世界短編傑作集T
創元推理文庫

江戸川乱歩編集による欧米ミステリの珠玉の短篇集。全5巻のうちのT。
人を呪わば     The Biter Bit
ウィルキー・コリンズ
事件が起きたのはヤトマン夫妻の経営する文房具店だった。ヤトマン氏は投資に失敗して蓄えをほとんどなくし、今あるのは銀行に預けてある200ポンドのみ。
ヤトマン氏は住まいの3階をジェイという若い男に貸し、屋根裏には店員が住み込み、ほかに雑役の女中がひとりいたが、ジェイから銀行に悪い噂があると聞き、虎の子の200ポンドを引き出した。
その金をブリキの小さな箱に入れ、さらに上着の内ポケットにしまい、就寝した。その金が寝室から盗まれたのだ。警察は新たに高貴な筋の後ろ盾で刑事部に加わったマシュー・シャーピン氏を事件の捜査にあたらせたが…

安全マッチ     The Swedish Match
アントン・チェホフ
退役近衛将校マーク・イワノービッチ・クリヤーゾフが殺害されたとの知らせが警察に入った。捜査陣がクリヤーゾフの屋敷に行ってみると、ベッドの周囲には襲われたらしい跡があったが、死体そのものはどこにもなかった。
さらに寝室の窓下には血痕があり、踏み荒らした形跡も残っていた。これらのことから警察はクリヤーゾフは寝室で窒息させられ、庭先まで引きずってこられた上で刃物のようなもので刺され、そこに長く放置されたと考えた。
屋敷には家令や庭師、下男などひと癖ありそうな人間がたくさんおり、容疑者には苦労しないように思われたのだが…

レントン館盗難事件     The Lenton Croft Robberies
アーサー・モリスン
ジェイムズ・ノリス卿の屋敷で盗難事件が相次いだ。最初は晩餐会に招待されたヒース夫人の大粒真珠を散りばめた腕輪で、晩餐会前の夕方、鍵をかけた部屋の中から消えていた。
たまたま夫人は他の宝石類とともにテーブルの上に腕輪を並べて置いていたのだが、なくなったのは腕輪だけで、他の宝石類はそのままだった。窓は少しい開いていたが、人間が出入りできるほどではなかった。そして奇妙なことにマッチの燃えさしが1本落ちていた。
二度目はヒース夫人の事件から4ヶ月後のことで、アーミテイジ夫人の小さなブローチが紛失した。ブローチは、やはり鍵をかけた部屋の中に置いてあり、窓は少しだけ開いていた。
マッチの燃えさしが1本あったのも、他の宝石類が並んでいたのも同じだが、奇妙なことに今回盗まれたのは中で最も安もののブローチだったことだ。他の高価な宝石は無事であった。
そして昨日のこと、今度はノリス卿夫人の妹のダイヤのブローチが同じように盗難にあった。やはりマッチの燃えさしが現場に落ちていたが、今度は窓は閉まっていた代わりにドアが開いていた。
ただしドアに出入りする者があれば音で隣室にいた卿夫人の妹は必ず気づいたはずだという。ノリス卿から事件捜査の依頼を受けた探偵ヒューイットは…

医師とその妻と時計     The Doctor,His Wife,and the Clock
アンナ・カサリン・グリーン
ラファイエット街の住宅地で、尊敬されていたハスブルック氏が自室で正体不明の犯人に襲われて射殺された。ハスブルック氏は夫人とともに寝ていたが、気配で夫人が目をさまし隣に寝ている夫の方に手を伸ばすと、その手は何も触れなかった。
その直後に「しまった」という押し殺したような声がし、足音が遠ざかった。夫人が明かりをつけると、そこには射殺されたハスブルック氏の死体が転がっていた。警察が駆けつけると、隣人で盲目のザブリスキー医師が犯人は自分だと自首してきた。

ダブリン事件     Dublin Mystery
バロネス・オルツィ
ダブリン市民で、ベーコン製造事業で成功して巨万の富を積んだブルックス氏が死んだ。息子が2人あり兄のパーシヴァルは放蕩者でミュージックホールのダンサーにうつつをぬかし、一方弟のマアレイはずっとブルックス老の話し相手をして過ごしてきた。
ところがブルックス老の枕の下から見つかった遺言状は、財産のほとんどをパーシヴァルに譲るというものだった。ブルックス老は死の直前に弁護士を呼んで、遺言状を書き換えたらしい。それまでの遺言状では、財産の多くはマアレイに譲られることになっていた。
この遺言は周囲を驚かせたが、マアレイは遺言は兄のパーシヴァルが偽造したと主張した。弁護士に確認したかったが、ブルックス老が死去した直後に公園で襲われて殺されてしまっていた。そこでマアレイは兄を訴え、その結果遺言状は偽物とされたのだった。

十三号独房の問題     The Problem of Cell 13
ジャック・フットレル
天才の大学教授にして名探偵でもあるヴァン・デューゼン教授がランサム博士とフィールディング氏と論争になった。ヴァン・デューゼン教授は持ち前の自身から、刑務所の監房からの脱出など簡単なことだという。
そんなことはできないと否定するランサム博士らと間で実験をすることになり、ヴァン・デューゼン教授はチッザム刑務所の死刑囚監房から一週間の期限で脱出することになった。

放心家組合     The Absent-minded Coterie
ロバート・バー
一流住宅地に住むサマトリーズという男は、毎週金曜日に銀行に怪しい金袋を預けに来る。そのなかにはいつだって金貨がいっぱい詰まっていた。
このころ贋造銀貨が問題になっており、捜査当局はサマトリーズに目を付け、刑事を一人執事として住み込ませたのだが、まるで証拠がつかめない。
サマトリーズ邸には番頭風の男が同居していて、この男はトトナム・コート・ロードの骨董店に通勤していて、そこから毎日金袋を担いで帰って来る。
どうもサマトリーズによって預けられる銀貨は、この骨董店から運ばれているようだ。そこで警察では隠退したフランスの元警部ヴァルモンに捜査を依頼したのだが…


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