全席死定
徳間文庫

2004年にトクマ・ノベルズ「鉄道推理ベスト集成」全4冊集録作に、その後の作品を加えて編まれたアンソロジー。
鉄橋 ひかり157号の死者    
津村秀介
ひかり157号が終着駅岡山に到着する寸前、1号車の洗面台で女の死体が発見された。検死の結果は死後約2時間、ひかり157号が浜松付近を走行中のことだった。死体は洗面台にもたせ掛けるようにされており、カーテンが引かれていた。カーテンの足元の隙間から女性の靴が見えるために、使用中と誤認され発見が遅れたのだ。
被害者は庄司祐子という横浜在住の主婦で死因は絞殺。古いロープで首を絞められたのだった。被害者が座席に置いていたハンドバックから、北沢と署名されたメモが残されていた。メモは走り書きで、ひかり157号の1号車で祐子を待つという簡単なものだった。
北沢は祐子と不倫をしていたが、アリバイがあった。岡山で行われたいとこの結婚式に列席していたのだ。もうひとり容疑者がいた。祐子の夫の英夫だった。だが英夫にもアリバイがあった。祐子の乗るひかり157号と前後する、こだま411号で静養のために三重県の長島温泉に行っていたと言い、証人として老夫婦を挙げた。老夫婦は偶然小田原で一緒になり、長島温泉まで一緒だったというのだ。

待合室の冒険    
恩田陸
その日、その駅の待合室は大勢の乗換客で混雑していた。人身事故があり電車が運転を見合わせていたのだ。多佳雄と春の親子も、その中にいた。多佳雄はすでにリタイヤ、一方の春は、普段はとらえどころのないぼんやりした男だったが、実際は有能な検事であった。
さて待合室の中では、電話を掛けたり、話をしたり、事故とは関係のない路線に乗る客が出入りしたりと、いろいろな動きがあったが、春は何かを感じたようだった。やがて運転再開が告げられ乗客たちが立ち上ると、春は携帯電話を使っていた男のもとにつかつかと歩み寄った。

吹雪心中    
山田風太郎
鞍掛康雄は京都駅でかつての恋人小野寺瑞枝とばったり再会した。瑞枝がいつの間にか康雄の前から消えてしまって以来、十年ぶりの再会だった。今は2人とも家庭があったが、康雄が出張、瑞枝は旧友に会いに京都に来ていたのだった。
自然と2人はお茶を飲み、そして翌日山陰のK温泉に向った。2人とも1日だけならなんとか日程の調整ができ、昔を思い出しての小旅行を密かに楽しむことにした。ところが翌朝K温泉の旅館で目覚めた2人の前に待っていたのは、豪雪で交通が途絶するという事態だった…

そしてオリエント急行から誰もいなくなった    
芦辺拓
積雪のためにユーゴスラビア国内で立往生したオリエント急行の一等寝台車内で起きたアメリカ人殺害事件は、乗り合わせた高名なベルギー人探偵により解決された。
それによると、犯人は途中駅から車掌に変装して乗り込んで殺人を犯したあと、次の停車駅で降りて逃走したといい、そのことをユーゴスラビア警察に連絡してきた。
警察は捜査陣を派遣したが、乗客は高名な上流階級の人物ばかりだったし、国籍も仏、英、伊、露、ハンガリーなど多彩であった。
乗客たちは最初からユーゴスラビアの警察を見下しており、そのうちに各国の大使館経由で圧力がかかり、除雪後に列車はパリに向けて出発し、ユーゴスラビア警察も探偵の解決を受け入れざるを得なかった。
しかしユーゴスラビア警察にも優秀な人間はいた。その人物はガンバ近くから押収したレコードに注目した。そのレコードを聞いてみると…

ひかり号で消えた    
大谷羊太郎
評論家磯部俊明が誘拐された。磯部はその朝、定例のテレビ出演を終えた後、テレビ局の車に乗って東京駅に向った。東京駅ではそそくさと改札を通り抜け、発車寸前のひかり号のグリーン車に乗り込んだのが知人により目撃されている。
そのまま磯部は行方が分からなくなってしまった。一方、ひかり号が出た直後に、磯部の家には犯人と思われる人物から電話があって、磯部の所持品を誘拐の証拠として、磯部家に送りつけたと言ってきた。その所持品は磯部本人から奪わなければわからないものだった。
磯部の妻は警察に連絡し、名古屋駅や京都駅でも目立たぬように非常線が張られたが、磯部はひかり号から現れなかった。磯部が新幹線に乗っていたのは車掌の証言からも間違いない。磯部は走るひかり号から消失してしまったのだ。

嵯峨野トロッコ列車殺人事件    
山村美紗
山陰本線の旧線を活用した観光鉄道l嵯峨野トロッコ列車のツアーに申し込んだキャサリンと浜口は、トロッコ列車の中で殺人事件に遭遇。ツアー客の女性の一人が、首を絞められて殺されたのだ。事件は保津峡駅と亀岡駅の間に何本かあるトンネルを通過しているときに起きたと思われた。
事件に巻き込まれた形のキャサリンと浜口だったが、担当が旧知の京都府警の狩矢警部とわかると、逆に事件解決に積極的になった。が、それも束の間で、今度は食事をした後の保津峡下りの船の中で、またもやツアー客の一人が殺された。乗船前の配られた缶コーヒーの中に毒が入れられていたらしい。

あずさ3号殺人事件    
西村京太郎
テレビのクイズ番組で、京都2泊3日の旅を射止めたのは小林和美と岡田利男。2人は婚約しており、またとないプレゼントになるはずだったが、少なくとも和美にとっては、今一つ気が乗らなかった。というのは和美は学生時代から何度も京都に行っており、すでに観光地はほとんど訪ねていたからだった。
そんなとき和美に一本の電話が入った。長谷川浩子と名乗る女からで、自分もクイズで松本・白馬3泊4日という賞品をもらったものの、何度も行ったことがあるので気が進まない。ついては京都の旅と交換してくれないかというのである。和美は岡田と相談し、浩子と旅の交換をした。
2組の旅は1日違いで始まった。浩子たちが京都に旅立った翌朝、和美は岡田とともに新宿発8時のあずさ3号で白馬に向った。列車が塩尻を出たとき、岡田がトイレに立ったが、それが岡田の生きている最後の姿だった。というのは次の停車駅松本を出た直後、トイレで背中からナイフを突き立てられて絶命している岡田の死体が見つかったのである。


Anthologyのメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -