透明人間大パーティ
講談社文庫(入手難)

鮎川哲也編透明人間の大集合。モンキー・パンチのまんが「Mr.とうめい」と江戸川乱歩のエッセイ「透明の恐怖」も収録。
透明の人間    
槙尾栄
春が近いというのにまだ雪深い信越線のK駅から一里あまり離れたS村の旅館に投宿した男は、いつも青い色の眼鏡を掛け、人がいるとときは室内であっても外套や手袋を着けたままであった。
投宿の翌日に駅から大量の荷物を運んだ男は、いつも部屋の鍵をかけて何かの科学実験をしていた。男の大量の荷物の中身はほとんどが薬品だったのだ。
ある夜のこと、寝静まった宿の台所から物音がしているのに宿の主人夫婦が気づく。宿にいるのは主人夫婦のほかに実験に明け暮れる怪しげな客だけ。客の様子はますますおかしく、最近金にも困っているようだ。
ひょっとして金を盗んでいるのではないかと疑った主人夫婦が台所に行くと、人もいないのに音がしている。見当をつけて襲いかかると、何かの気配が2階に上がっていき、実験をしている部屋に入った。
主人夫婦が後を追うと、部屋の中には案の定男の姿はなく、そのかわりに実験器具やテーブル、椅子などがひとりでに持ち上がり、夫婦めがけて飛んできた。まるで透明人間が投げつけるように…

赤外線男    
海野十三
Z大学付属の研究所にいる深山理学士は赤外線テレビの研究をしていた。その第1号の製作も大詰めで、完成が近づいていた。ところがあまりに忙しすぎて困ってしまい、深山理学士は助手の申請を当局にした。
申請を受けた当局では予算の関係から、赤外線研究を希望している大学3年生を紹介してきた。その名は白丘ダリア。2人は徹夜もいとわず赤外線テレビの組み立てに熱中した。ダリアも予想以上に働いた。
その結果一週間後には待望の赤外線テレビが完成を見た。その2日後、深山理学士は赤外線男がいると言い出した。人間の目には見えない男だが、赤外線テレビを通してなら見えるというのだ。
そして赤外線男は見えないことをいいことに、犯罪を犯し始めた。最初はイタズラ程度だったが、やがて盗みや傷害となり、やがて殺人まで犯すようになった。

白蛾    
香山滋
前T大理学部人類学教授、現東亜人類学協会会頭小泉博士の娘冬は、女学校の卒業式の帰りに友人と行きつけの中華料理店桃源号に寄った。
そこの経営者は芙阿魚という中国人で、よく冬たちとも麻雀卓を囲んだが、その日は冬の体調が悪く、皆でレコードを聞く事にした。そこに電話が架り、冬が出た。
電話は混線していたが、架けてきたのは小泉博士の友人大江博士で、しきりに芙阿魚を電話に出せという。そして小泉博士が急死したともつぶやいた。
それを聞いた冬は慌てて家に戻るが、そこにいた大江博士は小泉博士は重態だが死んでいないという。それを嘘と決め付けた冬が小泉博士の部屋に行こうとすると、大江博士は実力行使に出てクロロフォルムを冬にかがせた…

高天原の犯罪    
天城一
村の中央にある新興宗教一宇教本部。二階が教祖光満尊がいる紫神殿。その紫神殿で光満尊が殺された。二階に上がる唯一の階段のしたには神衛隊を名乗る二人の歩哨がいた。
光満尊はその歩哨の前を通って二階に上がり、そのまま殺されたという。二階に出入りしたのは光満尊のほかに巫女の千種姫一人。
千種姫によると二階で光満尊の御神示を頂き、平伏して下に降りただけという。千種姫が嘘を言っていないとすれば密室殺人となってしまうが…

透明願望    
草野唯雄
定年間近の万年ヒラ社員の坂本常夫は、家庭環境にも恵まれなかった。悪妻と寝たきりのその母親、出来の悪い息子と娘に囲まれていて、最近では飼い犬にまで馬鹿にされる始末。
ある夜、犬の散歩の途中で勝手に歩く犬を追って行くと何かにぶつかった。周囲は暗くて何かはわからなかったが、手を伸ばして触ってみるとぶよぶよとして気持ちが悪い。
飛びのいて逃げようとするとその物体から声をかけられた。物体と思ったのは透明人間、ある夜水と間違えて同僚が研究中の薬を飲んで透明な体になってしまった石津という男だった。
体が透明だといいことばかりかというとそうでもないという。確かに金は盗んで貯めているが、その金を使えないのだった。そこで石津は坂本に相談した。石津に代わって金を使ってものを買ってほしいというのだ。
周囲の環境に絶望していた坂本は石津の願いを受け入れ、取り敢えず2千万円のマンションを即金で購入し、さらに毎週日曜にはそのマンションに行き石津の望む物を買い整えた。
その報酬として坂本に与えられるのは月70万円、夢のような金だった。暫くは順調に進んだが、やがて困ったことが起きた。それは若い石津の性処理のことだった…

傍のあいつ    
手塚治虫
財界の巨頭S氏が交通事故で意識不明になった。生死の境をさまようこと3ヶ月、奇蹟的に復帰したS氏だったが…

透明人間がやってきた    
都筑道夫
おばさんは1年ほど前に東京から引っ越してきて一人で住んでいた。利夫君やまゆみちゃんが遊びに行くと、本当のおばさんではないのに歓迎してくれる。
おばさんの所には2週間に一度くらい東京に残っているおじさんから手紙が来る。ある日の手紙で、おじさんが今度遊びに来ると言ってきた。1年ぶりにおじさんに会えるので、おばさんはうれしそうだった。
その日、利夫君とまゆみちゃんは駅におじさんを迎えに行った。おばさんの所に案内してびっくりさせようとしたのだ。だが列車から降りてくるのは顔見知りの人ばかり、おじさんは降りてこなかった。
別の駅からバスで行ったのかもしれない利夫君たちはおばさんの家に行ってみた。すると2人分のごはんを食べた跡があったが、電気は付いているのに人はいなかった。
暗くなっていたので畑の方かもしれないと利夫君たちは探しに行ったが、途中の川でおばさんうつぶせになって倒れて死んでいるのが見つかった…

見えない手の殺人    
赤川次郎
N自動車工業川崎工場総務部の佐伯祐二は、娘直子との交際をしていることを知って激怒して乗り込んできた大橋と口論になった。場所は工場の敷地内で、周囲は芝生が広がっていた。
いきなり殴りかかって来た大橋を防衛上突き飛ばしたのだが、大橋は脇腹を押えてその場にうずくまるとウッと呻いて絶命してしまった。佐伯は慌てて医務室の萩原医師を呼んだが、萩原は一目で死亡を確認。
しかも脇腹を相当な力で殴ったのではないかと言った。いずれにせよ警察に連絡するために、佐伯に死体の番をさせてその場を離れた。
一方死体の番をすることになった佐伯は、どう考えても大橋を軽く突き飛ばしただけで、殴ってもいない。ただ大橋が死んだことには間違いなく、このことを直子に知らせなければと思い、大橋の家に向った。

見えない敵    
横田順彌
俺たちを家から立ち退かせる目的でやってくる数々の珍キャラクター。今度来たのは透明人間だった。かれらの挑む勝負に勝たなければ家を追い出されてしまう俺達だが、なんと透明人間が挑んだのはかくれんぼだった。
制限時間は30分、その間に家のどこかに隠れた透明人間を見つけ出さないと家を取られてしまう…


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