本格推理展覧会第三巻 凶器の蒐集家
青樹社文庫

青樹社より出版された本格ものをトリック別に分類したアンソロジーの凶器篇。
ニッケルの文鎮    
甲賀三郎
ある研究をしている医者が、ニッケルの文鎮で殴られて死んだ。現場の状況からは殺人が疑われて、清水という金貸しが逮捕された。医者は清水から金を借りており、部屋の中に清水の犯行を示唆する手紙が隠されているのが見つかったのだ。
その手紙は部屋の西北に隠されており、、医者は我が身に変事があった時は、部屋の西北を捜せと言っていたことから、無事に見つかったのであるが、西北の位置を特定するために磁石を使ったところ、その動きがはなはだしく異常であった。そこで書生が天井裏に上って調べてみると…

デパートの絞刑吏    
大阪圭吉
ある朝のこと、都心のデパートの東北の露地に死体が転がっていた。その死体は前夜に宿直をしたデパートの貴金属売場の男性店員で、路上には血が流れ、近くには真珠の首飾りが落ちていた。
被害者の死亡推定時刻は前夜の10時〜11時の間で、その後屋上から露地に向かって投げ落とされたらしい。地上に投げ落とされたのは、状況から深夜12時くらいと推定された。
昨夜は被害者を含めて10人が宿直をしていたが、一緒に寝ていた店員は被害者がいなくなったのにほとんどの者が気づかなかった。
そして被害者のそばにあった首飾りは、前日の営業時間に貴金属売場から盗まれたものだった。探偵青山喬介は、犯行現場と思われるデパートの屋上に上がり、あるものに注目した。

弾丸は飛び出した    
仁木悦子
テレビがある滝永歯科医院の待合室は、患者ばかりでなくテレビを見たいがために患者のふりをして上り込む人もいて、盛況だった。今もテレビの正面に3人の男女がいて、サスペンスドラマに見入っていた。
さらに格子のはまった窓越しに、外に立ってテレビを見ている者がいた。その一人の老人が、突然ピストルの弾で撃たれ倒れた。幸い命は取り留めたが、弾が飛んできたのは待合室の方向で、その先にはテレビ画面があった。
老人が倒れた時には、画面ではちょうど悪人のピストルが火を噴いた時で、あたかもテレビから発砲された弾が老人を撃ち倒したごとくだった。待合室の3人はアリバイを証明しあっており、ほかに弾を撃てる者はいないのだった。

降霊術    
山村正夫
陶芸の老大家蒔室惣輔が庭に建てられた土蔵の中で死んだ。土蔵は惣輔の父が明治のころに建てたもので、惣輔は内部を改造して書斎と仕事場に使っていた。
土蔵本来の土扉には内側から錠が掛けられており、そのほか外部と繋がっているのは鉄格子のはまった小窓と、屋根に突き出た煉瓦の煙突だけであった。
惣輔は腹と胸を短刀様のもので刺されていた。その凶器は後に土蔵から離れた窯のそばで発見された吉光の短刀で、犯人が小窓の鉄格子の間から投げ捨てたと思われた。
そのほかには変ったところは、暖炉で物を燃やした跡があるだけであり、惣輔の死は土蔵の密室殺人事件であった。

殺意の架橋    
森村誠一
秋分の日の朝、緑が丘団地4303棟の一室143号で休日の眠りをむさぼっていた平岡哲夫は、妻の声で目をさまし布団を出て立ち上がった。その途端、顔をゆがめて哲夫はくずおれた。のちの捜査でライフル銃で狙撃され、即死だったことが分かった。
位置関係からいってライフル銃が打たれたのは、隣の4302棟にある142号室しかなかった。ところがこの142号室に住む、不動産会社社員横井夫妻は、まったく知らないことだと驚いた様子だった。夫妻の部屋からも夫妻自身からも硝煙反応は出ず、夫妻は平岡家とは全く関係のない赤の他人だった。動機も証拠もなかった。
一方、このころ横浜港で一家4人が乗った乗用車が、岸壁から転落した。車内は無人だったが、乗っていたはずの4人の姿はどこからも発見されなかった。車の所有者は勝目という雑誌記者で、その朝妻と2人の子供とともに、ドライブに出かけ奇禍にあった。しかし現場を調べた刑事は不審な点ばかりなことから、事件は単なる転落事故ではないと睨んだ。

見えない手の殺人    
赤川次郎
N自動車工業川崎工場総務部の佐伯祐二は、娘直子との交際をしていることを知って激怒して乗り込んできた大橋と口論になった。場所は工場の敷地内で、周囲は芝生が広がっていた。
いきなり殴りかかって来た大橋を防衛上突き飛ばしたのだが、大橋は脇腹を押えてその場にうずくまるとウッと呻いて絶命してしまった。佐伯は慌てて医務室の萩原医師を呼んだが、萩原は一目で死亡を確認。
しかも脇腹を相当な力で殴ったのではないかと言った。いずれにせよ警察に連絡するために、佐伯に死体の番をさせてその場を離れた。
一方死体の番をすることになった佐伯は、どう考えても大橋を軽く突き飛ばしただけで、殴ってもいない。ただ大橋が死んだことには間違いなく、このことを直子に知らせなければと思い、大橋の家に向った。

バースデイロープ    
泡坂妻夫
ホテルの部屋でロープで絞殺されていた女。絞殺の仕方が少し変っていて、ロープの一方をベッドの柱に通し、女の首にかけて引っ張って絞殺したらしい。
その日は女の誕生日だったらしく部屋の中にはバースデーケーキがあり、そこには大きな2本のロウソクが立てられていたが、これも不思議なことに燃え残った2本の長さが違っていた。
さらに調べていくと絞殺に使われたロープは合成繊維で作られた特殊なものであった。そしてその日、そのホテルではロープ奇術の大家の講習会が開かれていたが…

白い凶器    
東野圭吾
A食品株式会社本館裏通路で、材料課課長安部孝三の死体が発見されたのは、早朝の守衛の見回りによってだった。6階にある材料課の部屋の窓から転落したのだと思われた。窓は開いていたが、窓枠に頭をぶつけた跡があった。
いずれにせよ残業中に落ちたと考えられたが、自殺とは思われなかった。では事故かというと、窓の高さなどから考えて、その可能性も低かった。では殺人、だが安部は80sを超える体重を持ち、そう簡単に落とせるとも思えなかったし、現場には争った跡もなかった。

殺人喜劇の不思議町    
芦辺拓
うらぶれた港町の駅で列車に乗りはぐれた森江春策が出合った事件は、町一番の旅館今日館の主人が海岸で鉄砲で撃ち殺されるという事件。その鉄砲たるや16世紀の火縄銃で、太腿に残った玉も丸い鉛球だった。
この鉄砲は骨董コレクターの今日館の主人が集めたものの一つで、普段は今日館のロビーの鍵をかけたケースの中で展示してあった。今日館のケースは鍵を壊された形跡があり、凶器はこの火縄銃と思われたが…


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