毒薬ミステリ傑作選
Handbook for Poisoners
創元推理文庫(入手難)

レイモンド・T・ボンド編纂の毒薬に関するミステリアンソロジー。編者による「毒と毒殺について」が序論として冒頭を飾る。
疑惑
ドロシー・L・セイヤーズ
ママリイ氏が病身の妻エセルのために新たに雇った家政婦サットン夫人。サットン夫人は有能で献身的であり、ママリイ氏もエセルも安心していた。
ところがサットン夫人が来て暫くしてからママリイ氏の体調が時々おかしくなった。特に食後にはげしい嘔吐感が襲った。ある朝新聞を開くと、そこにはリンカーンで一家が毒殺され、犯人の女中は逃走中で警察も皆目行方がわからないという記事が出ていた。
ママリイ氏はもしやサットン夫人が毒殺魔と考え、庭の倉庫にしまってある園芸の際の虫除けの砒素の缶を見に行った。するとそれは蓋が緩んでいた。ママリイ氏はさらに疑惑を深めていったが…

キプロスの蜂
アントニー・ウィン
ロンドンのライセスター広場で車の運転台で死んだ女の死体が見つかった。窓は閉まっておりキプロス蜂という種類の蜂に刺されていた。おでこのところに蜂に刺されたあとがあり、死んだ蜂は車の床から見つかった。
スコットランドヤードのバイルズ警部はヘイリー博士に蜂で人を殺すことが可能かと疑問をぶつけるが…

利口なおうむ
E・C・ベントリー
イタリアにやって来たフィリップ・トレントは、ランシー夫人の別荘で妹のボスワース夫人のことを聞かされた。ボスワーズ夫人は、毎晩夕食の後で気分が悪くなるらしい。ランシー夫人はそれを麻薬のせいだといい、トレントに相談をしてきたのだった。

偶然の審判
アントニー・バークリー
「毒入りチョコレート事件」は、この作品を延伸したもので、基本的なプロットは同じ。
あるクラブで会員からウィスキー入りのチョコレートを譲り受けた男が、家に帰ってそのチョコレートを妻に与える。するとチョコレートには毒が仕込まれていて、妻は死亡、男も重態となった。

夾竹桃
ミリアム・アレン・デフォード
私と兄のギルバートは化学の実験中事故にあった。ギルバートは無事であったが、私は失明してしまった。時が経ち、ギルバートと母が口論した後、母は心臓発作で死亡し、次いでギルバートの妻アンが行方不明になった。
そしてギルバートは私が大事にしていた、母が庭に植えた夾竹桃を斧で切り倒した。私はそれを知ると止めに入ったが無駄であった。
私は切り倒された夾竹桃の枝を一つ貰ってあるものに加工した…

ラインゲルダーとドイツの旗
ラドヤード・キップリング
南米ウルグアイの奥地のジャングルでランの収集家とサンゴヘビの収集家が出会う。ヘビの収集家はドイツの旗と呼ばれる、赤、黒、白のまだらのサンゴヘビを捜していた。
そしてある時、原住民の女性がドイツの旗をビンに入れて持ってきた。狂喜したヘビの収集家は、猛毒であるはずのヘビを手に乗せた…

リキュール・グラス
フィリス・ボットム
ウォトキンズ夫人が夫のヘンリーを殺そうと決めたのは、日曜の教会の説教を聴いた時であった。ヘンリーは暴君で金に対する執着はものすごく、2人の子供に対してもその将来を壊すことにしか興味がなかった。
そしてウォトキンズ夫人は、その考えを実行に移すことにした…

大都会の一挿話
アーヴィン・S・コブ
ニューヨークの街で殺人を犯し、警察に追われる男女。逃走に失敗して再び犯行現場のアパートの部屋に戻ってしまった。しかし警察は2人が現場に戻ったことを知らない。死体とともに隠れた2人の男女の間に起きたことは…

事故
アガサ・クリスティ
エヴァンズ警部は人のいいメロウディーン元教授の夫人が、過去に2人の男を事故を装って殺した女だと睨む。警部は教授に気づかれぬように夫人に接近するが…

バーナビイ事件
オースチン・フリーマン
フランク・バーナビーは、アトロピンに対して特異な反応をする体質であった。それは目薬を処方され、その目薬にアトロピンが含まれており、それで軽い中毒症状を起こしたことでわかった。バーナビーの主治医ジャーディーン医師は、往診の際に目薬を使用しないように話した。
しかしフランク・バーナビーは、その後3回アトロピン中毒に罹った。いずれも夕食後のことであった。最初は軽く、2度目は重く、3度目はかなり酷くて命も危ぶまれるほどだった。
3度目の時は結局命は取り留めたが警察の捜査が入り、夕食が調べられた。夕食は過去の中毒時も含め、いずれの時も夫人の手により調理されたことがわかり、警察は夫人を逮捕した。

ラパチーニの娘
ナザニエル・ホーソーン
ジョバンニ・ガスコンティという青年が、毒草ばかりを育て、新しい種類の毒草すらも作ってしまうというラパチーニ氏の娘ベアトリーチェの姿を一目見て、恋をしてしまった…

手早いやつ
G・K・チェスタトン
手早いやつとはこのころの俗語でウィスキーのこと。
あるホテルのラウンジバーにブラウン神父と知合いの警部が入るとバーテンはおらずにラグリーという客が一人チェリー・ブランデーを飲んでいた。そこに現れたのは酒のセールスマンの一隊で、その時になってやっと支配人が現れた。
その後には宗教家と回教徒のアラブ人。宗教家はアルコール排斥論者でミルクを頼みアルコールの害について演説を始めた。それに野次を飛ばすのはラグリーで、この人物は新聞に投書をしたり、スキャンダルをパンフレットにして配ったりするゴシップ屋。
この野次に怒ったアラブ人がいきなりラウンジの装飾品の刀剣を取り、ラグリーに切りかかったが寸でのところで警部が止めに入った。
なんとかけんかが収まり宗教家とアラブ人はラウンジを去り、セールスマンの一隊も別室で飲み直し始めた。
ホテルに泊った神父がよく早朝ラウンジに下りてみると、ラグリーが装飾品の剣を指されて死んでいるのを発見。警部とともに調べてみると剣は死後暫くしてから刺されたもので、死因は毒殺だった。いつ誰が毒を盛ったのか?神父の推理が始まる。


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