クイーンの定員U
Queen's Quorum U
光文社文庫

アンソロジストとしても高名なクイーンが、欧米探偵小説史上で最も有名な短篇集を選び、年代順にコメントを付したもの。その選定基準は歴史的重要性、文学的価値、稀覯本としての希求度の3つ。Uの内容は第一期黄金時代、第二期黄金時代、第一期近代。
外務省公文書     The Foreign Office Despatch
クリフォード・アシュダウン(オースティン・フリーマン)
ルーレットで負け続け文無しになった青年に近づいたロムニー・プリングルは、気前よく8ポンドの金を青年に貸した。それからツキが替わったのか青年は勝ち続け、たちまち大金を得た。 気をよくした青年はプリングルを自宅に誘い、借りた金の小切手を切り、2人で酒を飲んだ。青年はレドマイル名乗り外務省に勤めているといった。そのうちにレドマイルは眠くなり、すぐに正体なく眠り込んでしまった。 するとレドマイルが眠っているのを確かめたプリングルは、外務省の用箋や封蝋のついた使用済みの封筒を盗み出した…

千金の炎     The Fire of London
アーノルド・ベネット
ブルース・ボウリング氏は実業家として名が通っていたが、その裏では実態のない会社を作っては潰して金を巻き上げる詐欺師でもあった。ボウリング氏は高級マンションに住み贅沢三昧の生活を送っていたが、ある日のこと妻からの手紙を受け取った。
待ち合わせの場所を変更して、妻のクラブに来てほしいというのだ。ボウリング氏は急遽クラブに出向いたが、妻は来ないばかりか、隣席では怪しげな会話が交わされていた。

緋色の糸     The Scarlet Thread
ジャック・フットレル
近代的で贅沢、流行の粋を尽した大きなアパートの一室に住む株式仲買人ウェルドン・ヘンリーは、夜中にガスの灯が消えて、あわやガス中毒になる寸前で助かるという体験をした。
このアパートでは照明はガスと電気の両方を使用でき、住人はどちらかを選択することもできたし、また両方を使うこともできた。ヘンリーはガスを選択し、電気の設備は撤去されていた。
最初ヘンリーはガスの灯が風で消えたのかと考えて、それから用心をしたが再び同じ事が起きた。次に一晩中起きてガス灯を見ていたが何も起きなかった。しばらくして監視をやめると、またガスの灯が消えた。
ヘンリーは侵入者によるものと考えて戸締りを厳重にした。そして事件が起きた。深夜にガスの灯が消えてガス中毒死、だが被害者はヘンリーではなかった。別の部屋に住むフランス人女性ミス・レニエだった。

当世田舎者気質     Modern Rural Sports
O・ヘンリー
ジェフ・ピーターとアンディ・タッカーは田舎を廻り、百姓をペテンにかけては金を巻き上げるのを商売にしていた。あるときインディアナの田舎に来ていた2人は、乏しくなった所持金を知り、百姓を騙しに農家に向ったが…

英国プロヴィデント銀行窃盗事件     The Theft at the English Provident Bank
E・オルツィ男爵夫人
プロヴィデント銀行の支配人室の金庫から、深夜5千ポンドの金が盗まれた。支配人室には支配人のアイルランド氏が倒れていたが、命に別条はなかった。しかし意識がなく何が起きたのかはわからなかった。
支配人室は銀行のオフィスとアイルランド氏の私宅の両方に通じるドアがあり、オフィス側には夜警がいたが、誰も出入りしたものはないと証言した。そして深夜、支配人室にいるアイルランド氏に夫人が声をかけたのをはっきり聞いたと証言した。
世間ではアイルランド氏の狂言説を噂したが、アイルランド氏は資産家であり動機がない。さらに夫人は、アイルランド氏に声をかけたことなどないときっぱりと断言した。夜警と夫人の言っていることは、真っ向から対立した。この話を聞いた隅の老人は…

モアブの暗号     The Moabite Cipher
R・オースティン・フリーマン
英国王子のパレードを見物していた男が急死した。その男が持っていた封書の住所を家宅捜索すると、そこからヘブライ文字によく似たモアブ文字で書かれた文書が見つかったが、さすがのソーンダイク博士も解読できない。
そこで文書は専門家に鑑定が出され、一連の出来事が新聞報道された。その晩、ソーンダイク博士のもとを一人の男が訪ねて来た。男によると男の兄の食事に毒物が混ぜられている疑いがあるというのだ。
そして男は瓶に入った兄の食事のサンプルを差し出した。ソーンダイク博士が調べてみると、大量の砒素が検出された。男は兄を救うために博士の出馬を願い、博士は快く応じて男とともにロンドンに向ったが…

折れた剣の看板     The Sign of the Broken Sword
G・K・チェスタートン
アーサー・セント・クレア将軍は赫々たる戦果を挙げた名将だったが、最後となった戦闘では無謀とも思える戦いを仕掛け、軍は敗北し自らは敵軍に首を吊るされてしまった。
なぜ、名将の名を欲しいままにした将軍が、誰が見ても無謀な戦いを挑んだのか?

ドイツ大使館文書送達箱事件     The Affair of the German Dispatch-Box
ヴィクター・L・ホワイトチャーチ
きわめて重要な文書が外務省から盗まれ、現在はドイツ大使のもとにあるという。その文書がドイツ宰相の手に渡ると、欧州に争乱が起こる恐れがある。文書は間もなくドイツ大使館の公文書送達箱を使って、本国に送られる予定だった。
公文書送達箱は送達吏フォン・クリーゲン大佐が列車と船を使ってベルリンに運ぶが、英国内で奪い返さなければ外交上もまずい。そこで英国政府は、その送達箱を途中で奪うべく鉄道マニアのソープ・ヘイズルに相談する。

ナイツ・クロス信号事件     The Knight's Cross Signal Problem
アーネスト・ブラマ
セントラル・アンド・サバーバン鉄道ナイツ・クロス駅で列車衝突事故が起き、死者27名重軽傷者40名以上、さらにその後8名の死亡が確認されるという大惨事になった。
事故の原因は普通列車が通勤電車に突っ込んだことだが、普通列車の機関士は信号は青だったと譲らず、一方信号手の方も青信号を出してはいないと主張し、対立した。
信号が青だったか赤だったかの証拠はなく、このままだと原因がはっきりしない。元弁護士の私立探偵カーライルは機関士から依頼を受け、盲人探偵マックス・カラドスに相談した。

シナ人と子供    The Chink and the Child
トマス・バーグ
電光石火の男、リングの四天王といわれるウェルター級ボクサー、パトリング・バロウズは酒と女に目がなく、特に大試合の前夜はトレーニングを抜け出して遊び回るのが常だった。
そんな彼の前に現れたルーシーという少女にパトリングは夢中になった。そのルーシーはチャイナタウンの怪しげな魔窟のような場所に住んでいた。そして翌日に大試合を控えた夜のこと…

ナボテの葡萄園    Naboth's Vineyard
メルヴィル・D・ポースト
エリヒュー・マーシュが自宅で射殺された。マーシュには娘が一人おり、ほかに敷地内に作男が住んでいた。その作男が姿を消しており、山狩りが行われた結果、作男は発見され捕まった。
作男は最初犯行を否認したが、巡回裁判に掛けられた。裁判になると作男は一切口を開かず黙秘した。すると法廷の片隅からマーシュの娘が突然立ち上がって、涙ながらに作男は無実で父親を殺したのは自分だと告白した。だが…

偶然の一致    Coincidence
J・ストーラー・クラウストン
キャリントン探偵のところにウィックリーと名乗る人物が訪れ、8年前の殺人の話を始めた。隣人のスペンサーからある日突然嫌われだし、ついにスペンサーを刺し殺してしまっというのだ。ところが殺したはずのスペンサーは生きていて、それが気味悪く引っ越しまでしたが、昨夜あるパーティでまた再会したのだという。
それから少ししてキャリントンのところに今度はスペンサーと名乗る男が訪ねてきた。スペンサーは8年前、妻が隣人のウィックリーと不倫をしていると疑い、ついにウィックリーを刺殺してしまった。だが殺したはずのウィックリーは生きていて、気味悪くなって引っ越したが、昨夜あるパーティで再会したというのだ。

チョコレートの箱    The Chocolate Box
アガサ・クリスティー
ポール・デルラールというフランスの大物代議士が自宅で死亡した。突然の病死と思われたが、死因に納得しないポールの妻のいとこヴェルジニー・メスナールがポアロに捜査を依頼した。
死亡時の状況からポアロは毒殺を疑うが、食事は複数のものが同じ物を食べ、しかもポール自身がより分けていた。一方酒を飲まないポールは甘いものに目がなく、食後にはチョコレートを必ず食べていた。
そのチョコレートの箱は箱本体がピンクで蓋がブルーだった。中にはチョコレートがいっぱい詰まっており、使用人のフランソワに聞くと昨夜チョコレートの箱が1つからになったところだという。
昨夜からになった方の箱を持ってこさせると、こちらは箱本体がブルーで蓋がピンクだった。ちぐはぐなチョコレートの箱を見たポアロは、チョコレートに毒が仕込まれた可能性が高いと疑い、犯人を探し回る。

文法の問題    The Entertaining Episode of the Article in Question
ドロシー・L・セイヤーズ
ピーター・ウィムジー卿と執事のバンターは、パリのサン・ラザール駅の手荷物預かりの長い行列の中にいた。そのとき卿たちの前に並んだ男女が、いきなり言い合いを始めた。会話はフランス語で、どうやら切符を預けた預ってないとの内容のようだった。
やがて彼らの赤帽も交じっての言い争いとなり、周囲の客も文句を言い始め大騒ぎになりかけたが、男のズボンのポケットから切符が出てきて一件落着。その様子を見ていたピーター卿はバンターに命じて2人の男女の写真を秘密裏に撮影させ、さらに予定を変更して英国に帰ると言い出した。
英仏連絡船の中で写真を現像し、英国に戻ってから3日後、喧嘩していた女の方が、ピーター卿の知合いであるメドウェイ公爵夫人に雇われたことを知った。

ウィルスン警視の休日    Wilson's Holiday
G・D・H&M・I・コール
英国ノフォーク海岸の崖上に張られた無人のテントは、見るからに様子が変であった。テントには大きな裂け目、そこから雨が吹き込んだのか中はびしょ濡れのうえ取り散らかっていた。そしてそこから2組の足跡が、近くの廃屋に続いていた。
そのテントを発見したのは、休暇中のウィルソン警視とその友人のブレンダギャスト博士。2人は職業意識から足跡をつけて廃屋に入った。その窓から断崖を見ると、そこには男の死体があった。
近くでキャンプしているボーイスカウトによると、そのテントには休暇中の投資会社を経営する男2人、カッスル氏とパースンズ氏がいたはずだという。やがて地元の警察が来て死体を引き上げ、その身元はパースンズ氏と判明した。
足跡などの検証から、パースンズ氏がテントでカッスル氏に殺され、カッスル氏はその死体を担いで廃屋の窓から投げ捨て、逃走したと考えられたが…

ベナレスへの道    A Passage to Benares
T・S・ストリブリング
アメリカの心理学者ヘンリー・ポジオリは、トリニダードに向う船の中で、トリニダードの銀行経営者ロウと知り合った。トリニダードではロウの最大の得意客ヒーラ・ダース翁の甥ブッドマン・ラールの結婚式が盛大に行われた。
その式から数時間後、花嫁がヒンズー寺院で殺されるという事件が起き、花婿のラールが逮捕された。ダース翁は甥の無実を証明してくれとロウに泣きついてきた。
新婚夫婦はしきたりによって、寺院で過ごすのが当たり前だったのだ。寺院には5人のクーリーが床で寝ており、誰も2人が出ていったのを見ていない。ただクーリーは5人が5人とも、恐ろしい夢を見たと言っていた。ひょっとすると5人とも、お茶か飯の中にアヘンなどの毒物を混入されたのかもしれなかった。

ドアの鍵    The Door Key
フレドリック・アーヴィング・アンダースン
ペルディング少尉が一通の置き手紙を残して失踪した。手紙によれば今の仕事に飽きて、新たな仕事をはじめた故郷に錦を飾りたいというのだ。そして仕事として飼っていた牝牛は全て友人に差し上げるという。
その夜、ペルディングは愛人とともに車で失踪しようとしていたようだが、それは失敗に終わった。ペルディングと愛人を乗せた車は、運転を誤って湖の中に突っ込んでしまったのだった…


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