クイーンの定員T
Queen's Quorum T
光文社文庫

アンソロジストとしても高名なクイーンが、欧米探偵小説史上で最も有名な短篇集を選び、年代順にコメントを付したもの。その選定基準は歴史的重要性、文学的価値、稀覯本としての希求度の3つ。Tの内容は黎明期、始祖、最初の五十年、ドイルの十年。
王妃の犬と国王の馬     The Dog and the Horse
ヴォルテール
ある日、ザディグが小さな森の近くを歩いていると、王妃に使える宦官が駆け寄り王妃の犬を見かけなかったと尋ねた。ザディグは犬は見ていなかったが雄雌の別から犬の種類、犬の特徴まで言い当てた。
ちょうどそのころ国王の俊馬が逃げ出すという事件が起き、捜索隊が繰り出した。その隊長がザディグに国王の馬を見かけなかったかと尋ねると、やはりザディグは馬を見ていないのに、馬の特徴をすっかりと答えた。
ザディグは王妃の犬と国王の馬を盗んだに違いないとされ流刑が決定したが、その直後に馬と犬が見つかった。ザディグの流刑は取り消されたが、今度は見たものを見ないと言った罪に問われてしまった…

盗まれた手紙     The Purloined Letter
エドガー・A・ポー
さる貴人のところに来た手紙が、野心家の大臣の手に入ってしまった。その大臣は手紙をタネに貴人を強請ろうとしていることは明らかだった。貴人は警視総監に手紙を取り返すよう莫大な報酬を付けて頼んできた。
警視総監は部下とともに毎夜留守がちな大臣の屋敷に忍び込み、ありとあらゆるところを探したが手紙は出てこなかった。本などすべてのページをめくり、全ての隙間には顕微鏡検査をするという徹底した捜索をしたが、手紙はなかったという。思い余った警視総監は、オーギュスト・デュパンのもとを訪れた…

人を呪わば     The Biter Bit
ウィルキー・コリンズ
事件が起きたのはヤトマン夫妻の経営する文房具店だった。ヤトマン氏は投資に失敗して蓄えをほとんどなくし、今あるのは銀行に預けてある200ポンドのみ。
ヤトマン氏は住まいの3階をジェイという若い男に貸し、屋根裏には店員が住み込み、ほかに雑役の女中がひとりいたが、ジェイから銀行に悪い噂があると聞き、虎の子の200ポンドを引き出した。
その金をブリキの小さな箱に入れ、さらに上着の内ポケットにしまい、就寝した。その金が寝室から盗まれたのだ。警察は新たに高貴な筋の後ろ盾で刑事部に加わったマシュー・シャーピン氏を事件の捜査にあたらせたが…

舞姫     The Danseuse
トマス・B・オルドリッチ
オリンピック劇場の舞姫メアリー・ウェアが自室で刺殺された。部屋は内側から鍵が掛り、窓は地上30フィートの高さだから出入りは難しく、煙突は狭く人間が通ることは不可能だった。
このことから当初は自殺とみなされたのだが、凶器が発見されなかった。凶器は鋭利なナイフのようなもので、それがどこにもなかったのだ…

世にも名高いキャラヴェラス郡の跳び蛙     The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County
マーク・トウェイン
キャラヴェラス郡で病気がちの馬やブルドック、はては蛙を調教しては賭けをして、たんまりと稼ぐ男ジム・スマイリーの物語。

バチニョルの小男     The Little Old Man of Batignolles
エミール・ガボリオ
しこたま金をため込んだ老人ピゴロー氏が、アパートの部屋で殺された。凶悪無惨な殺人であったが、ピゴローは自分の血でMONISと歪んではいるが大きな字で、ダイイングメッセージを残していた。
すぐに犯人が知れた。ピゴローが可愛がっていた甥の名がモニストルであった。すぐに警察がモニストルを訪ねると、モニストルはあっさりと犯行を自供し逮捕された。
事件の知らせを受けた名刑事メシネは現場に駆けつけ、ダイイングメッセージは偽物であるとみていた。なぜなら血で汚れていたのはピゴローの左手の指で、右手はきれいなものだったからだ。
ところがモニストルが自供をしたと聞いて、メシネは呆然とした。そんなはずはないのだ、とメシネは捜査を続けたが…

クリーム・パイを持った若い男の話     Story of the Young Man with the Cream Tarts
ロバート・L・スティーヴンスン
ロンドン滞在中のボヘミアのフロリゼル王子は、お付きの主馬官ジェラルディーン大佐とともに夜の街を徘徊中に、酒場でクリームパイを持った若い男と出会った。不思議と意気投合し、やがて若い男から自殺クラブの話を聞く。そしてその男の紹介で王子と大佐は自殺クラブを訪ねたが…

赤毛連盟     The Red Headed League
アーサー・コナン・ドイル
火が燃えるような見事な赤髪の質屋ジェイベズ・ウィルスン氏は、店員のヴィンセント・スポールディングの薦めによって赤髪連盟の会員になった。
赤髪連盟とは見事な赤髪を持ち、ロンドン在住の21歳以上の男しか会員になれない組織で、今回連盟に欠員が出来たので、新たな会員を補充するとの新聞広告が出され、その広告を見たスポールディングが雇い主のウィルスン氏に応募を勧めたのだ。
ウィルスン氏は見事採用され、翌日から毎朝10時から午後2時まで連盟事務所に出勤し、大英百科事典を書き写すというわけのわからない仕事をやらされた。
しかし、これによりもらえる報酬は週4ポンド、商売が思わしくないウィルスン氏にとってはありがたいことではあった。氏が赤髪連盟で百科辞典を写している間、店はスポールディングが取り仕切っていた。
しかし8週間後百科事典のAの部が写し終わろうとするころ、事務所は突然閉鎖されてしまった。いったい何が起きたのかわからず、途方にくれたウィルスン氏はホームズを訪ね、この奇妙な出来事の謎を解いてくれと頼んだ。

サミー・スロケットの失踪     The Loss of Sammy Throckett
アーサー・モリスン
135ヤード・ハンディキャップレースに出場予定の選手のうち、まだほとんど注目されていないのがサミー・スロケットだった。まだ若く、駆け出しだったが、優秀で一部の関係者は絶対に優勝間違いなしと思っていた。
もっともこのトラック競技は賭けの対象で、情報は極力極秘、スロケットには24時間世話役という名目で監視がついていた。そのスロケットが失踪した。
練習のために森の中のトラック競技場に向ったが、そこに着いた途端に少し寒いからとセーターを取りに戻り、そのまま姿が消えてしまったのだ。足跡をたどって見ると、スロケットのものと思われる戻った足跡が途中で消えてしまっていた。

罪の本体    The Corpus Delicti
メルヴィル・D・ポースト
サミュエル・ウォルコットは若いころ、西部へ金鉱探しに行ったが、ある町のとばく場でトラブルから2人の男を撃ち殺した。現場にはほかにニーナ・サン・クロワという女がいた。サン・クロワはウィルコットに惚れていて、この女が万事を引き受けウォルコットは現場を逃れた。
サン・クロワは現場の始末を終えると、ウィルコットと落ち合い2人は手に手を取って町から逃亡した。実はウォルコットというのは、このときに撃ち殺された男の名で、サン・クロワの入知恵ですり替わったのだ。
2人はニューヨークにでて、殺した男から奪った金を元手に成功をおさめた。そしてウィルコットには女ができた。ウィルコットの心はサン・クロワから離れていった、がサン・クロワはウィルコットの殺人の証拠を持っていて、ウィルコットを脅しかかった。

ダイヤのカフスボタン    The Episode of the Diamond Links
グラント・アレン
私と妻のイザベルは、チャールズ卿とアメリア夫妻とともにスイスへの旅に出た。ホテルでは朴訥な田舎牧師とその姉と知り合ったが、牧師の腕にはダイヤのカフスボタンが光り輝いていた。
そのダイヤはアメリアの首飾りと対をなすものだったが、牧師に聞いて見るとよくできた偽物だという。英国随一の鑑定家でもあるチャールズ卿が調べてみると、それは偽物どころか正真正銘の本物だった。田舎牧師が偽物と思いこんでいるだけだった。
それを知ったアメリアはどうしてもそのカフスボタンを手に入れたがった。そこで私が牧師と交渉をするが、牧師は思い出の品だからと、頑として売ることは承知しなかった。どんどん値段を吊りあげたが、答えは同じだった。
だが2千ポンドという破格の値段を提示すると、牧師も折れた。めでたくダイヤは私の手に入り、アメリアのものとなったのだが…

代理殺人    The Murder by Proxy
M・マクダネル・ボドキン
古風な館の2階で突然銃声が轟いた。ちょうどその窓の下では2人の人物が話しこんでいたが、驚いて見あげると部屋の開いた窓から煙がたなびいていた。
2人は部屋に駆けつけると、そこでは後頭部を猟銃で撃ち抜かれた館の主の死体があった。同じ2階には主の甥の部屋があり、甥はドアを開け放して廊下を見ていた。銃声がした前後、誰も廊下を通ったものはいないという。
ところが甥は殺された伯父と大喧嘩をしていた。部屋の位置関係から、現場に真っ先に駆けつけたのも甥だった。警察は当然のように甥を逮捕したが…

ディキンスン夫人の謎    The Mystery of Mrs.Dickinson
ニコラス・カーター
高名な探偵ニック・カーターのもとへ宝石商のフェリス・アンド・スティールの3人の幹部が相談に訪れた。共同経営者のフェリスとスティール、それにスティールの甥のリチャードである。
3人によると富豪のディッキンスン氏の若い妻が来店して、幾度か宝石を万引きしていったというのだ。最初の2回は被害はなく、買物をしてディッキンスン氏の小切手で支払った。ディッキンスン氏は、もともと店の得意客だったので、店も問題なく商売をした。
ところが3回目に来た時、同じように小切手で支払いを済ませたが、その後に指輪が一つ消えていた。4回目も同様だった。店は夫人を呼びとめたが抗議され、体面もあってそのままになった。
そして5回目である。店はたまりかねて相談に来たというわけだった。興味を示したニック・カーターは3人の宝石商とともにディッキンスン氏の屋敷に乗り込んでいったが…

ラッフルズと紫のダイヤ    A Costume Piece
E・W・ホーナング
怪盗紳士ラッフルズが狙ったのは、南アフリカから帰国したローゼンタールが持つ、大きな紫色のダイヤモンド。だが敵もさる者で、拳銃片手に誰にも触れさせないと豪語していた。
そうなると闘志がわくラッフルズは、さっそくローゼンタール邸の周囲を見張りはじめたが、この一家は一晩中誰かが起きているという変な一家だった。ラッフルズは変に厳重な警備をされるより、よっぽどやり難いと嘆くが…


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