ミステリーの愉しみ2 密室遊戯
立風書房

鮎川哲也と島田荘司による決定版アンソロジーで第1〜第5集がある。
密室の魔術師    
双葉十三郎
財界人谷崎庄之助は奇術や謎々が趣味であったが、酒に酔うと二重人格みたいになって人を困らせて楽しむところがあった。
ある夜、谷崎氏の別荘のある町の演芸場で奇術の催しがあり、谷崎氏は甥の五郎七や遠縁の娘静子、静子の婚約者の僕と出かけていった。
その夜は谷崎氏は相当酒を飲んでおり、演芸場でも悪い癖が出て、奇術師が奇術をやっているそばから大きな声で種をばらしてしまった。
周りの観客はそのたびに失笑し、奇術師は困惑。最後に黒装束で出て来てトランク抜けの大魔術を自信満々でやろうとした時にも、谷崎氏は奇術にかかる前に種を割ってしまった。奇術師はさすがに怒って舞台を放棄してしまった。
翌日の夜その谷崎氏が密室の書斎で、黒装束の奇術に殺された。書斎の机の上につっぷした谷崎氏、そこに襲い掛かる黒装束が書斎のフランス窓越しに花火のために庭に出ていた一度の目に映ると大騒ぎとなった。
フランス窓は内側から鍵が掛り、屋内に回った人間はドアをがたがたゆするがこれも中から施錠されていた。さらにもうひとつある窓も内側から錠がかけられているらしく、開かなかった。
フランス窓をはしごで叩き割ってやっと一同が中に入ったが、黒装束は消えうせていた。昨夜谷崎氏に大恥をかかされた奇術氏が復讐に来たのだろうか…

青髭の密室    
水上幻一郎
産婦人科の病院で子宮外妊娠の為に死亡した女性の、死因特定のための解剖が行なわれた。解剖が終わり院長の赤間博士は手術室から院長室に引き揚げた。手術着姿の院長が院長室に入るのは女性の母親と立会いの男が廊下の長椅子から見ている。
その直後に院長室に入った看護婦は、そこに院長の死体を発見して悲鳴を上げた。死体の側には拳銃が落ちていて、院長はそれで自殺したように見えた。
警察や検視医がやってきた捜査を始めたが、検視医は自殺ではなく殺人だという。しかし、廊下側以外の出入口には内側から鍵がかかり、窓も内側から掛け金が掛けられていた。
廊下側のドアには2人の目撃者がいたから密室殺人ということになってしまうが…

犯罪の場    
飛鳥高
ある大学の土木工学科の建物にある実験室は、木造2階建ての建物の端にあり、2階部分まで吹き抜けになっていた。1階部分にはある窓は引き違い戸であるが、いつも施錠されており事件当時も施錠されていた。
2階部分には回転窓があり、これは事件当時開いていたり閉まっていたりまちまちであったが、開いていてもその空間は狭く人の出入りは不可能であった。
出入り口は3ヶ所、1つは外に面していたがこれは内側から施錠されていた。2つめは1階の隣の部屋に通じるドアであったが、このドアの外には3人の学生がいて彼らの目に触れずに出入りするのは不可能。
最後の1つは部屋の隅の階段で2階の木村博士の部屋に通じていたが、博士の部屋には木村博士と助手の大崎がいて、このルートからも人目につかずに出入りは不可能だあった。
この事件の被害者は学生の菅。実験室内の机に座っていたところを、2階の窓の開閉に使う錘で殴られ殺されたのだった。犯人はどうやって菅を殺したのか…

明日のための犯罪    
天城一
名家名寄邸の居間で、邸の主名寄篤が殺された。そのときは停電で、居間に篤の先妻の妹で同居している朱実が入ったところ、稲妻が光り女が篤を刺すのが見えたと言う。
朱実はそのまま気を失ったが、居間のフランス窓の外には女の靴跡が雨上がりの土の上に続き、なんと庭の中央で消えていた。篤を刺し殺した犯人は空中に消えてしまったのだろうか?

星空    
杉山平一
不二精機工業という会社がリゲルという電熱器を売り出した。次にデネブという扇風機が売り出され、ウラヌスという計算機が続く。リゲルはオリオン座の、デネブは白鳥座の一等星である、ウラヌスは天王星のことだ。
どうも不二精機では天体の名を製品につけているらしい。調べてみると社長の龍出新三郎氏は、天文学の龍出博士の弟のようだ。興味を持った私は不二精機の製品に注目した。
その次に出たのはレグルスという電動機、さらにミラという電気時計が続いた。名前を並べ何か作ってやろうと思い頭文字を並べて変えてMURDR…あとEがひとつあればMURDERのなってしまう。そして次に出たのはエリダヌスとう織機だった。

夜行列車    
六郷一
青森に向かう夜汽車の二等車で、一人の青年がたまたま乗り合わせた別の青年に催眠術をかける。催眠術をかけられた青年は殺人で手配中の身で自殺を考えており、死ぬ前に一目母親に会いに行くところだという。この話を聞いた催眠術をかけた青年は…

カロリン海盆    
香住春吾
太平洋戦争中サイパンを出航した海軍の徴用船は…
1.昨日16時、本船はパラオへの航路をポナペに変更した。
2.事務長はコースの変更に当惑の態度を見せた。
3.事務長、水夫長、火夫長、賄長の4名が、20時ごろから2時ごろまで花札遊びをしながら飲んでいた。花札遊びでは事務長が大負けした。
4.2時過ぎ、水夫長は部屋を出た。続いて事務長、火夫長も出て賄長だけは残って寝ていた。
5.4時すぎに二等運転士が船首甲板で水夫長の死体を発見、死体の胸には事務長のシーナイフが刺さり、悪魔の面とされる現地の木彫りの面が死体の顔に乗せてあった。
6.事務長、火夫長、賄長の3人にはアリバイはない。
それに対する疑問点は、犯人は何故死体を遺棄しなかったか?死体に何故面を被せたのか?そして犯人は…

妖婦の宿    
高木彬光
伊豆のホテルの離れ、そこにはホテルの実質的なオーナーで妖婦である八雲真利子の部屋があった。真利子は思い出したようにホテルに男友達を連れてきては離れに泊まっていくのだ。
ある日、真利子は東京から歌手の花村と映画俳優の月川を引き連れてやってきた。そしてその時ホテルには近藤啓一と変名した神津恭介も泊まっていた。
その日の朝、前もって真利子の荷物がいくつも届いたが、大型のトランクからは真利子の蝋人形が出てきた。しかもその蝋人形の胸には深々と短剣が刺さっていた。殺人予告ととっさにひらめいた支配人は、神津に真利子の護衛役を頼んだ。
真利子がやってきて神津を紹介され、その夜神津も離れに一室を宛がわれ泊まることになった。離れは6室からなる一棟建てで中央に廊下、右側にはホテルの形式上のオーナーで真利子の愛人小関氏の部屋、真利子の専用室、そして月川の部屋。
一方反対側は応接室、神津の部屋、花村の部屋の順であった。その夜殺人予告に脅えた真利子は部屋に鍵をかけ、さらに部屋の外には3時間交代で花村、神津、月川の順で朝まで寝ずの番をすることになった。
真利子の部屋は小関の部屋と廊下にそれぞれドアがあったが、どちらにも中から鍵がかけられ、窓も同様に施錠された。ところが朝方になって、部屋の中で真利子が死体となっているのが見つかった。犯人は神津の目の前で、厳重な監視付きの密室にやすやすと出入りしたのだ。

黄色の輪    
藤村正太
T県C湖畔Sホテルに避暑のために宿泊していた植村氏の一家。夫人の美也子と娘の都留子、それに女中のとよは長逗留し、主人の植村慎太郎は会社重役のために週末だけ泊まっていた。
その植村氏が留守の間に、湖畔の反対側にある眺望台に絵を描きにいった都留子がC湖に転落して溺死するという事件があった。
その事件は事故として片付けられたが、それから暫くして植村氏のもとに奇妙な小包が連続して届く。羽子板の羽根とか苗札とか押麦とかが毎回丁寧に包装され、千代紙で作った黄色い輪が同封されていた。
そしてある日の夕方、いつものように散歩をしていた植村氏の前を行く若い男が、小包に入っていたのと同じ千代紙で作られた黄色い輪を落としていったのだった…

東風荘の殺人    
谿渓太郎
国際的なテノール歌手であり、麻雀狂であった小泉清氏の邸宅東風荘を借りて行われたパーティで殺人事件が起きた。殺されたのは会の主催者で、代議士に当選した開業医の竹中一郎、場所は麻雀室の隣の部屋でことだった。
ダンスパーティが済んで大方の招待客は帰り、竹中の麻雀仲間4人が残った。さっそく麻雀が始まったが、始まってすぐに竹中の気分が悪くなり隣室で休んでいたのだった。
その後は4人で仕切り直しのマージャンが始まったが、途中で2人が相次いでトイレに立った。その間麻雀は当然中断したが、今度は停電が発生、そして隣室から叫び声。
トイレに行った2人が戻って隣室のドアを破ると、そこにはナイフで刺殺された竹中の死体があった。しかし竹中のいた部屋はドアや窓に鍵がかかった密室で、小さな通風孔以外外部と通じている場所はなかったのだった。

アリバイ    
藤雪夫
新潟県の谷中の森といわれる林の中で水商売の女の絞殺死体が発見された。女は商売柄多情であり、多くの男が調べられたが、皆アリバイがあったり動機が弱すぎたりして容疑者はなかなか特定できなかった。
事件から一週間後にひとりの男が犯人らしき男を見たと警察にたれこんだ。男の証言から逮捕されたのは中島和男という、S化学の実験室に勤める男。中島は女に惚れていたが、邪険にされてから生活にあれていた。
中島は当日5時まで会社にいたとアリバイを主張したが、4時以降は見たものはなく、そのうえ女の持つハンドバックからは中島の鮮明な指紋が検出されて逮捕の決め手になった。
しかし中島の潔白を信じる妹の由美子は、中島の旧友で警視庁に勤める菊地を頼り、中島の無実を証明してくれるよう訴えた。

木箱    
愛川純太郎
岡山県K市の繁華街にある山根茶道具店では京都の三原黒竜洞という陶匠に大量の皿や茶器の製作を依頼し、その品が6つの木箱に分けられて配達されてきた。
その木箱を順々に開けていったところ、最後の一つから小柄な男の死体が転がり出て来た。被害者は三原黒竜洞の使用人笠原輝夫であった。
笠原は脳天を鈍器で殴られていて、それが死因でもあったがその後荒縄で首を絞められていた。
京都での荷物の引渡しと、その後の梱包には山根茶道具店から主人が行って立ち会っており、死体が出て来た木箱には茶碗や皿を詰めたはずであったという。
しかも、その木箱には釘を一回しか打った跡がなかった。つまりいったん釘付けされた後は、K市の山根茶道具店で開けられるまで開かれなかったのである。
警察は京都にも出張し、運送会社にも聞き込みを行った。運送会社では配達中には不審はなかったが、6つの木箱のうち1つだけが異様に重かったと言う。
すると死体は発想される前、京都の三原黒竜洞で詰められたに違いない。だが主人の山根も三原黒竜洞の関係者も道具を入れた後に釘付けされるのを目撃していたという。では、死体はどうやって木箱に入れられたのか?

青い香炉    
仁木悦子
嵐で山奥の宿に閉じ込められた7人の人々。そのうちのひとり菊並亜矢子は、半年前に殺人事件に遭遇していた。亜矢子は陶芸家の研原碧山の秘書をしていたが、碧山が自宅の居間で青酸性の毒を飲まされて殺されたのだ。
当時も停電しており碧山は今で蝋燭を灯していた。窓越しに居間の様子が写っていて、それを見た亜矢子は碧山のほかに2人客がいるのを認めた。15分ほどして居間から叫び声が聞こえ、亜矢子が駆けつけると碧山が倒れ、すでにこと切れていた。
テーブルには2つのグラスにウィスキーと水差し。のちに毒はグラスの一つと水差しから検出された。そしてアトリエからは青い香炉が盗まれていた。
しかし不思議なことに青い香炉は大して価値があるものではなく、隣にあった紫の香炉の方が断然価値が高かったのだ。犯人は高価な香炉が手に取れる位置にあるのに、なぜ価値の低い香炉を盗んでいったのだろうか?

松王丸変死事件    
戸板康二
沢村佐多蔵が舞台で最高の芸を見せたあと、楽屋で睡眠薬を飲みすぎて死んだ。ここのところ芸の向上もすばらしかったが、私生活でも長年想いを寄せていた中山宇七の妹たかと将来を約束しあう寸前までいっていた。
たかを巡っては長年のライバルの市川葉升と争っていたが、その争奪戦にも勝利したわけであった。だから佐多蔵には自殺などする理由もなく、薬の飲みすぎによる事故と思われたが…


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