クイーンの定員W
Queen's Quorum W
光文社文庫

アンソロジストとしても高名なクイーンが、欧米探偵小説史上で最も有名な短篇集を選び、年代順にコメントを付したもの。その選定基準は歴史的重要性、文学的価値、稀覯本としての希求度の3つ。Wの内容はルネッサンスと現代。
壜詰パーティ     The Bottle Party
ジョン・コリア
うらぶれた街の骨董品店で、フランクはたまたまある壜詰めに目を留めた。店の主人によると、その壜詰めにはありとあらゆるものを手に入れてくれるものが入っているという。値段はわずか5ドルだった。
その壜詰めを開けてみると中から魔王が現れた。その魔王はフランクが望む豪華な食事も、宮殿と数知れぬ虎の皮も、そしてクレオパトラをはじめとする絶世の美女たちも、たちどころに目の前に出してくれた。
フランクは広壮な宮殿で虎の皮に座り、美食を食し、美女たちと戯れて過ごしたが、暫くするとそれも飽きてしまった。すると魔王は骨董品店の中に、今まで見たものよりもさらに美しい女性が入った壜があるという。フランクはさっそくその壜を持ってこさせて開いてみると…

殺意の家     Malice Domestic
フィリップ・マクドナルド
カール・ボーデンは、ある日の夕食後の犬の散歩の途中で猛烈な腹痛に襲われて、体をくの字に折り曲げて胃の中のものを吐瀉した。愛犬がすぐ近所に住むバリー老人に知らせ、老人はカールを家に助け入れて医者を呼んだ。医者が来るころにはカールはかなり落ち着いて、医者にもたいしたことはないと言い置いて家に戻って行った。
それから一週間後、書斎で仕事をしていたカールは、やはり猛烈な腹痛に襲われ嘔吐をした。自分で医者に電話をし、医者が駆けつけた。医者は手当てをして帰り、翌朝にはカールはかなり回復していた。
医者が密かに持ち帰ったカールの吐瀉物を検査すると、致死量に近い砒素が検出された。医者はカールを呼んで、そのことを告げるとカールは怒りだした。どう考えても妻のアネットが食事に砒素を混入したとしか聞こえなかったからだ。そんなことは信じられないカールは医者を罵倒して家に戻ったが…

窓の名前     The Name on the Window
エドマンド・クリスピン
事件は幽霊が出るとの噂のあるサー・チャールズ・モーブリーの屋敷の四阿で起きた。その四阿に入って行ったサー・ルーカス・ウェルシュが、短剣で刺し殺されたのだ。
サー・ルーカスはサー・チャールズに招待されたクリスマスの客の一人で、幽霊の出るという四阿に興味を抱き、自ら進んで入って行った。その姿をサー・チャールズが見ていた。
しばらくして四阿から警報ベルが鳴った。このベルは元から付けてあったもので、皆が駆けつけた。すると四阿への通路にはサー・ルーカスが歩いて行った足跡が一つあるだけだった。
ドアは閉まっていたが鍵はかかっておらず、開いてみるとサー・ルーカスは息を引き取る直前だった。その最後の力を振り絞って、サー・ルーカスは窓を指差した。厚い埃で曇った窓にはOTTOと書かれていた。
サー・ルーカスは息を引き取り、やはり客として来ていたドイツ人のパイロットのオットー・モリケが容疑者として逮捕された。だがオットーがどうやってサー・ルーカスを四阿で殺害したかがわからなった。
なぜならドアに続く通路には足跡がひとつしかなく細工の跡はなかったし、四阿の窓はオットーと書かれた物を含めて内部から釘づけにされていて、四阿は密室の状態だったのだ。

皮膚     Skin
ロアルト・ダール
今はもう老人となってしまったドリオリだが、その昔は刺青師として生計を立てていた。ある日のこと、客が多くてたんまりと儲けたドリオリはある画家スーチンにところに祝いのワインを持って行った。
そこでひょんなことから自分の背中に女の刺青をした。モデルはドリオリの女房で、彫ったのはスーチンだった。スーチンにとっては初めての刺青だったが、電動針での刺青のやり方はドリオリが教えた。スーチンはことのほかその出来が気に入りサインまでした。
それから十数年、パリの画廊でドリオリはスーチンの絵を見かけた。スーチンはその後名が売れて、その絵は高額の値がついていた。ドリオリは画廊に入って行き、シャツを脱いでスーチンの彫った刺青を見せた。するとたちまち画廊の主人や客たちの目の色が変わり…

ベラリアスの洞窟     The Cave of Belarius
マイクル・イネス
観光名所のベラリアスの洞窟に行った教授は、その入り口近くの石に腰かけて休んでいると眠気を催し、ついウトウトとしてしまった。目が覚めるとなんと洞窟の入口に石器時代人が立っていた。
石器時代人は教授には気付かなかったようであたりを見回すと洞窟の中に消えた。しばらくして教授が洞窟の入口に近づくと、今度は中から平服姿の司祭が飛び出してきた。

決断の瞬間     The Moment of Decision
スタンリー・エリン
自然豊かな環境のなかに、ヒルトップ荘とデーン館はあった。ヒルトップ荘にはヒュー・ロージアが夫婦で、一方のデーン館にはレーモンという男が住んでいたが、自然に手を入れる開発のことで2人の仲は悪かった。
2人は会えば必ず口論となり、ヒューの妻のエリザベスも気が気でなかった。2人の仲は、レーモンがデーン館の改築を始めるに及んで決定的となった。改築を阻止したいヒューは、デーン館に通じる一本道を封鎖する実力行使に出たのだ。
心配したエリザベスは2人に対話を促すために、晩餐会を企画しレーモンを招待した。その場でレーモンの趣味の奇術の話になり、レーモンは鍵穴すらない地下のワイン貯蔵庫に入って1時間以内に抜け出るという奇術に挑戦することになった。

マローン殺し     The Murder of Mr.Malone
クレイグ・ライス
弁護士ジョン・J・マローンが空港である男に話しかけられ、それがきっかけとなったかのように、半ば衝動的にサンフランシスコへのフライト便を変更することになった。
変更した便でサンフランシスコに着いたマローンが新聞で見たものは、自分の死亡記事だった。本来乗る予定の変更前の便のフライト中に、マローンは機内で死んでいた。急遽別の空港に着陸し、死体はそこにあるというのだが…

マイアミ各紙乞転載     Miami Papers Please Copy
ルーファス・キング
マイアミ・プレス紙の社主の娘で、同紙の記者を勤めるヴァイオレット・フイッツハートは劇場で隣の男に誘惑された。というより隣席のチケットをわざと落として、隣に来る男とのアバンチュールを楽しもうとしたヴァイオレットだから、多少気に入らない風貌でも誘惑されるのは当初の目的通りだった。
2人は食事を共にし、それから男の船サルガッソU世に向った。男はその船に住んでいて、そこでぜひ見せたいものがあるというのだ。船は2人を乗せて大洋に出たが、すると男の態度が豹変し、拳銃をヴァイオレットに突きつけて来た。

世界一ねばった客     The Most Obstinate Man in Paris
ジョルジュ・シムノン
パリの街角のカフェ・デ・ミニステールの開店前に一人の男が現れた。グレイの帽子に小型のスーツケースを持ったその男は開店前から閉店までずっと粘っていた。その間にこーひーを2杯だけ飲んだ。
店の従業員や客たちの後期の目も、これみよがしな態度も一切気にかけなかった。途中、夕食時に女が隣の席に腰掛けたのが、唯一他の客との接触だった。
閉店となり金を払った男は外に出たが、その直後に銃声がした。従業員が出てみると、そこには撃たれた男の死体があった。が、撃たれたのは予想に反して店の客ではなく、うらぶれた貧相な男だった。
メグレ警視の捜査が始まったが、撃たれた男はカフェ・デ・ミニステールの向かいにあるシェ・レオンというカフェに同じように入り浸っていた。だが、こちらは白ワインをひっきりなしに飲み、やたらに客に話しかけては説教していたという。
カフェ・デ・ミニステールの男と同じように閉店まで粘り、外に出た直後に撃たれたらしい。おなじような2人の男にはいったいどんな関係があるのだろうか…

Q通り十番地    Number Ten Q Street
ヘレン・マクロイ
世はみなオートメーション化され、食べ物も皆合成品になっていた。そんななかでも小麦粉で作ったパンや牛の乳のバターなど、本物の食品を求める人間がいて、そういう人間たちのために非合法の店があった。
本物を求めるひとりであるエラも、やっと貯めた金を持ってQ通りにあるという非合法のもぐり酒場へ入って行った。そこで大金と引き換えに供されたのは、本物のパンとバター。そこに入って来た男があり、その男はエラの隣に座り2千ドルもする本物のステーキを注文した。

聖夜    Heilie Nacht
マイクル・ギルバート
冷戦時代、西ドイツのボンにある東側企業に勤めるジョーゼフ・パルツという男が英国諜報部に買収され、クリスマスの日に通信機器と暗号文のコピーを盗みだした。
パルツは手はず通りに英国大使館に駆け込んだが、そこで情報を受け取ることになっていた人物に会い得なかった。この日、ボン郊外で交通事故にあい死んでいたのだ。
大使館ではパルツのことを他に知る者がなく、あわれパルツは雪の降る中、大使館から追い出された。しかし既にパルツの正体は割れ、東側の組織がパルツの行方を追っていた。

博士論文殺人事件    The Ten O'clock Scholar
ハリー・ケメルマン
大学の博士論文の試験当日、受験者のクロード・ベネットが試験開始時間になっても現れなかった。ベネットは同じ大学のエメット・ホーソン教授が発見したバイントン文書について論文を発表する予定だった。
だが30分経ってもベネットは現れず、結局試験は中止になってしまった。それもそのはずで、ベネットは大学近くのホテルの自室で何者かに頭を殴られて、死体となっていたのだ。
ホテルの表にはキーを付けたままのベネットの車があり、室内から見つかった財布から、ベネットが前日に小切手を換金した100ドルが抜かれていた。さらに試験開始直前にベネットと仲の悪い隣室の男がベネットを訪ねたことがわかって…


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