不在証明崩壊
角川ノベルズ

雑誌「野性時代」1995年8月号掲載の作品のアンソロジー化で、タイトルはアリバイ崩しと読む。
八反田青空共栄会殺人事件    
浅黄斑
東京近郊とは思えないほど長閑な場所にある商店街八反田青空共栄会は、御多分に漏れず寂れ始めており、20軒ほどの店が営業しているだけであった。
その中にある大友呉服店で、主人大友吉造の絞殺死体が見つかった。都鳥という商店街で唯一繁昌しているお好み焼き屋の女主人が、大友の家のポストに新聞がたまり、かすかに異臭もすると交番に届けてきて発見されたのだった。
ポストの新聞や死体の状況から死後およそ一週間と推定された。大友は有名なケチで、呉服店は閉店していたが、金貸をしていた。商店街のほとんどが金を借りており、利息の取り立ても厳しく評判も悪かった。
だが商店主たちにはアリバイがあった。大友の死んだ日には商店街主催の温泉旅行があり、大友と都鳥の女主人を除いて全員が参加していたのだった。

死体の冷めないうちに    
芦辺拓
矢来一正は深夜伊地智伸行と決闘するために大学の古い研究棟に行った。その中のある部屋に伊地智はいた。そっと部屋に入り隙を見て襲いかかり、数分後には伊地智は死体となった。
矢来は伊地智の死体にある工作をして死亡推定時刻を遅らせたうえで、伊地智の車に死体を乗せて捨てに行き、そのまま車も川に沈めた。その後アリバイを作ったのだが、警察が来て話を聞いて驚いた。
伊地智は下宿の部屋で殺されたというのだ。隣室の人間が、夜大きな音で目をさまし、確かに伊地智の部屋で争う音がしたと証言した。それがちょうど誤認された殺害時刻であったが、皮肉なことに伊地智の下宿は矢来の家から近く、矢来のアリバイがなくなってしまったのだ。

三つの日付    
有栖川有栖
婦女暴行容疑で逮捕されて容疑者は、指紋から3年前の3月22日に、ラブホテルで発生した女性殺害事件の犯人と目された。だが、その容疑者は犯行を否認し、アリバイを持ち出した。そのアリバイとは1枚の写真。容疑者とアリス、それにアリスの友人の作家と喫茶店のマスターの4人が写った写真。写真の日付は3年前の3月22日だった。
警察と火村はアリスを呼んで事実の確認を求めたが…

オレンジの半分く    
加納朋子
双子の妹真奈は姉から紹介されてデートに出かけた。相手の名は松木。姉によれば松木はぜひ真奈とデートしたいのだという。だが待ち合わせ場所で、約束の時間より15分過ぎても松木は現われず、すっぽかされてしまった。
怒ってドーナツショップに入ったが、何気なく外を見ると写真を見せられた松木が女性と歩いていた。しかもその女性は、顔は見えなかったが着ている服は双子の姉加奈のものとそっくりだった。
だが加奈は真奈が家を出るときに確かに家にいたし、そのあと帰ってみると家を出ていないことがわかった。しかし真奈は松木の相手が加奈に思われて仕方がなかった…

「真犯人を探せ(仮題)」    
倉知淳
大東京ラジオでは新たに探偵劇を放送する企画が進行していた。そしてその原稿を一任されたディレクター月形が第一候補としたのが「真犯人を探せ(仮題)」だった。
その内容は荒川の河原でナイフで一突きされて殺された権田原良夫の殺害犯人はだれかという者で、犯人候補は権田原の住むアパートの住人5人。
推理小説マニアの会社員、植物園勤務の暗い男、バンドに明け暮れる若い男、ホステス、日本語を学ぶ変な外人の5人で、いずれも死亡推定時刻にはアパートにいたと主張した。

変装の家    
二階堂黎人
雪の降る夜のこと、岬に立つ通称崖の上の家に不審があるとの通報で駆けつけた警察。外から覗くと部屋の中に若い女が倒れているのが見えた。窓を破って入ってみるとすでに女はこと切れていた。しかし家は密室、しかも周囲に積もった雪には誰の足跡もなかった。
被害者は誰かに襲われそうだと親戚に電話をかけ、その電話の最中に殺されたらしい。親戚の人間が警察に通報したのだったが、その電話があったときには雪がすでに降り出していた。少しして雪がやんだので、少なくとも犯人が立ち去った足跡だけは現場に残っていなければおかしいのだが…

シャドウ・プレイ    
法月綸太郎
推理作家羽島彰は深夜無遠慮に電話をしてきて、一方的に知りたいことを聞くのが癖だった。こちらの迷惑など考えず、まったくもって自分勝手な男だった。そのときも電話をしてきてドッペルゲンガーの話をしだした。
今書いている本がドッペルゲンガを扱った小説だと言う。電話で迷惑を蒙った腹いせに、小説のさわりでも聞かせてくれと頼むと、羽島はいやいやながらも語り始めた…

アリバイの泡    
山口雅也
オーストラリアのグレートバリアリーフのリゾートで、台湾の実業家が殺された。自分の所有するクルーザーの中で刺殺されたのだった。たまたまクルーザーは見張られていて、殺人者と思われる人物が凶行後にキャビンから出てくる姿も目撃されていた。
だがその目撃された犯人は三つ子のひとりだった。同時刻三つ子のうち2人は別の場所にいたことがわかっている。犯人はわかっているのに、三つ子のうちの誰か特定できないのだ。


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