葬送列車
徳間文庫

2004年にトクマ・ノベルズ「鉄道推理ベスト集成」全4冊集録作に、その後の作品を加えて編まれたアンソロジー。
山陽新幹線殺人事件    
夏樹静子
山陽新幹線を西下する博多行きひかり107号のグリーン車は人影もまばらだった。そのひかり号が広島駅に近づいた頃、一人の夫人が刺殺されているのが乗客により発見された。
被害者の所持していた切符から、岡山から乗車して広島で降りる予定であったことが判明。所持品には身元を直接示すものがなく、ほかの所持品を手がかりに福岡在住の資産家の未亡人とわかった。
前日から岡山に嫁いだ娘の家に泊りに行き、娘に見送られてひかり107号に乗り、福岡への帰途に広島の親戚を訪ねる予定だった。
被害者の関係者を洗った結果福岡の不動産会社社長森田が唯一の容疑者として浮かんだ。しかし森田はアリバイを提示。
森田は同じ時間帯山陽新幹線を走っていたひかり5号に新大阪から乗車し博多に向かっていた。博多に着くと駅から5分の自宅に帰り、大阪の義妹に電話、30分後には逆に義妹からの電話を福岡で受けたという。
しかも大阪の義妹の部屋には第三者がいて、福岡にかけた電話はその第三者がダイアルを回したという。この電話のやり取りを福岡でするためにはひかり107号に乗っていては不可能で、そのために森田にはアリバイが成立したが…

追憶列車    
多島斗志之
1944年8月、第二次世界大戦は終盤に差し掛かかり、フランスに上陸した連合軍によりドイツ軍は本国に追い立てられるように撤退していた。撤退するドイツ軍の兵士の乗った列車には、パリ在住の日本人の婦女子が便乗し、ベルリンに向かっていた。
ところがレジスタンスの破壊活動や空襲、機関車の故障などで列車は遅々として進まず、3日経ってもまだ国境にも行き着かない状況だった。そしてまた麦畑の真ん中で空襲により停車。列車から降りて畑に避難した淳一郎は、そこで明実と知り合った。

寝台急行月光    
天城一
寝台列車の乗客を狙うすりのダンロクが、熱海で乗り込んだ東京行きの寝台急行月光。その個室にもぐりこんだダンロクは、そこで男の死体を発見する。男は熱海以西で殺されたのは明らかだった。
やがて犯人に浮上した男は、関西在住、しかも前夜月光に被害者と乗っていたことを認めた。すわ犯人と捜査本部は色めきたったが、その男は京都で降りたといい、その後アリバイも成立。
次に浮上した別の男。しかしその男もアリバイを主張。東京の高円寺に死体の発見された朝9時23分にいたことが証明された。月光の東京着は9時9分。品川着は8時58分。どちらにしても高円寺に9時23分には姿を現せないことがわかった。

鉄路が錆びてゆく    
辻真先
妻の浮気を調べに山陰本線を走る寝台特急出雲で米子に向かっていた男。妻は故郷の米子で開かれた高校の同窓会に行ったが、雷雨により電車が動かず、やむを得ずもう一泊した。
ところがその翌日、妻の留守に城崎温泉の旅館から電話があり妻がクレジットカードを忘れていったという。妻は米子でもう一泊したのではなかったのだ。しかも城崎の旅館にはほか男と泊まったという。
妻の行動に疑惑をもった男は実感に電話をするとあいまいな返事をされ、さらに妻の友人で一緒に同窓会に行った笹谷夫人から電話があり、電車はすぐの動いたはずといわれた。妻の浮気が決定的と思った男は寝台特急に乗り米子へ向かったのだが…

私鉄沿線    
雨宮町子
京王線高尾駅の男性用洗面所の多目的トイレでその死体は見つかった。被害者は秋月謙一、その日午後4時22分、相模湖在住の友人蔵前広志に、今仙川にいるがこれから遊びに行きたいと電話をしたことが通話記録等から確認された。
秋月は仙川から乗車し、高尾で中央線に乗り換えて相模湖に向おうとして、殺されたと考えられた。死体発見は6時23分、死亡推定時刻は列車ダイヤ等から5時12分から30分間と考えられた。
死因は腹部を刺されたことによる失血死だが、凶器は現場周辺にはなかった。さらに秋月は末期状態の食道がんに冒され、余命はあと半年程度だった。この話を聞いた広志の伯父で元刑事の蔵前は、秋月とも面識があったこともありさっそく事件を調べ始めた。

一等車の女    
佐野洋
麻雀の借金を払ってしまいたい私は、こういう時に頼みとする頼子のもとへ行き、金を貸してくれと頼んだ。すると頼子はもっといい方法があるという。
翌日私は、頼子とともに横須賀線の一等車に乗り込んだ。頼子は挑発的な格好をして男たちの視線をひきつけ、ある男の隣席に座った…

歪んだ空白    
森村誠一
一流企業の東日商事大阪支社に勤める中城泰子の死体が発見されたのは、3月29日午後1時半ごろであった。死体は新大阪駅の新幹線ホームのベンチに放置されていた。このベンチはホームの外れにポツンとあって、被害者はそこで胸を刺されて殺されていたのだった。
すぐに捜査が開始され、未婚の被害者が妊娠4ヶ月であることが判明し、相手の男が有力容疑者として浮上した。捜査の結果、その男は同社東京本社の田部守と分かった。
田部には最近専務の娘との結婚話が持ち上がり、泰子の存在が邪魔になり犯行に及んだというのが、捜査本部がたてた仮説だった。だが、田部はアリバイを主張した。当日はこだま191号に乗車し新大阪に向っていたというのだ。
こだま191号は新大阪着午後2時ちょうどだから、田部が本当に乗っていれば泰子を刺すことはできない。こだま191号から午前10時ごろにかけた車内電話と新大阪駅のホームに出迎えた知人が証人だった。
調べてみると確かにその日の10時前に田部は同僚に電話をし、電話局の受発信記録もそれを裏付けたし、新大阪駅で出迎えた人物も、田部がこだま191号から降りて来たことを確認した。だが捜査本部は、このアリバイに作為を感じていた。


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