「Y」の悲劇
講談社文庫

有栖川有栖、篠田真由美、二階堂黎人、法月綸太郎の4人がクイーンの傑作「Yの悲劇」に挑戦
あるYの悲劇
有栖川有栖
ロックバンド「ユメノ・ドグラ・マグロ」のギタリスト山元優嗣が、マンションの自室で殺された。凶器は部屋にあったエレキギター。
近くに住む幼馴染であり、また同じバンドのメンバーである沢口彩花が差し入れを持って部屋に来たが、体調を崩して部屋にいるはずの優嗣の応答がない。
玄関には鍵が掛かっていなかったので部屋に入ると、瀕死の優嗣が倒れていた。まだ息があったので助け起こして救急車を呼んだ。
救急車を待つ間に犯人の名を問う彩花に優嗣は「やまもと」と囁いた。さらに壁に自分の血でYと書き、そこで力尽きて意識を失った。
その直後に救急車が来て、優嗣は病院に運ばれる途中で息を引き取った。「やまもと」と壁のYの地文字が優嗣のダイイングメッセージになった。

ダイイングメッセージY
篠田真由美
クラスメートのヒロがインターネットで知り合ったのは、聖ルカ学院に通う同年の女子高生エミ。エミには双子の兄がいて、2人揃って演劇部に所属している。
ところが学園祭でエミの兄がほかの部員と対立し、エミ達2人は退部して2人だけの劇を強行しようとする。そのリハーサルを見て欲しいとエミがヒロに依頼し、ヒロのクラスメートの僕も一緒に行くことになった。
2人が劇を行おうとしているのは、学内に建つ古い洋館ヨークシャー館。そこでエミの一人推理劇が行われた。観客参加型のその劇は非常に面白く、僕もヒロも満足して帰った。
だが帰路にエミから携帯電話が入る。慌てて戻るヒロと僕。だがヨークシャー館の入口は開かず、仕方なく窓から中を見るとそこには首を紐で締められたエミが横たわっていた。そしてエミはマジックで床に「Yが殺す」とダイイングメッセージを残していた。

「Y」の悲劇―「Y」がふえる
二階堂黎人
海に浮かぶ孤島にただ一つだけ作られた核シェルター。岩をくりぬいて埋め込まれたシェルターには扉が3つついている。1のドアはバスルームに通じ自由に出入りできる。
2のドアは電子ロックの錠が一つだけあり、隣室の展望室に通じている。展望室は岩壁に突き出していて、大きな窓を通して海が見える。3のドアはキッチンに通じていてキッチン側から施錠されている。
ここに閉じ込められたのは、二階堂黎人の小説「奇蹟島の不思議」の登場人物4人。作者二階堂黎人は登場人物のうち麻生真梨央を被害者に定めた。
麻生真梨央がほかの登場人物に食事を給している途中に停電が起きる。電気がついたとき麻生真梨央はシェルターの中からいなくなっていた。
2のドアを苦労して開けて、展望室に入ってみるとそこには麻生真梨央が後頭部を強打されて死んでいた。死体のそばにはYの字が書かれ、麻生真梨央のダイイングメッセージと思われた。
また2のドアを開ける電子ロック錠は麻生真梨央のポケットにあった。展望室には誰も入れず、海に向かった窓には全て中からクレセント錠が掛けられていた。密室とダイイングメッセージの謎…
なお、題名の「Y」の悲劇のYは右に45度傾いている。

イコールYの悲劇
法月綸太郎
世田谷区のマンションの部屋で足立茜という若い女性が殺された。茜が死んでいたのは姉の坂崎翠の部屋で、翠の夫庸介が出張している間に姉のところに泊りがけで遊びに来ていて、この惨劇にあったのだった。
茜は手に黒と赤の二色ボールペンを持ち、そのボールペンで電話の横のメモ用紙にダイイングメッセージを残したらしい。しかしそれは犯人に破りとられていた。
だが破られた次のメモ紙に、=Y(イコールY)と筆圧で前に書かれた文字が残されていた。いったい=Yとは何のことなのか…


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