこしたバイクの若者が強盗を働き、奪った金であった。警察の捜査に怯えた満彦は金をすべて駅のコインロッカーに預けた。
ところがそれが裏目に出た。翌日駅のコインロッカーに爆弾を仕掛けたとの脅迫電話があり、駅のロッカー全てが強制的に開けられて調べられたのだ。満彦は金を取出しに行けなくなり、史彰殺しだけが残ってしまった。


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