見えない機関車
カッパ・ノベルズ(入手難)

「下り”はつかり”」「急行出雲」に続いての、鮎川哲也編カッパノベルズ鉄道ミステリ・アンソロジー最終巻。
指輪    
江戸川乱歩
「新青年」大正14年7月号に小品二篇として「白昼夢」とともに掲載されたもの。

列車の中で起きた指輪盗難事件。犯人と思われる男は車掌に身体検査までされるが、指輪はどこからも現れず…

記者の切符    
小酒井不木
江戸川乱歩が兄事したとされる小酒井不木は医学者であり探偵作家で、探偵小説の読者獲得に目標を置いて作品を発表したとされる。


小泉五郎は自分を捨てた憎き女を恨んで自殺したと見せかけ、島木由三と名を変えて女を追った。2年後に女が東京で暮らしているのを突き止めて、その女を殺してしまう。
島木として旅館に滞在してその後の様子を窺がっていると、やがて小室淳一という男が殺人犯として逮捕された。ところが新聞に出た小室淳一は、島木こと小泉五郎にそっくりな顔であった…

汽笛    
佐左木俊郎
戦前に農民文学の方面で多くの業績を残した人で、探偵小説も10篇ほど書いた。本作は探偵小説味はほとんどない。


柴田貞吉は結核で余命わずかな秋子と愛し合っていた。二人は結婚を望んだが、機関士である秋子の父は結婚を許さなかった。秋子は思い余って父に手紙を書くが、その後は秋子の家の前を通るときにいつも鳴らしていた汽笛すら鳴らさなくなった…

急行列車の花嫁    
海野十三
戦前のSFの大家であった海野は、帆村荘六を探偵とする探偵小説も発表している。本作も、帆村探偵もの。


箱根で交通事故に遭い病院に収容された谷川竜二。加害者は糸子と名乗ったが、竜二はその糸子に恋心を抱いてしまった。退院はしたものの、糸子は外地に行ってしまい気ばかり焦る。そんなとき糸子から電報が来て、東京発の下関行き急行列車に乗ってくれと言ってきた。
大慌てで急行列車に乗ったものの、車内には糸子の姿は見えず、怪しい新婚夫婦や妖艶な美女、悪漢風の二人連れなどに囲まれてしまう。食堂車に呼び出されて脅されたりするうちに、やがて車内のトイレで殺人事件が…

蒸気機関車殺人事件    
海野詳二
作者は国鉄職員で、この作品は余技で執筆し、昭和21年業界紙の「運輸日報」に掲載されたもの。


C57型蒸気機関車の機関士贄川と機関助手山部のコンビが乗務を終えても戻ってこなかった。機関庫には機関車が収容されていたが、その床には血痕があり、さらに助手の山部が機関車から降りる姿が目撃されていた。警察は山部による贄川機関士の殺人事件として、山部を指名手配したが…

機関車は偽らず    
島田一男
非常に軽妙な筆使いに特徴のある島田一男は戦後すぐの時期から、昭和50年代まで新作を書き続けた息の長い作家で、テレビの脚本家としても活躍した。


遺書を持ち貨物列車に飛び込んだ女。だがその女は列車にはねられたり轢かれたりして死んだわけではなく、飛び込んだ時に頭を強打して死亡し、その上を列車が素通りしたために死体はきれいなものだった。
女は妊娠4ヶ月、女をよく知る青年医師によれば妊娠させたのは医師の家の裏手に住む学生3人のうちの1人。女は誰が父親かは白状しなかったが、その男に騙されたと沈んでいた。
そのために鉄道自殺をしたのかもしれなかったが、女のハンドバックが300mも離れた地点に落ちていたために他殺ではないかとの意見が出て…

見えない機関車    
鮎川哲也
原題は二ノ宮心中。タイトルとして締まらないとの理由で改題し、改稿もされた。


剣豪作家和田倉大輔が横浜の自宅で首を絞められて殺された事件の容疑者槇にはアリバイがあった。槇はその時間、吟子という水商売の女と鉄道心中しようとしていたのだ。
八王子から車を飛ばして槇と吟子がやってきたのは東海道線二ノ宮。鉄道の線路の両脇に土手のようになった草地があり、そこから列車に飛び込もうとしたのだ。そこに時刻表通り列車がやってきてが、2人は足がすくんで飛び込めない。
しかたなく槇は睡眠薬で死のうと吟子をその場に残し、車で二宮の薬局まで行き、薬局をたたき起こして睡眠薬を買ってきた。その間の時間は約20分。
2人は睡眠薬を飲み、その場で翌朝早く農作業に出てきた農民によって発見された。現場の状況、列車の通過から和田倉が死んだ時刻に槇は二ノ宮にいたに違いないとされた。

夜汽車の人々    
藤木靖子
夜行急行列車に乗り合わせた人々。香梨伊代は男に騙されて無一文となり、郷里の福山に帰って両親と弟妹の顔を一目見た上で死のうと考えていた。伊代の財布の中には友人の看護婦から盗み取った毒薬が入っていた。
兼賀有造は兄の遺骨を持っての帰り。兄は遺骨のほかに家を残してくれていて、それを処分した150万円を小さなビニール
バックの中に入れて肌身離さない。
伊代と有造の向い側には若いアベック。発車時点からいちゃついていた。やがて4人の間に…

森林鉄道みやま号    
井口泰子
中央線上松駅から木曾の山の中に分け入る王滝森林鉄道。1日1往復の業務用列車には観光客や地元民が許可制で無料で便乗できる。
津田永子もその乗客の一人であった。観光客は最後尾の客車に集められ、乗り合わせたのは永子のほかに老人と若い男の2人組み、若い女2人の組が2つの計7人であった。
そして途中駅からは信越放送のテレビクルーとして記者とカメラマンが乗り込んできた。9人となった乗客それぞれの思いと目的を乗せて森林鉄道は終点に向けてさらに走る…

最終列車    
川辺豊三
海江田秀男は遺産目当てで唯一の肉親である叔父の周平を殺そうとする。周平は熱海に住んで、小さな写真屋をやっている。店の定休日には東京に出てきて芝居を見、馴染みの店で酒を飲んで最終電車に乗って熱海に帰る。
秀男は周平を毎週のように尾行し、叔父殺害のチャンスを狙った。そして7回目のその日、電車は小田原を出るとガラガラになり、しかも叔父が居眠りしている先頭車には叔父以外誰もいなかった。ついにチャンスが訪れたのだった。
秀男は先頭車に入ると用意したロープで素早く叔父を絞殺し、窓を開けて叔父の小柄な体を線路に突き落とした。後は予定通りに完璧なアリバイを作るだけだったが…

大衆と暴力者    
大西赤人
大西巨人氏の子息である赤人氏による掌編小説。


終電車の一本前、込み方は8割程度。わたしが席に座っていると途中駅から泥酔した元ボクサーが乗ってきて、車内で酒は飲むは煙草は吸うは。見かねた2人の学生が注意するが、元ボクサーは逆上して学生達を叩きのめした。それを見たわたしは…

グリーン車の子供    
戸板康二
歌舞伎役者中村雅楽シリーズの一篇で、この作品は昭和50年度の日本推理作家協会賞短篇部門を受賞。


中村雅楽は病気で舞台から遠ざかっていたが、歌舞伎座へどうしても出演してくれと依頼が来た。実現すれば7年ぶりの出演で、雅楽自身も出演したかったが、競演する子役に不満がって決心がつかなかった。
そんなとき大阪に仕事で行き、その帰りのグリーン車に女の子供が一人で乗ってきた。その子の席は雅楽の隣で、父親は新大阪で子供を座らせると、女の子が東京まで一人で行く旨を雅楽に告げて降りていった。
やがて雅楽とその子供の間には…

山手線殺人事件    
夏樹静子
夏樹静子はわが国女流推理作家の草分け的な存在で、この作品は「週間小説」昭和50年12月12日号掲載。


英会話学校の帰りに連れ立って、山手線目黒駅から内回り電車に乗った2人の男と1人の女。品川駅で男が1人降り、次いで上野駅でもう1人の男が降りた。女の住いは日暮里。だが、女はその後電車内で殺され、2周ほどした後、田端駅で死体が見つかった。

幻の指定席    
山村美紗
女流推理作家としても、トリックメーカとしても名高い山村美紗の昭和51年の作品。発表誌は「小説宝石」昭和51年6月号。


京都の実家に帰省した黒木一郎は、恋人の知沙子に裏切られて、そのマンションで思わず絞殺してしまう。我に返った一郎は、京都駅に明日東京に戻るための指定席を買いに来たことを思い出し、駅に駆けつけるが雪でダイヤが乱れているために指定券の発売は中止されていた。
一郎は名古屋の学友や家族に指定券を手に入れたと嘘を言ってしまったために、何とか明日の指定券を手に入れなければならない。そこで一計を案じて…

みえない電車    
小林久三
「暗黒告知」で第20回乱歩賞を受賞した実力派。本篇は「小説推理」昭和51年7月号に掲載されたもの。


川崎市のT署の刑事沖信次は、体の関係があった人妻から恐喝されて、その人妻を殺してしまった。ビニールロープで絞殺したのだ。やがて発見された死体から殺人事件と断定され、沖自身も捜査に加わる。
ところが現場に行って沖は驚愕した。死体の位置は違っており、頭には何かで強打された形跡があった。しかも死因は頭を殴られたことが原因だと言う。
沖は真犯人に自分の罪も被せる決心をし必死に捜査を行い、やがて岡本弘一というスタントマンが浮かぶ。ところが岡本はその夜隣駅の駅前スナックで飲んでいたとアリバイを主張した。
スナックを出た時刻から利用できるのは最終電車のみだったが、その電車に乗って人妻を殺しに行くと発見者と鉢合わせしてしまう。道路工事の関係で車は利用できず、電車も遅れていない。岡本のアリバイは成立するかに見えたが…

汽笛が響く    
南部樹未子
長野県のリンゴ農家の老婆ハル。息子の国夫と嫁の康子、それに2人の孫と同居しているが、国夫一家からは虐げられる。ハルは子供の頃から貧乏であり無学であったが、亡き夫の国造とともに懸命に働いてきた。それなのにと思うハルは、ついに復讐の決心を…


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